八号坂 唯一

文章を書いてみようと思いました。 この文章が誰かに伝わるか分かりませんが、何かが伝わっ…

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文章を書いてみようと思いました。 この文章が誰かに伝わるか分かりませんが、何かが伝わったり、あるいは伝わらなかった場合は、少しでもいいのでコメントを頂けると嬉しいです。

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  • 日記 2019/02

    2019年2月1日から28日までの日記がまとめられています

  • 日記 2019/01

    2019年1月1日から31日までの日記がまとめられています

  • 日記 2018/12

    2018年12月1日から31日までに書いた日記がまとめられています。

  • 逆噴射小説大賞 2018 投稿作品一覧

    私が『逆噴射小説大賞 2018』に投稿した文章の全作品が置いてあります。どれを読んでも未完!

最近の記事

『悪意をパッケージした笑い』ー「このテープ」と「奥様ッソ!」、およびフェイクドキュメンタリーとSCPというコミュニティに関する文章

この文章は このタイトルに惹きつけられてクリックした人は、2022年末に三夜連続で放送された『このテープ持ってないですか?』や2021年末に四夜連続で放送された『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』について考察や感想を読みたいのだと思います。  ただ、この記事はそれらの番組の感想ではなく、より俯瞰してこれらの作品群が持つ共通の意識について考えてみたいと思います。すでに答えは題名で言い切っているのですが、それでも私の妄想にお付き合いいただけるのであれば最後までお読みいただけると嬉しい

    • 精神安定剤を飲みながら 26

      川を示しているんじゃないか。と継ぎの男が言ったとき、女性の店主が済まなそうな表情で「申し訳ありませんが、そろそろ閉店で……」と言った。継ぎの男は、「ああ、もうそんな時間でしたか」とそそくさと荷物を手に取って、勘定の支度を始めている。 私は女性の店主に「すみません、長々と居てしまって」と言いながら、財布を取り出して紙幣を何枚か取り出した。そして継ぎの男に向かって、「今日は奢りますよ」と言った。 継ぎの男は「いえいえ、そんな」と断っていたが、私が「私が引き留めてお話を聞かせてもら

      • 精神安定剤を飲みながら 25

        俺は地図の端の黒い線の上を歩いていたが、どうやってこの地図の街から出ればよいのかも思いつかないままだった。思いつかないままの俺の視界はちょうど半分に分かれていた。俺の顔の左半分が真っ白な世界で、その右半分はいくつもの黒い線が引かれた地図の街だった。 そうやってしばらく歩いているうちに視界が左と右で違う事に混乱するようになってきた。どうして黒い線の上を意地になって歩いているのだろうか。このままどちらかの世界に動いて歩いても良いような気がしてきた。どうせ地図の街の端を示す黒い線は

        • 精神安定剤を飲みながら 24

          地図の街での二日目の朝を、俺は地図の端で迎えた。何度か寝返りを打っていたのか、俺の頭の半分だけは地図の街の中にあったはずなのに、いつの間にか地図の街の向こう側に居た。 いつの間にか地図の街は朝を越えて昼になっていたらしい。地図の街の向こう側は昨日の地図の街と全く変わらないように見えた。映写機で幕に映しているわけではないから、白い靄がかかっているように見えているわけではない。ショーケースの中に街がすっぽりと入っているような感じだな。 地図の街の向こう側は真っ白だったという話をし

        『悪意をパッケージした笑い』ー「このテープ」と「奥様ッソ!」、およびフェイクドキュメンタリーとSCPというコミュニティに関する文章

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          精神安定剤を飲みながら 23

          俺は地図の街の端で寝っ転がっていた。どうやってどういう体勢になってしまったのか、俺の下半身は地図の街の外、上半身は地図の街の中にあった。夕暮れからさらに日は沈んで、夜の静けさと季節の変わり目特有の肌寒さが俺の顔を撫でていく。もうすっかり夜になってしまった地図の街の天上には、針の孔で開けたような無数の星空が輝いていた。 本当だったら、それも感動してしまう場面なのかもしれないが、俺の体を分けているのは夜を映し出している何かであり、俺の下半身はその何かを越えて世界の外側に出ているの

          精神安定剤を飲みながら 23

          精神安定剤を飲みながら 22

          地図の街の端を想像するのは難しいとは思う。俺だって誰かにこんな話をされて信じられるかと言われれば絶対に信じないだろう。こうしてあんたに言葉で説明しても、ここでお互い酒を飲み飯を食っている現実という壁が、そんな街の事を考えさせなくするだろう。 確かにずっと続いていると思っていた夕暮れの向こう側が、ただの真っ白な世界というのは誰だって信じられない。しかし、俺はそれを見てしまった。夕暮れとこの世界の間に触れてしまった。だからこそ、この記憶が本当に存在していたという事を、地図の街の人

          精神安定剤を飲みながら 22

          精神安定剤を飲みながら 21

          地図の街の南端というのはどういうものだとあんたは思うか。 そもそも地図の端というのは一体、どういうものだとあんたは思うか。イメージするのは街に立てられている現在位置を表示する案内板、もしくはその街を全景が収められている一枚のガイドマップ。あとは県や市を細かく区切って全部収めた地図帳というのもあるな。とにかく、地図というのはいろいろある。けれどその地図の端というのは案外、意識されていないような気がする。なぜならその地図の端には続きがあるのが当たり前であって、続きはまた別の地図に

          精神安定剤を飲みながら 21

          精神安定剤を飲みながら 20

          俺は地図の南側の端に行くための道を歩いていた。地図の街というのは、透明であるという事を除けば、それが一番難しいことではあるのだけれど、ごく普通の街であろうとしていることは変わりないのかもしれない。先ほどとは違う考え方を、この地図の街に対してするようになっていた。 そう思ったのは、そこに生きている人々の生き方に対する姿勢が、他の街に生きるそれらと変わりがないように見えたからだった。それは透明であればあるほど、否応なしに目に入り込んでくるのだ。仕事場や観光施設、そして自宅でも、他

          精神安定剤を飲みながら 20

          精神安定剤を飲みながら 19

          そのまま棒立ちになった俺は、これからどうすればいいのかを考え始めた。鉄道会社の線路が開通するまで待つ。これは先ほど考えたように、開通が何時になるか分からないし、そもそもまた新しい地図になったときに余計に酷い道になってしまうかもしれない。そうしたらますますここから出られなくなってしまう。それは困る。非常に困る話だ。 だから、俺は別の考え方をしなければならなかった。鉄道会社の路線ではなく、地図の街の外に出る。思いついた時は、そんな方法があるのかは確信は無かったが、俺はここへは鉄道

          精神安定剤を飲みながら 19

          精神安定剤を飲みながら 18

          俺は昨日地図を貰った駅員にもう一度話を聞きたいと思った。その会社の制服を着た集団の中から、昨日の駅員を探した。駅員は簡単に見つけることができた。なぜなら、昨日と変わらず改札らしき場所に長机が置かれていて、そこに昨日と変わらずあの駅員が座っていたからだ。 俺はその駅員を見つけるとすぐに駆け寄って話しかけた。駅員は俺に気付くと申し訳なさそうに言った。「申し訳ありませんが、この駅はしばらく使う事が出来ません」 俺はその答えには納得できず「急に駅が使えなくなるなんて聞いたことがない」

          精神安定剤を飲みながら 18

          精神安定剤を飲みながら 17

          地図の街が一夜にして変化し、駅から電車に乗っては帰れなくなってしまったという継ぎの男の話を聞きながら、私はフライドポテトを箸で一本ずつ掴みながら食べていた。フライドポテトをゆっくりと食べるならこの方法で食べた方がいい。手を油でべたべたにすることもない。 地図の街の話はようやく大きな動きを見せて、継ぎの男が何をそこまで困り果てていたのか、そしてどう困惑していたのかについて、ごく僅かであるが知ることが出来た。いや、案外、困っていた理由の全てが、単にそれだけなのかもしれないが、継ぎ

          精神安定剤を飲みながら 17

          精神安定剤を飲みながら 16

          俺は何度も地図を見比べてから、実際に確かめなければならないと思った。一泊させてもらった老人に急いで挨拶をしてから、俺はその地図を頼りにもう一度街の中心地に戻った。 地図の見方さえ分かれば、街というのは案外簡単に出来ているものだって気付く。そう、街は道と道以外の何かで出来ている。大切なのは、今自分がどの道に居て、そして何処へ向かおうとしているか、ということなんだ。 それが分かっていれば、この街に見える様々な物や人物も、はっきりと自分とは別の、関係のない物だって掴めるようになる。

          精神安定剤を飲みながら 16

          精神安定剤を飲みながら 15

          俺が老人の家の中の片づけをしている時、街の中心側の方向から数人の何かを来た人たちがゆっくりと歩いてくるのが見えた。 その人たちは何かしらの防護服なのか、全身真っ白い姿で顔の部分に黒い遮光ガラスを付けていて、前後に並んで前に居る人たちが地図を確認しながら、後ろの人に何事かを伝えている。 その後ろに付いている人たちは何か大きな機械を引っ張っているらしい、徐々にその姿が大きくなるにしたがって、その防護服の人々は左右に一定の幅を開けて歩いているらしいことが分かった。 地図を持って前を

          精神安定剤を飲みながら 15

          精神安定剤を飲みながら 14

          透明な壁越しに見える日の出と共に布団を片付けて、ついでに玄関やら床やらを掃除していたら、そろそろと老人も目が覚めたみたいだった。 老人は「そこまでせんでも」とは言っていたが、こうでもしないと自分の気が済まない、というよりも地図の街のおかげで周りが勝手に朝になってしまい、もう眠れなくなってしまったから、老人が起きるまで何かしていたかっただけだ。 老人から朝食もごちそうになり、改めて老人に感謝を述べて家を出て行こうとした時に、老人は「そうだそうだ」と言いながら家から出て外に向かっ

          精神安定剤を飲みながら 14

          精神安定剤を飲みながら 13

          地図の街で目が覚めた時、俺は何処かの公園か道端で野宿しているんじゃないかと思った。目の前は夜明け前の暗い空で、首を少し動かせば街の端は薄く青白い空になりつつあった。でも、確かに俺は布団に包まれていて野外特有の寒さは感じることがなかったし、近くには同じように寝息を立てているこの家の老人が同じように横たわっていた。 確かにここは家の中で透明だから壁は見えないけれど、家としての要素というのはあるみたいだ。地図の街の事を考えると、どういう仕組みで動いているのか、今でも分からなくなる時

          精神安定剤を飲みながら 13

          精神安定剤を飲みながら 12

          その老人はもう何年もこの地図の街に住んでいるという男だった。この街の外れまで来る人間は珍しいと言っていたが、物や人で溢れかえっていた街の中心以外は真っ白な平面だったし、夜になっていくとはいえ目を凝らせば遠くには街の中心にあるいくつもの光が見えているんだから、ここも街の中心の様な気がしないでもなかった。しかし、長年住んでいれば、そのような気持ちにもなるのかもしれないな。 老人の家は出会ってから歩いて十数分ぐらいだっただろうか。老人の家に着くまで、老人が何をしていたのかを聞いた。

          精神安定剤を飲みながら 12