見出し画像

【短編小説】金魚

また あの歪んだ顔が近づいてくる

怖くはない

心地いい声

なんて言ってるか わからないけど

愛されてるって感じる

歪んだ顔が更に歪むからだ


どうしたの?今日は

歪んだ顔から水が出てる…

どこか痛いの?

なあに?なんて言ってるの?!

いつもの声じゃない

声が震えてる

傍に行きたい

アナタの傍に

なんだろう?

この息苦しい感じは…

これが 恋ってモノなのかな?


上手く泳げなくなった

尾ビレをヒラヒラさせて泳ぐのが
得意だったのに…

でも いいんだ

アナタが来てくれるから

だから嬉しいんだっ

やっぱり この息苦しさは
恋なのかもしれない


なんか ポカポカしてきた

あんなに冷たかった水が なんだか
アタタカイ

そっと 伸ばされた手に触れた

ああ これが アナタの ぬくもり

あったかい…


歪んでない アナタの顔 はじめて見た

とっても キレイ

どうしたの?また 水がっ…

あっそうなんだ

涙 って言うんだね

アナタの言葉が 一瞬 わかった

嬉しい

でも なんで 涙 出してるの?

ああ わかった

嬉しいからだよね

きっと そうだ


あれれ?

もっと お喋りしていたいけど…

ふわふわ してきた

眠たくなってきた

だんだんアナタの顔が ぼやける…

…アナタの顔 …アナタの声

…忘れない…

…愛してくれて… ありがとう…

…サヨウナラ…

…愛しい人…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?