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洋館好きの原点

 何かのネット記事で読んだ話によると、小5と中2と高2のときにハマっていたものは大人になっても再燃(再びハマる)しやすいそうだ。
 自分に当てはめて考えても、確かにそうだなと思う。
 私は洋館、特に明治〜終戦までの期間に作られた西洋風の近代建築が好きだ。歴史的価値、建築技法など好きなポイントはたくさんあるのだが、シンプルにデザインが好みなのだ。そしてレトロさになんとも言えない浪漫を感じる。

 そう思うようになったきっかけは小学校5年生の頃に出会った児童書がきっかけだ。タイトルは「時計坂の家」。

 この本は主人公である12歳の少女フー子が夏休みに訪れた祖父の家で不思議な体験をする物語だ。児童書にしてはミステリー要素強めのストーリーに夢中になって読んだことを覚えている。
 そして何より印象的だったのは作中に出てくる祖父の家と祖父が住む「汀館」という架空の街の描写だ。不思議な世界に続く扉がある祖父の家、異国情緒溢れる時計塔のある坂の街。小学生だった私が「異国情緒」の意味を理解したのはこの物語のおかげだ。この美しい情景描写によって、フー子の不思議な夏休みがより一層魅力的に感じるのだ。
 ちなみに作者の高楼方子さんは函館出身で汀館は函館がモデルになっているらしい。道理で街並みの描写がリアルな訳だと納得する。
 主人公のフー子とちょうど同じ年頃にこの本に出会った私はこの物語と洋館に夢中になった。もし私にこんな物語のような事が起こったらと空想したり、函館や横浜、神戸の洋館の本を眺めてはいつか行ってみたいと思いを馳せたりしていた。
 それ以来、洋館をはじめ凝った建築や物語を感じるアンティーク雑貨に心惹かれてしまうようになった。

 高楼方子さんは他にも素敵な物語をたくさん書かれている。児童書が多いが「時計坂の家」のようにストーリー性があって大人でも惹き込まれてしまうような作品も多い。ありふれた日常のすぐ近くにある、幻想的で美しく少し妖しい世界を書くのが秀逸なのだ。
 数年前に出版されたこちらの本も素敵な洋館が出てくる物語だ。

 この「黄色い夏の日」もストーリーの展開が面白く、一気に読んでしまった。そして装丁も素敵だ。水彩画のようなカバーも中のカラーイラストも思わずうっとりしてしまう。

 高楼方子さんの作品ではないけれど、小学校高学年のときに読んで印象に残っている本は他にもある。そのひとつが「霧のむこうのふしぎな町」だ。この物語はジブリ映画「千と千尋の神隠し」に影響を与えたという。確かにこの物語もふしぎな町に迷い込んだ女の子の成長物語なので、千と千尋の神隠しと似ているポイントを探しながら読むのも面白そうだ。
 千と千尋の神隠しはどちらかというと和風な世界観だが、この物語は西洋のおとぎ話に出てくるようなメルヘンチックな世界観だ。
 最近、私が子どもの頃に読んだ挿絵が再録された愛蔵版が出たらしい。さらに作者の柏葉幸子さんが手がけた他の物語も収録されている。

 装丁も素敵。

 今回3冊の本を紹介したけれど、面白いくらいテイストが似ている。
 どうやら私は「洋館」「不思議な世界」「夏休み」「冒険」が好きみたいだ。それは子どもの頃から変わらず、もちろん今も。

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