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ロゴをデザインしたのでまとめ

先日ロゴ作成のお仕事をいただきましたのでまとめてみました。

私は長年制作会社に務める会社員デザイナーだったのですが、昨年個人事業主となり、現在は今まで務めた会社ともう一つ別の事業会社で働いています。

ありがたい事に私が個人事業主になったと知った知人・友人から色々とお仕事のお話をいただいていたのですが、前述の通り会社勤めという事は変わらないのでお受けしておりませんでした。

そんな中、お世話になった人から「会社を立ち上げようと思うから、ロゴを作ってもらえると助かる」と相談をいただきました。最初は断ろうかどうしようか迷ったのですが、お話を聞くうちにこれから作る会社が目指す考え方に共感し、今までお世話になった恩を少しでも返せるならという気持ちも手伝ってお引き受けすることにしました。

そもそも、ロゴの役割とは?

なぜ企業や商品に「ロゴが必要!」となるのでしょうか?

私たち人間は五感のうち主に視覚から情報を得ています。
そして人間には文字よりも絵や写真の方が目に止まりやすく、記憶するのも早いという性質があります。

名刺や広告に入ったロゴを見て記憶してもらい、再度目に入った時に「あの企業(商品)だ。」と認識してもらえるようにする。また、そのロゴを見た時の体験と視覚情報が結び付いて企業(商品)に対するイメージが固定化され、見ただけで印象を思い出す象徴となる役割を果たすのがロゴです。

また、他との違い・個性を明確に表現させることができるのもロゴの役割です。結び付けたいイメージ(ビジョンや強み、専門分野の象徴など)をロゴに盛り込む事で、社会においてどの領域に属するかを認知させる役割を果たす事もできます。

上記はロゴが果たす役割の一部で、ブランディングの一要素としてロゴが果たす役割は重要なものばかりであり、優れたロゴがビジネスにもたらす価値はとても大きいです。

以下のページで「優れたロゴを構成する5つの要素」として、優れたロゴのビジュアルがもたらす価値を要素分解し、具体的なロゴを上げて説明されていたのがわかりやすかったです。

依頼の背景

依頼主は普段は法務を担当されているバックオフィスの方で、既に個人事業主としてもお仕事をされていらっしゃるのですが、もう一人別の方と二人で法人を共同創業することになり、今後は人を育てたり、研修プログラムを考えたりと活動の幅を広げて行こうと考えていらっしゃいました。

ロゴは名刺や資料、ホームページに使いたいというお話でしたので、シンボルマークとロゴタイプを組み合わせた形状が扱いやすくて良いかなと思いました。資料の準備や名刺など色々進めるためにも早めに欲しいと言われていたので、できるだけ早く効率的に進める事にしました。

とはいえ、シンボルマークが必要という事であれば、シンボル(象徴)にするための題材を考えなければいけないので、簡単なヒアリングでもう少し深掘りすることにしました。

ヒアリング

法人の名称は「Yield & Radiant」。
Yield=もたらす・産出する、Radiant=さんぜんと・光り輝く
という意味です。

与えたい印象は信頼感、安心感を重視。そして何より楽しんで欲しいという思いを込めたい。

扱うものが法務や教育など固い内容のものが多いので真面目にカチカチに力み過ぎずに楽しい気持ちで対峙して欲しいと考えているとのこと。

話を聞いていて私が一番心揺さぶられたのは以下の言葉。
「どんな仕事も人に対する愛情が無いとうまくいかない」
「人の気持ちを想像できる人たちが増える事で世の中がより良くなると思っている」
話を聞いている途中まではお仕事をお引き受けしようかどうしようか迷っていましたが、この言葉に共感してお手伝いさせてもらおうと決めました。

シンボルマークの検討

ヒアリングでいただいた言葉を持ち帰ってノートに書き出し、シンボルマークを考える手がかりにするため抽象化していきました。

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抽象化された言葉から想起させられる形状を考えるにあたり、ハートを丸いシルエットになるように並べる事で依頼主の優しさや愛情、顧客に与えたい安心感を表せるかなというのが真っ先に思い浮かびました。

中心からハートが花開くような形にする事で、「Yield(産出する)」が想起できるかな、とか。また、「Yield」を備えられるなら、どこかに「Radiant(燦然と輝く)」も入れたいなと思って色々調べたところ、ダイアモンドのブリリアントカットがヒントになりました。

ブリリアントカットの光を集める下のとがった部分を「パビリオン」というらしいのですが、そこを下から見た形を中心のホワイトスペースに当てはめられるように、ハートは8つ並べてみる事にしました。出来上がった形がこちらです。

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依頼主は女性なのですが、共同創業者は男性と聞いていたので「どストレートにハートが並ぶのはちょっと違うかもしれないよなぁ…」と思い、ハートの形状を和らげるためにもブリリアントカットのパビリオンの形をもっと取り込んでみる事にしました。ハートの形状が分割されることによって花弁のようにも見え、士業のバッジ(弁護士や労務士、行政書士など)にも近い形になって業務の内容とも親和性が高まった形状になりました。

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他の形のものもいくつか提案したのですが、一番気に入っていただけたのはこちらのハートとブリリアントカットの組み合わせのアレンジ案でした。

ロゴタイプの検討

シンボルマークの形状が固まったので、こちらと組み合わせるロゴタイプの選定と配色を検討しました。フォントはゴシック体、セリフ体のほか、もっと個性的なフォントや変形させたものなどをあててみたのですが、最終的に落ち着いたのは Minion Variable Conceptというバリアブルフォントです。

バリアブルフォントの存在は今回初めて知りました。
プリセットで選択できる太さや幅を更にスライダーで微調整する事が可能なフォントです。詳細や使い方は以下の記事がわかりやすかったです。

選定候補としてあげる前に色々微調整してみていたのですが、納得いくまで調整が効く柔軟性ゆえに自由度が高過ぎて沼にはまり、フォントのウェイトを考えるだけでだいぶ時間を費やしてしまいました…。
バリアブルフォントで納得いくまで悩むのはまた今度と割り切り、今回はプリセットに既にあるBoldで文字間を整えるにとどめました。

セリフ体を起用する事でハイブランドのようなエレガントさから信頼感や安定感を醸成できるし、デジタル媒体での使い勝手の良さからのサンセリフ体人気の昨今では逆に個性的かなと思いました。

配色・決定稿

配色は初稿で提出した際に仮あてしていたグリーンを気に入っていただけていたのでそのまま起用。シンプルに中心から外側へのグラデーションをあてて「産出する」「輝く」の意味を品よく備えられるようにしました。出来上がった完成ロゴはこちらです。

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シンボルマークの中心のホワイトスペースとグラデーションで一粒のダイヤモンドのような演出が備えられたロゴになりました。

後日談

今回作ったロゴはとても気に入っていただけて、依頼主はなんと!このロゴを使ってオリジナルのスマホケースを作ってくださいました!
ゆらゆらするとラメがキラキラするやつです。

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こういうのすっごく嬉しいーー!
「ありがとう」だけでも十分嬉しいのに…
作り手冥利に尽きるというものです😭

まとめ

デザインをする上でデザイナーは「かっこいい」とか「美しい」とかに囚われがちですが、そもそもの「何を表現するか」「何を具現化するのか」を見失わないようにしなければ最終的なアウトプットに受け手を納得させられるだけの力を持たせられないと思いますし、対価をいただいている以上、アウトプットがビジネスに対してどのような価値を与えられるのか意識して対峙する責任があると私は考えます。

普段はWEB・UI/UXデザインが主なのでロゴデザインは得意分野ではないですが、どちらも基盤は同じかなと思います。今後も、独りよがりにならずに価値を提供できるアウトプットを出していけるといいなと思います。

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