見出し画像

うれしそうに嘆く夫。


短い短いエッセイを書きました。
日記のようなものです。
どれかひとつだけでもどうぞ!


来なかった、いつか。

フジコ・ヘミングさんの訃報。そんなにピアノに詳しいわけでもないけれど、あの人の演奏は一度生で聴いてみたかったし、いつかコンサートに行くつもりだった。でも、いつかは来なかった。自分がその気になって動かなければ「いつか」はいつまでも来ないことをわたしはもう知っているはずなのに、またひとつ叶えられないまま逃してしまった。たのしく豊かに生きていくということは、「いつか!」と心ときめくことを見つけては実現し、また見つけては実現してゆく、その繰り返しなのかもしれないと思う。今わたしの両手にある「いつか!」と思えることを、もうひとつたりとも夢で終わらせたくない。

うれしそうに嘆く夫

豆腐がたんまり入った照り焼きハンバーグを8つこしらえて、お昼はハンバーガーにして食べることにした。わたしが準備しているのを見た夫は、ハイテンションで「これはてりやきマックバーガー!?それともモス!?」と、味がどちらのチェーン店に近いのかというよくわからない質問をぶつけてくる。

それぞれひとつ食べ終え、ふたつめに入っちゃおうかというとき、夫は「これは、ハンバーグが残っているね?ダブル…ダブルにしてもいいってことだよね?」と言って、ハンバーグを重ねた。「すっごい食べにくいなあ!」とうれしそうにうれしそうに嘆いていた。

「ハンバーグをふたつにした分、
マヨネーズはやめておく」と夫


どの体重を信じるかはわたし次第

「最近ちょっと食べすぎたかもしれない」と思い体重計に乗ると、予想より1.5キロ重い。驚いてぴょんと飛び降りて、心を落ち着かせてもう一度測ってみることに。しかし、やはり先ほどと変わらない数字。う〜んと思って体重計の上で重心を右に傾けてみたり、左に傾けてみたりしたところ、左に傾けた瞬間、1.5キロ減った…!わたしはこの数字を、我が体重として採用しようと思う。何を信じるかは自分次第なのだから。


室伏伝説

テレビをつけると『最強スポーツ男子頂上決戦2024』をやっていて、筋肉質な男性たちがバチバチ競い合っている。夫と横に並んで、すごいなあ…めっちゃ鍛えてるんだろうなあ…と口々に感想を述べながら見ていたところ、夫が突然「この番組を見てると、室伏広治が見たくなる」とこぼす。そこから夫は何かのスイッチが入ったかのように室伏広治について力説しはじめ、「30mまでならボルトより速いらしい」「立ち幅跳びの世界記録より跳べるらしい」など、インターネットで仕入れたと思われる室伏伝説を次々と披露してくれる。本当なんだろうかと思いつつ、気づけばわたしも検索しはじめ、「生後5か月で腹筋運動」「ボブスレー日本代表候補」「やったことがなかったやり投げで国体2位」などの情報を入手する。夫婦ふたりで室伏伝説を調べるゴールデンウィーク。


夏がたのしみということにする

スーパーにとてもおいしそうなカットスイカが並んでいたので、買って帰った。最初のひと口を食べた瞬間、この甘さとみずみずしさがこれから向こう数ヶ月味わえるのだと思うと、余裕で生きていける気がした。わたしは夏が好きじゃない。暑いというだけで気力まで溶けてしまいうんざりする。だけどスイカが食べられるから、冷やし中華が食べられるから、さらに今年はオリンピックもあるから、夏がたのしみということにしといてやろうと思う。


さすがプロの仕事

わたしの仕事のほんのさりげない部分を見て、「さすが、プロですねえ」と言ってくれた人がいた。なかなか言われることじゃないから、うれしくてその場でにやにやしてしまった。こんな端っこみたいなところに目を向けてくれて、褒めてくれる人がいるのだなあと感動する。と同時に、きっとわたしは、暮らしの中にある「さすがプロの仕事」をたくさん見逃しているのだろうなと思う。むかし会社で、「プロは細部にこだわる」のだと教えてくれたライターの先輩がいたけれど、わたしは細部にこだわれるプロになりたいし、誰かの細部のこだわりに気づける人でいたい。


おわり



この記事が参加している募集

新生活をたのしく

いただいたサポートは、なにかたのしい経験に変えて、記事を書くことに使います!