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アイスピック。

ドリルです。

ちょうど1年半前に 少年院から出所してきたという20歳の男の子と一緒に仕事に行くようになりました。


その少年は モトくんといいました。


チャラチャラした感じはしたけど 話していると 人懐っこく 愛嬌があり 良くも悪くも素直過ぎるようで 色々な所で人と衝突してしまうようでした。




僕は 人と衝突などしない安全ドライバーなので モトくんも慕ってくれるようになり色んな話をしてくれるようになりました。



そんな感じで 一緒に仕事をしていて数ヶ月たった頃 モトくんは 道具箱に入っている アイスピックを手にして語り始めました。



「ドリルさん。僕 このアイスピック見たら思い出すんですよ。」



「えっ?アイスピック?なんなん?BARとかで働いてたん?」



「ちゃいますよ。僕 昔大阪市内のI区に住んでたんです。」




「えっ!I区!僕もI区に住んでたよ!てゆうかずっとI区に住んでるわ。」





「えっ!そうなんですか!あそこ治安悪いですもんねぇ……僕 そこで一回拉致されたんですよ。」



「拉致?怖いな……何で拉致なんかされたん?」




「僕が チームの金を盗んだとか言い掛かりつけられて ほんで 何人かにボコられて そのまま拉致監禁用に借りてる部屋に連れ込まれたんです。」




「拉致監禁用に借りてる部屋ってなに?そんな事故物件になるべくしてなる物件あんの?怖すぎるんやけど。」




「はい、ほんでそこに手足縛られて椅子に座らされて チームのナンバー2に

『お前チームの金どこに隠したんや?』

って言われて 僕 ホンマに知らんから、

『知るか!取ってないわ!こんなんしてる暇あったら真犯人探しに行ってこい!』

って言うたったんです。」



「チームのナンバー2にようそんなん言うなぁ。大丈夫なんか?」



「はい、そしたらナンバー2がアイスピック持ち出してきて、

『お前が とったって言うてるやつがおんねやわ。サッサと金のあるとこだけ言うたら そこまでの事せぇへんから言うたら?痛い思いしたいんか?』

『いや、誰が言うてるのか知らんけどホンマに知らんから。何そのアイスピック刺せるもんやったら刺してみろや!』

って言うたんです。そんなんホンマに刺すって思わないですやん。」



「いや、思わへんけど アイスピック持ってるヤツにそんなん よう言わんわ。マンガの読み過ぎやで!マンガの主人公が言いそうなセリフや……いや、マンガの設定で言うたら そのナンバー2絶対 頭おかしいからブっ刺してくるやん!マンガやったらブっ刺してくるわ!」




「えっ?なんでオチ言うんですか?そうなんですよ、そいつ フトモモ思いっ切りブッ刺してきたんですよ!」



イッター!!めちゃくちゃ痛いわ!!

ウソやろ?マンガやん!!そのナンバー2もマンガ読み過ぎやから!ヤンキーマンガ読み過ぎぃ!

ほんで?どうなったん?その事故物件用の部屋から脱出できたん?」



「結局 僕が取ったっていうてたやつが 犯人やって 『すまんかったな。』言うて10万もらって終わりです。

真犯人の金取ったやつは どうなったか知りません。僕も濡れ衣着せられてムカつきますけど それだけの仕打ちは受けたと思います。多分殺すとかまでは やってないと思いますけど。ホンマにアイツらは金さえ回収できたらそれで良いと思うんで。」



「フトモモ穴空いてるのに10万か……安い気がするな……もう そんな子達とは 会ったりしてないんやろ?」



「はい!あのね ドリルさん……。」




「ん?なに?」




「僕 少年院入ってる時は 一刻も早く ここから出たいと 思ってました。

…………でも、今 こうやって出てきて 何ヶ月か真面目に 働いて、一人暮らしして……将来の事とか 考えたら めちゃくちゃ不安になるんですよ。

なんか 少年院で 規則正しく生活してた方が よっぽど楽やったな…って最近思うようになりました。

自由ってなんなんですかね?

出てきた方が よっぽど不自由に感じてしまいます。」




「確かに…あれこれ決められてる方が楽なんかも知らんな。自由って自分で色々と決めなあかんからしんどいんちゃうかな。自分で色々決め過ぎて結局 不自由になってるんかも……同じ不自由なんやったら 楽な不自由の方がマシやったって感じてしまってるんかな?なんかよう分からんけど。

でも、凄いな。」



「何がですか?」



「まぁ、モトくんが やった事は 許される事じゃ無いと思うけど 少年院入ったからか 僕なんかそうやって自由とか自由じゃないとか別に考えへんもん。

ちゃんと考えてる証拠なんちゃう?」




「そうでしょ(笑)

だって僕には 夢がありますから!」




「えっ!ええやん!なに?どんな夢?」




「ビッグになる!!」





「なんか アホっぽいけど カッコイイやん!」





「そうでしょ(笑)ありがとうございます。」

この話の本当度 80%

話を聞いてると 現実世界で本当に あり得るのかという話しですが 本当にあり得るんでしょうね……



モトくんは しばらくして会社を辞めてしまうのですがその話は また次の機会にしたいと思います。


サポートとは?・・・データマイニングの際の、相関分析の指標のひとつで、ある関連購買における支持率を表す。たとえば砂糖について卵の関連購買でサポートが20%の場合、砂糖と卵を一緒に購入する顧客が顧客全体の20%という意味である。 要するに心から嬉しいということでです!