消えた兵隊

昔、よく見ていた夢がある。

今となっては仰向けでしか眠れないが、子供の頃はうつ伏せでしか眠れなかった。うつ伏せで眠る人にはわかってもらえると思うのだが、うつ伏せの場合、身体は下を向くのだが顔は横向けになるので、枕に横顔を押しつけながら眠ることになる。この寝方だと耳と枕が密着するのだが、こうしていると耳に残る音がある。鼓動の音がいやに大きく聞こえるのだ。


ドッドッドッドッ…まどろみながら聞いていると兵隊の行進が思い浮かぶ。
マンション前の道路を表情のない兵隊が一糸乱れぬ行進を続ける。
行進は4列でずっと先まで続いており終わりが見えない。
隊列は自分の部屋の下まで来ると足を止め一斉にこちらを向く。
そして先頭の兵士が片手を上げる合図とともに砲撃されるところで目がさめる。


なんだかこうして文章にすると荒唐無稽な夢だが、実際に見ていると怖い。夢とわかっていても覚まし方がわからない。

基本的に夢って起きた瞬間に忘れないようにしてても言葉にしようとする途端にズレていく感じがして、怖かったとか楽しかったっていう感情しか残らないことがほとんどなんだけど、この夢だけは正確に覚えている。

大人になり仰向けで寝るようになってから兵隊は見ていない。



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