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ヨーグルトのライタ

彼は土曜日から出張にいくので、冷蔵庫の中にあるもので痛んでしまうものを確認する。ヨーグルトと小松菜、トマト、半分に切った玉ねぎ、おもむろに取り出してテーブルの上でにらめっこする。

まずはヨーグルトの蓋を開けて、ボールにぶちまけた。みじん切りにしたキュウリをいれる。そこにクミンパウダーと塩と胡椒をいれて、混ぜていく。適当にレモン汁とタバスコもいれた。インドのサラダであるヨーグルトのライタができた。

次に玉ねぎをみじん切りにする。鍋にクミンと油を入れて、クミンがぷくぷくと気泡が出始めたら、玉ねぎをいれる。その後に生姜とニンニクをすりおろし、玉ねぎが飴色に変色してきたら入れる。

その間にシナモンとグローブとカルダモンとローリエとローズマリーと唐辛子を、スパイスミルの中にいれる。スパイスミルを上から押す。蓋を開けるとスパイスが粉々になっていて、スパイスのいい香りがする。

トマトとスパイスをいれる。自家製スパイスに加えて、コリアンダーとターメリックをいれる。しばらく煮詰めると、カレーの基ができる。ここからは何を入れたって、カレーになる。

まず豚のひき肉をいれる。あとは冷凍庫にあったエビもいれる。小松菜をみじん切りにして、キノコをバラして鍋に放り込む。ヨーグルトも入れる。カレーが水っぽくなる。

さらに煮込んでカレーが水気を飛ばしていく。最後は塩を入れて、味を整えていく。カレーの出来上がりだ。

ここまで手を動かしてるが、思考はほとんどない。食材と手が会話をして、自然にできあがっていたみたいだ。たまたまヨーグルトのライタとカレーができた。

カレーを皿に入れて、食べる。ご飯は炊かずにカレーだけを食べるのが彼流だ。彼の手が唐辛子を3本くらい入れたから辛い。

ふと手がヨーグルトのライタをカレーの中に入れ出した。かき混ぜて食べてみる。舌は驚く。

「さわやか!」

あんなに旨みがしっかりしていたカレーに、ヨーグルトのライタをアレンジしたことで、適度な酸味と水々しさが足されて食べやすくなった。

カレーに入れてもかけ合わせることができるのは、ヨーグルトのライタにカレーと同じクミンが入ってるからだろう。同じコードを共有してるから、すんなり馴染む。スパイスと塩胡椒が入ってなかったら、味は大きく変わってしまって調和は取れてなかったと思う。 

日本ではヨーグルトをサラダに入れることが珍しいかもしれないが、理由がよくわかった。