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何故コロナの中さらに東京一極集中が進むのか


コロナで解消しなかった東京一極集中

昨年から世界各地で猛威を振るっている新型コロナウィルス。

その脅威は特に人口の多い大都市を襲い、東京都は4月に3度目となる緊急事態宣言を発令。行政からの僅かな支援金では耐えられず、閉店したり、倒産する企業も相次いでいます。

一部のメディアには、コロナ禍により東京一極集中にブレーキがかかるのではないか、との見方もありました。


しかし、実際はどうでしょうか。

東京都は2020年5月に転出超過となったものの、そう多くは減っておらず、2021年3月には再び転入超過となっています。

また、東京都からの転出先は神奈川県、埼玉県、千葉県などの近隣県が大部分を占め、一都三県で見れば一貫して地方から転入超過であるため、実態として首都圏への集中は相変わらずです。

参考記事:東京、9か月ぶりに「転入超過」(読売新聞)


なぜみんな東京に集まるのか?

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なぜ人や企業はみな東京を目指すのでしょうか?


東京は賃金が高いから。

東京の生活は魅力的だから。

たまたま就職先や進学先が東京だったから。


様々な理由があるでしょう。

しかし、日本の構造的な問題として指摘しなければならないのは、

日本は中央集権国家である

ということです。


経済産業省や法務省、厚生労働省など、企業をコントロールする中央省庁は全て東京にあり、新たな売買のルールを設ける際も東京でヒアリング調査をしたり、東京で説明会を行います。また、海外への投資の認可を得るために関係省庁への伺いも欠かすことができません。

つまり、中小企業ならともかく大企業ともなると、物理的に中央省庁と距離が近い首都圏に本社を置くことが有利であり、逆に地方に本社を置くこと自体が不利になっているのです。だからこそ大企業は東京に本社を移転したがり、雇用が東京に集中するため、労働力も東京に集中する…

これがこの国における東京一極集中の本質です。

いくら企業がリモートワークを導入したからといって、権力が東京に集中している以上、企業も東京に集中する構図は何も変わりません。一部の従業員が東京都心から少し離れたところに移住することはあっても、最低でも月に数回出社を求められるでしょうし、首都圏から離れることはできないのです。


政治家や官僚の言う「地方創生」は口だけ

諸外国を見ると、やはり中央集権国家は首都に一極集中する傾向が強いです。

アメリカは国家規模に比して官僚の力が弱く、首都ワシントンに企業が集中しているわけではありません。西海岸シリコンバレーのIT企業の社長がワシントンに出向いているでしょうか?そんなことはしてませんよね。

逆に中央集権の典型である中国は、北京への権力集中が顕著です。

「あれ?中国最大の都市は上海じゃないの?」って思うかもしれませんが、実は大企業や大富豪は北京一極集中であり、その数は世界の都市でダントツ。中国では当局に睨まれたら会社を潰されたり牢屋に入れられるので、中国は企業と政治家の癒着が根深く、そのため企業も富豪も北京に集まります。人口で北京が上海に負けてるのは北京市への厳格な移住制限があるためで、制限が無ければ北京の人口はもっと肥大化していて不思議ではありません。


さて、日本。

日本は中国ほどではないにしても中央集権国家です。

確かに中央集権にはメリットがありました。明治以降の富国強兵政策、戦後の急速な復興と高度経済成長は、中央集権だからこそ成し得た部分が大きいです。

新幹線や空港を造るにも、いちいち地権者に了解を得ていたら何十年経っても完成しませんから、今の中国のように上からの強権的なやり方のほうがスピーディに事業が進みます。

しかし時代は変わり、日本は少子高齢化と人口減少を迎え、国が縮小する中で新たにインフラを築くような状況ではなくなり、生活の豊かさが求められるようになりました。


それにも拘わらず、日本政府と中央省庁は権力を溜め込んでいます。

政府が強力なリーダーシップを発揮して、国民を一致団結する!中国や韓国に対抗する!というのならともかく、政府のコロナウイルス対策のあまり醜態ぶりに多くの国民は驚き呆れ、失望、怒りを覚えています。

私自身「指導力も無い者たちがどうして国の権力と金を牛耳ってるのか?」という疑問を抱かざるを得ません。


中央集権が日本の発展を阻害している

日本が今より高所得、高福祉な国へと発展することを目指すなら、重工業ではなくIT国家への脱皮は避けられません。

そうであれば、ロボットみたいな単一的な労働力よりも、アイディアとか多様性こそが、経済競争力のカギとなります。

ジェンダーの平等や多様性についてはメディアもうるさいくらいに言っていますが、「地域」ごとで多様性を持たせることも今後の日本にためになると考えています。アメリカやカナダや中国のような大国となると、他より法人税が低い地方、特別にビザが下りやすい地方、多様な言語が普及している地方などがありますが、日本にはそうしたものはなく、全て東京の水準に合わせられています。


アップルの創業者、ジョブズも生前、「なぜ日本ではイノベーションが起きないのか?」という問いに対して、こう答えています。

アメリカにはニューヨークがあり、ロサンザルスがあり、サンフランシスコがある。

出典:ジョブズの遺言「日本からイノベーションが生まれない根本原因」

つまり、ニューヨークで失敗しても、ロサンゼルスでもサンフランシスコでも再チャレンジできる。でも日本には東京しかない。大阪以下の地方都市はみな東京の下位互換でしかない。だから投資家たちは東京がダメだと日本そのものを諦める。結果的に北京や香港やソウルなど海外の都市に富を奪われてしまう、ということを暗に指摘しているのです。


確かに東京に比べ、地方は保守的、排他的だと言われています。

しかし地方に変化の機会を与えてこなかったのは、紛れもなく政府やメディアであり、地方の衰退を地方の責任にし続けた結果、今のような有様となっています。

沖縄県に対してはどうですか?島根県に対してはどうですか?

地方自治体が政府の方針と違えるようなことがあれば補助金を減らしたり、国粋主義者がその地域を猛烈に叩いたりと、このような風潮が地方を委縮させ、地方創生の機会を奪い続けています。


政治家やメディアに蔓延る「東京=尊」「地方=卑」という価値観こそ、実はこの国の癌であるに他なりません。


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