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鉄骨リノベーション

築40年?、商店街にある鉄骨3階建のヴィンテージ建築。
オーナーは相方のあきちゃん。

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この建物のストーリー
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昔はお店をしていたようで、売りに出されていたのを前オーナーさんが購入。
そのオーナーさんは、1階をガレージに使っていた。
初めて内見した時はバイクや工具があり、初代オーナーさんの荷物なのか、物で溢れていた記憶がある。

1年以上前の話。
DIYで直したかのような少し薄暗い空間だった記憶。
1階の天井は半分落ちて下地の軽鉄が見え、照明器具は新しいようだったが、DIYで取り付けたような跡。
2階と3階半分は初代オーナーさんの居住区になっていて、雨漏れの跡や、前オーナーさんがリフォームをしようとしていたような形跡など、微妙に解体された残骸があったり。

2階も3階も細かく仕切られていて、当初の図面と見比べても違う部分も多い。
昔の図面と合わない事はよくある事。

その鉄骨建築が売りに出されていて、前のオーナーさんは、売れても売れなくてもいいような雰囲気。
今のオーナーさんが購入すると決めた時は驚いたと聞きました。

仲介には不動産屋さんが入っているので、不動産屋さんからのお話。
これが購入する前の、この建物のストーリー。

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なぜ購入に至ったのか。
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現オーナーさん曰く「南側の外観がカワイイ」や、駅から近いという立地条件、価格、駐車場がある、雨漏れなし、家族ゆったり暮らせれる広さ、陽当たり、鉄骨造(重量鉄骨)など、駅から近い割には物件は安く、今で言う割安物件だと思う。
それにこの場所なら、将来売却して別でも建てられるという投資としても使えられる。

何度も内見し、僕も一緒に何度か現調したり間取りの打ち合わせなど、何度も何度も繰り返した。
今回に限ってはクライアンワークではなく、自分たちの考えている設計やデザインができる。
思い通りにできる。

クライアントワークは、自分たちの色は出しきれない。
なぜなら、お客さんがいて仕事をするのがクライアントワーク。だから要望を聞き取る。
それを形にしていくので、例えば動きにくい間取りでも、色合わせやデザインでも、違和感があっても、家具選びで空間と合わないと思っても、その仕様で進めないといけないこともある。
これは、いいとか悪いとかの話じゃないので誤解のないように。
それが個性でもあるので、素晴らしいと思う。

今回は2人で話し合い、ウチらしい、
NO DESIGN OFFICE らしい設計とデザインができて、はちむら工務店らしく施工ができる。
予算の関係もあって、できないこともあったが、今のNO DESIGN OFFICEの条件内での100%は出せた気がする。

それができる物件としてはベストだったので、購入に至る。

前回のヴィンテージ和風住宅も、同じような流れだった。
ウチを信頼してくれたからこそできる事がある。
信用と信頼とは大きく違う。その違いがハッキリわかるほど、いい仕事ができるし、いい関係性が築ける。
信頼されるようには毎回努力はしている。

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NO DESIGN OFFICE
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デザインについても、すごくよく話し合った。
事務所でも現場でも。
コンセプトは過ぎ来し方と行末。
現オーナーのあきちゃんが3代目。
初めは商店街のお店から始まり、前オーナーさんはガレージとして、現オーナーさんは住まいとして。

今まで過ぎ去った時間もあれば、これから先の時間。
過去も未来も変化してきて、変化をしていく空間になる。

あきちゃんの人柄でも明るい方が合うという事で、ホワイトをベースにホテルライクなデザインに設計していく事を決めるが、問題の間取りは当初計画していた図面とは大きく変わり、変更というよりも白紙なったw

スケルトン状態にした解体現場を見て、2人で「これはこのまま使うべきだ。下手に区切らずドーンと大きく空間を作って余白を楽しもう!」という事になり、約90平米のLDKを計画。

お風呂、洗面所もトイレもランドリールームも大きくゆったりと設計。
システムバスで例えるなら2125くらいかな。
天井の高さは2400㍉。

新築とは違って、限られた空間の中でどうするかを考えるので、新築とは使う脳は少し違って楽しい。
余談だが、新築やリフォーム、リノベーションなど、それぞれ考えるポイントは全然違う。
店舗なんて、全く違う視点から考えるので、悩むほど楽しいかったりする。

LDKは、全てがホワイト。
壁は砂壁、床はタイル、天井は鉄骨剥き出しで壁と同じ色を塗装。

今回は本当に質や素材に拘った。
全て本物を使おうというこだわり。
質感で変わる空間。
写真や動画だけでは伝えきれない質感。
体感して初めてわかる空気感と品格。

コンセプト通り、経年変化も楽しみ、愛着を持ち、暮らしていく。
新建材やビニールクロスなどでは出せない時間によって変化していく仕上げ。
これは人の手ではできない仕事。

木材も無垢で、あえて塗装はしていない。
色は焼けてくるだろう。それが味となり深みとなり空間を進化させ、深化する。
リノベはただ新しくするだけがリノベーションではない。
変化する心地よさがある。
素材をどう引き出せれるか。
料理と似てるかも。
余計な味付けはしない。それがウチのデザインであり、No Designと言っている意味でもある。

本質というこだわりは、本物の材料でしかできない事もある。

脱衣室

それと今回は動画にもあるように光が綺麗だった。
なので、カーテンは遮光などせずレースカーテン1枚だけで、光を和らぎ分散させる。
そうすると優しい光に包まれて心地よい。
心が軽くなりような、そんな時間を作り出してくれる。
全て自然に溶け込むような。

サニタリーの床は、カーペットの少し濃いオレンジ。
エルメスカラーのオレンジに近い色。
ここはオレンジしかないと直感で決めた。
実際に施工したのを見て大正解。
遊び心もあったけど、コントラストが綺麗に見えると思った。
直感とは過去の経験値によるものが大きいのかな。

濃い色と白の組み合わせは非常に強い視覚的なコントラストを作り出す。
それにオレンジ色は暖色系であり、暖かく温かみのある雰囲気を醸し出してくれる。真っ白な部屋との対比により、濃い目のオレンジ色のカーペットが目に映える。
アクセントカラーとしても、空間に深みを与え、少しの良い意味での緊張感も出て品が出る。
深いグリーン、モスグリーンも考えたが、オーナーの性格からオレンジ一択しかない。

オレンジは冒険でもなんでもなく、そこに合うから選んだだけ。
一か八かの博打はしない。合うから提案する。

一つ一つに意味があり、一つ一つにストーリーがある。

お風呂は、他とは違ってモルタル仕上げのグレー。
システムバスは使わない。この住宅には合わないからだ。
決してシステムバスがダメと言っておりわけじゃない。

モルタル仕上げ造作風呂

モルタルの全てグレーな空間は壁や天井など全てがグレーで一体化させたのでシンプルで美しい。
それにモルタルという質感。
寒く感じるかもしれないがそうではない。
バスタブはホワイトで置き型。お湯もたっぷり入る。一般よりも大きな空間で余白が綺麗に見えるようにしてくれる。
メンテナンスは必要だが、リラックスできるお風呂こそ、本物の材質で包みたい。

子供さんもお風呂が好きだし、オーナーもお風呂でゆっくり湯船に浸かりながらリラックスする。
その空間が狭ければ、意味がないと思いあえて広く設計した。
ちょうどそこにしか入らないような躯体の位置でもあった。

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間取り
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使いやすい動線、、、も大事だが、品があって綺麗かどうかを重視した。
毎日暮らすこの空間。
便利な間取りは機能性は上がるが、逆に面白味や感動などはなくなる。

それに毎日、綺麗な空間で過ごしたいという思いから、2階は大きく広く余白を楽しめる空間を優先。
その余白にアートを飾り、暮らしにアートを感じられ、子供にもいい影響を与えてくれる。

間取りは曖昧と明瞭を意識した。
玄関ドアを開ければ、すぐに見えるLDKで壁がなく全体を見渡せてしまう。
キッチンもダイニングも全て見えてしまう。
リビングにも仕切りなどなく、余白という仕切りを設けて曖昧に区切る。
ただプライベートな部分は明瞭に分ける。

ダイニングキッチン

3階はプライベートルーム。
子供でも大人でも、個室が必要。
夫婦も別室。仲が悪いのではなくw長く幸せに暮らしていくために夫婦別室を採用。
個人的にも勧めている。

親しき中にも礼儀あり、という考え方で、夫婦であっても子供であっても、家族1人の人としてのマナーがあると思う。
子供に関してはそれぞれ考え方はあるが、
年齢とともに生活も変わり成長していく。
いつまでも赤ちゃんでも子供でもない。
人として接するために、プライベートとパブリックは明確に区切る。

そうする事によって、心地よい空間が出来上がった。

玄関とホールとLDKの曖昧さ

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伝えきれない事は
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動画を見ていただければ分かりますが、やはりその空間に自分の身を置き、感じてもらう事。
五感で感じ、心が動く瞬間がある。

感動。感激。

全ての想いが詰まったこの空間はぜひ体感して欲しい。
予約してもらえれば、ご案内できます。
モデルハウスやショールームのように人が住んでいない空間を見てもらうよりも、リアルに住んでいる空間を見る事によって、より自分たちの生活に落とし込む事ができる。

最後に、動画を載せておきます。


2023.10.1

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