身近な人が脳卒中で倒れた:おすすめの本

2年前、実の母親が脳卒中で倒れた。
事前になんの前触れもなく。テニスのレッスン中に。

連絡を受けたときは自分でしっかり状況の説明もできて、症状を聞くと熱中症の症状と似ている。家にいたらしばらく横になって休んでそれで終わりだったかもしれないのだけど、テニスのレッスン中だったのでスタッフの方が念のために救急車を呼んでくれて、病院へ搬送。妹が病院に駆けつけて説明を受けるとくも膜下出血を起こしていて、すぐにカテーテル手術で修復するとのこと。

幸いなことに、母は続けて2回の手術とその後4か月の入院を経て退院し、今はもともと住んでいた家に戻り、暮らしや性格に少しの変化はあるものの、茶道やテニスも楽しんでいます。

このときに痛感したこと。今の時代、誰でもいろんな情報にアクセスはできるけど、受け身じゃ情報は得られない。そして、母の場合は倒れてから短期間の間に得た情報にかなり助けられたということ。

午後15時オペ開始、続けて二度の手術が終わったのは24時前。
その間ひたすらネットで原因、症状、治療、術式、後遺症などの情報を調べる。出てくるのは薄っぺらい情報ばかり(もちろんその薄っぺらい情報だって最初は知らなかったし、その日に担当医と会話をするのには十分な情報だったのだけど)。
その後、ネットで情報を漁るのはいったんあきらめて、かたっぱしからAmazonで関連書籍をポチる。もともと買い物するときにはすごく吟味するタイプなのだけど、明らかに求める情報とちがうもの以外、少しでも有用な情報がありそうなものはぜんぶ買った。15冊以上はあったと思う。そして、翌日から、病院に通いながらひたすら読む。

身近な人が脳卒中、脳出血、脳梗塞、高次脳機能障害になったときに役立つ本をご紹介します。

『壊れた脳 生存する知』山田規畝子

3度の脳出血で重い脳障害を抱えた外科医の著者。靴の前後が分からない。時計が読めない。そして、世界の左半分に「気がつかない」…。見た目の普通さゆえに周りから理解されにくい「高次脳機能障害」の苦しみ。だが損傷後も脳は驚異的な成長と回復を続けた。リハビリをはじめとする医療現場や、障害者を取り巻く社会環境への提言など、障害の当事者が「壊れた脳」で生きる日常の思いを綴る。諦めない心とユーモアに満ちた感動の手記。

(Amazon 内容説明 より)

高次脳機能障害の理解に役立つ本。

時計の長針と短針が指し示す意味が分からない、新聞を開いて文章を一行読むと次にどこに続けばいいのかわからない、これは記憶障害(経験によって条件反射的に自動化されている行動ができなくなる)。視力的にはみえているはずなのに、左側のものに気付かない:ごはん食べてて左側にあるお皿のものだけ丸っと残っていたり、道を歩いていて左側の電信柱にぶつかったり、これは注意障害。

異変が起きているのは脳の中だから、一見普通にみえる。この本がなければ、術後目を覚ました母の行動を理解する、母の世界を想像するのは難しかったと思う。

文章もわかりやすく、ユーモアもあってとっても読みやすい。

『身近な人が脳卒中で倒れた後の全生活術 ―誰も教えてくれなかった90のポイント―』待島 克史

ある日突然、身近な人が脳卒中で倒れてしまったら・・・お金や介護、リハビリ、メンタルケアなど分からないことだらけで大きな不安を抱えます。大切な情報は、知らないとリハビリに影響したり、お金をもらい損ねたりして不利益が生じます。
本書では、脳卒中を発症してから在宅復帰までに知っておくべき「お金」「公的支援」「メンタルケア」を項目ごとにまとめています。バリバリの外資系コンサルだった著者が、妻が脳卒中で倒れたことで直面した「困ったこと」「知らないで損したこと」「後悔したこと」について、職業意識ともいえる探究心で試行錯誤しながら得た情報です。当事者だからこそ分かる悩みや問題も交えて、著者の経験を参考に解決への道筋をつけて行きます。

(Amazon 編集者からのコメント より)
 

この本で知ったことの中で一番よかったのは、手術をした「急性期病院」からできるだけ早く「回復期病院(リハビリ病院)」へ転院した方がよいということ。そして、リハビリ病院を選ぶ基準。

本にも書かれているし、実際に母をみていてもそのとおりだと思ったのだけど、一命を取り留めたら可能な限り早くリハビリ専門の病院に転院すべき。リハビリの内容が変わってくる、存在意義や役割がちがうから。この早く転院先探した方がいいよ~ということは、病院では教えてもらえない。患者側からしたら超重要情報だけど、病院はサービス業とはちがうからなあ。

この本では2週間で転院したとあるけれど、母のいた急性期病院では1か月は様子をみたいとのことで、諸々スケジュールの兼ね合いもあり37日目に転院。倒れて1週間で病院のリストアップを始めて、最終的に4箇所見学に行って、決めた。

18日目に転院相談室に行ったところ、若いし病状もいい(立つことができる=くも膜下出血の予後としては病状がいい、という判断だけど、自力ではまだ歩けない状態。こちらからしてみたらそれで病状いいと言われても困る・・!という気持ち。)

病院を探しているときに、知り合いの理学療法士の方に、
・近辺の病院情報(評判や、セラピストの経験年数、リハビリ方針など)
・ホームページでみるのと実際に見学するのでは全然ちがうこと
・早く退院して家に帰ることを目指すのではなく、しっかりプロにリハビリしてもらった方がいいということ
を教えてもらったのもありがたかった。

本を読んでいなければ多分、急性期病院に居られるだけ居て(3ヶ月)、
家に帰るもしくは家から一番近いリハビリ病院に転院するという結果になった気がする。
実際には家から電車で一時間ほどの病院で、スタッフの雰囲気よくガッツリリハビリしてくれそうな病院を選んだ。
母はまだ60歳手前で、これからまだ数十年生きるのにできる限り後遺症を残さないことが最優先だと思ったから。

脳の回復には最初の3ヶ月が重要で(でもそのあとも回復が止まるわけではないらしい)
毎日時間割が渡されてスケジュールびっしりのリハビリ。
だから会いに行くにもいつもそれを考慮しながらだったのだけど、
しっかり専門の病院で「生活できる状態に戻る」というゴールを共有してスパルタリハビリしてもらえたのは、とてもよかった。

以上、私が最終的に20冊ぐらい読んだ中でのオススメ2冊でした。
2年間下書きに置いたまま忘れていたのだけど、公開します。


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