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【対談】未来の24時間ジム。成功の鍵は「ファン作り」 ミヤウェルネス宮下氏 x hacomono 蓮田

「コロナ禍」という非常事態が常態化し、フィットネスクラブ業界は Withコロナ運営に向けたニューノーマル対応が必須となりました。

こうした背景で伸長しているのが24時間ジム業態。

本稿では、長年24時間ジムの運営にあたり、現在さまざまなフィットネスクラブの開業支援、運営支援にあたるミヤウェルネス 宮下氏を招き、これからの24時間ジム開業、運営のポイントについて対談しました。

〜プロフィール〜

スピーカー:ミヤウェルネス合同会社 代表 宮下祐季(以下、宮下)
大手フィットネスチェーンJOYFITで現場を経験した後、複数店舗のマネージャー、FC本部スーパーバイザーへと最年少でキャリアアップ。その経験を活かし、複数のフィットネス事業の立ち上げに携わった後、独立。これまでに70店舗以上の運営・開発・支援を手がける。
Twitter: https://twitter.com/miyawellness
HP: https://www.miyawellness.com/

聞き手:株式会社hacomono CEO 蓮田健一(以下、蓮田)
フィットネスクラブ・スクールなどリアル店舗の手続きを全てオンライン化する会員管理・予約・決済システム「hacomono」を開発。
Twitter: https://twitter.com/kenhasuda 
HP: https://www.hacomono.jp

宮下氏と蓮田の出会い

蓮田:
宮下さんと最初に出会ったのいつでしたっけ?

宮下:
2019年SPORTECのhacomonoブースで初めてお会いしました。

蓮田:
2019年当時、宮下さんはBEST STYLE FITNESSの運営を担当されていました。当時の「hacomono」はどんな印象でしたか?

宮下:
hacomono導入店舗でのシステムの使用感や、デザイン性の良さを見て感銘受けていたので、SPORTECで初めて蓮田さんにお会いした時は、このシステムをつくっているのがこの方なんだ!と嬉しく思いました。

運営・開発・支援に関わった店舗は70店舗以上

蓮田:
現在は独立されてフィットネスコンサルタントとして活躍されていますが、それまでのキャリアについて簡単に教えてもらえますか?

宮下:
まず大手24時間フィットネスジムチェーンのアルバイトスタッフからスタートし、そこからエリアマネージャー、スーパーバイザーとキャリアアップしていきました。

転職してBEST STYLE FITNESSの立ち上げに携わった後、2020年に株式会社フィットネクサスの創業に従事し、フィットネス事業の統括を行いました。

キャリアを通して、新店の立ち上げに携わることが多かったですね。その中でフランチャイズの支援を引き受けた経験が今の仕事にも活きています。

蓮田:
これまで携わった店舗はどれぐらいですか?

宮下:
30店舗ぐらいでしょうか。
運営開発や支援も含めれば70店舗は超えると思います。

フランチャイズに関してはこれまでに7社の開発支援や運営支援などを担当しました。独立してからは、主に新店開発の請け負いや、既存店舗の運営支援が主となっています。

VERUSやPocket Fitnessなどの従量課金制ジムは、日本の新しい起爆剤となりうるのか?

蓮田:
先日、hacomono導入店舗のJUSTFIT24 VERUS(栃木県宇都宮市)という従量課金制の24時間ジムが会員数5,000名を突破したというニュースがありました。

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(JUSTFIT24 VERUS)

宮下:
日本でもいよいよ海外のようなインパクトあるジムが登場してきたな、と感じましたね。

蓮田:
宮下さんが関わっているところとしては、NATURE FITNESS 澳本さんが始める従量課金制のPocket Fitness(愛媛県松山市)も注目を集めていますが、この2つは日本におけるフィットネス業界の起爆剤となるでしょうか?

宮下:
そう思います。業界平均として、会員登録をしていながら利用していない幽霊会員が約70%もおり、定期的に利用しているアクティブユーザーはわずか30%といわれます。会員数を保有することで成り立っているビジネスモデルですから、本来ならば皆にきちんと利用してもらうことがいいはずです。

しかし、実際に全員来てしまったら混雑するし、来ないほうが施設としてはラクして儲かってしまうというのが現実でした。

その点、VERUSやPocket Fitnessのように、アクティブユーザーの増加が収益増加にもつながるモデルであれば理に叶っているし、お客さまにも理解されやすい。これからもっと会員数も増えて行くだろうと期待しています。

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(Pocket Fitness)

熱さとビジネスセンスを備えたフィットネスクラブ経営者が増加

蓮田:
VERUSの横山さん、NATURE FITNESSの澳本さんと話していると、とにかく熱い!(笑)

宮下:
ホントですね!
でも、似ているようで対照的な2人。

横山さんは施設の会員システムに「hacomono」を導入した理由として「自社で開発しようとしたが、やはりプロにお任せしたほうがいいと思った」と言っているように、自社ですべてを完結させるのでなく、色々な会社を巻き込むチームビルディング方式をとる方。

一方の澳本さんは自社でシステム開発もして、マシンの輸入販売もするなど、すべて自社で取り組もうとする方。

施設についても、VERUSは本格的にトレーニングする方もターゲットにする反面、PocketFitenssはライトユーザーを主なターゲットにしています。それぞれの考え方があって、とても面白いです。

蓮田:
VERUSやPocket Fitnessのほかに宮下さんが注目している24Hジムや、気になる経営者はいますか?

宮下:
岡山のRATIO BODY DESIGN(以下、レシオ)と、名古屋のGANZANですね。

レシオは最初登場した時は驚きました。内装もしっかりしていて、VERUSの横山さんや、NATURE FITNESSの澳本さんも見学に行き、参考にされたと聞きます。

GANZANの月会費は一般的な24Hジムのそれと変わりませんが、サービスがしっかりしているところに特徴があります。

SDGsやサスティナブルなど社会的意義も大切にしていて、そのような歯ブラシを使ったり、海沿いのゴミ拾いなどにも取り組んでいて素晴らしいと思います。代表の岩山拓磨さんも、横山さんたちと同じく、確かまだ30代前半と若いです。

蓮田:
いい経営者といいジムが生まれていくのは嬉しいことですね。

新規開業後は「ファン作り」を目指せ

蓮田:
今後の24Hジムの方向性についてはどう考えていますか?

宮下:
競争は間違いなく激化していくと思います。1つのエリア内で、コンビニぐらい林立するようになるでしょう。

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そこで勝てる施設とそうでない施設に二極化していくわけですが、勝てる施設になるには、施設にファンが付いているかどうか、またエニタイムフィットネスのような圧倒的なチェーンボリュームがあるか、そのほか付加価値のある施設であるかがポイントになると思います。

蓮田:
ハイボリューム・ロープライスな施設は、経営自体は難しさが伴うと思うのですが、これから増えていくでしょうか?

宮下:
むしろ郊外ならばこのモデルは加速するかもしれません。アメリカでも、一般的に郊外にあるCostcoの商圏は10kmぐらいあり、実際、みんな車で時間をかけてでも行きますよね。同じように、郊外かつ商圏5kmぐらいとっても成立するモデルかと思います。

蓮田:
逆に都心型ジムのこれからはどうなるでしょう?

宮下:
方向性の1つとしては、月会費7,000円前後、最低人員のスタッフがいて、かつ無人の時間帯もあるようなモデルは、これから2つのタイプに分かれて行くのではないでしょうか。

1つは徹底的にDX化して運営コストを下げ、安価な会費で提供する価格優位性・無人モデル。もう1つは、今の単価を維持するために、サービスを高めていくモデルです。

そのために、ファン作りやコミュニティが醸成されやすいスタジオを併設するジムなども出てくるのではないかと思います。

新規開業後の戦略不足が招く、スピードダウン

蓮田:
事業再構築の動きも最近盛んですが、例えばこれから開業する方が、参考にしようと経営に関する本を読んでも、成功パターンばかりが載っていて失敗パターンが少ないということが多いように感じます。

むしろ後者のほうが学びになると思うのですが、宮下さんがこれまでに見た失敗パターンについて教えてもらえませんか?

宮下:
新規参入される方に多いのが、事業計画の作成や商圏の調査は精度高く行っているのに、オープン以降の戦略をまったく立てていない、ということがあります。

これだけのコストを使ってオープン時にこれだけ集客します、まではきっちりできているのに、オープン後の集客計画や、もっといえばスタッフの働き方、シフト管理はどうするのか、人件費はどのぐらいで管理するのかなどが練られていないのです。

そのほか、例えばオプション契約率を高めるにはどうするのかなど、オープンした後の目標や、施設継続への取り組みについて、もっと考えることが必要だと思います。

宮下さん

(宮下祐季氏)

開業時の会費に対する考え方

蓮田:
最初の会費設定は、皆さん悩まれるかと思います。考え方のヒントはありますか?

宮下:
まず気を付けなければならないのは、オープン当初から会費プランの選択肢をたくさん用意しないことです。


顧客の入会欲求が高い状態の時に選択肢が多いと迷いが出て、Web入会での離脱も高まります。

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店舗側としてはつい親切心でいろいろな会費を用意してあげたくなってしまうと思うのですが、最初はシンプルさを心がけることも大事なんです。

継続率を高めるためにできること

蓮田:
ジムの会員さんって最初はやる気に溢れて通うのですが、大体3ヶ月くらいでモチベーションが下がってきますよね。

24Hジムは、総合フィットネスクラブやヨガスタジオなどに比べるとコミュニティ形成が薄かったり、スタッフと会員の接点が少ないですが、継続率を高めるために工夫できることはありますか?

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宮下:
施設にまず来てもらうことが大切なので、シンプルな方法ですが、来館することによってポイントが貯まったり、月6回来たらプロテイン1 杯サービスなどもいいかと思います。足を運ばせること=運動することにもつながります。

私の過去の経験からも、いろいろな計測ツールなどを使って指導方内容を充実させるよりも、足を運ばせる取り組みに力を入れたほうが会員の継続率も高まります。

退会する方というのは、月1 回も利用せず、そのことが罪悪感になって辞めることが多いんです。だから、まずは来てもらうことが大切です。

アルバイト中心のスタッフ教育におけるポイント

蓮田:
スタッフアワーで働くスタッフは、アルバイトなど正社員でない方も多いですよね。アルバイトスタッフの教育に難しさを感じている経営者が多いように思いますが、宮下さんはどういうところから取り組んでいますか?

宮下:
クレンリネス含め、施設の運営品質を保つための管理表をつくること。

あとは、1日中事務所にこもっていて何をしているのかわからないスタッフがいる場合も多いので、「館内の作業」「事務作業」など、1日の業務スケジュールを、当日でもいいので作成するのもお勧めです。

そうすれば、逆にスタッフが「何をしていいかわからない」という時間もなくなります。要するに決まった業務に人を当て込む作業が大切だと思います。

これからの24Hジムにおけるコンテンツ案

蓮田:
24Hジムでも、ジムエリアだけでなく、様々なコンテンツやオプションを付ける例も増えてきました。

例えば、ゴルフシュミレーションマシンを導入して、今人気のゴルファー層を取り入れたり、セルフエステマシンを導入して、女性層を取り込んだりなど。

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宮下:
異業種のコンテンツを導入する場合は、自社のターゲットにマッチするものなのか、しっかり見極めることが大切です。例えばタンニングマシンならば、利用するのは主にフリーウエイトユーザーです。

そのような方は大会への出場を目指していることが多いので、歯のホワイトニングなどの付帯サービスもいいでしょうし、女性向けならセルフエステやコラーゲンマシンがいいと思います。

経営者に必要なマインドセット

蓮田:
事業再構築などでジム経営を開始する人も増えてきています。最後に、これから開業する経営者の方にアドバイスをお願いします。

宮下:
事業計画は開発して終わりではありません。現場の運営をきちんと仕組み化できて初めて成功といえます。そのために、まずは以下のポイントを抑えて欲しいと思います。

まず経営者は、自身がどんな施設を作りたいのか、その想いや目標をスタッフときちんと共有してください。経営者とスタッフが共通認識のもと一丸となって取り組むことは、良いチームビルディングにもつながります。

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運営がうまくいっていない場合というのは、そもそも事業モデルがズレていたということでなければ、チームビルディングに問題があることが多いです。その部分をしっかり探ってください。

そして最後は、スタッフそれぞれの能力を見極め、適材適所に配置することです。「スタッフが育たない」と嘆く経営層の方は多いですが、それは自身のマネジメント不足を露呈しているようなものです。スタッフとしっかりコミュニケーションをとることで長所を見つけ、伸ばしてあげて欲しいと思います。

◆ Information ◆

ミヤウェルネス 宮下氏と hacomonoとで「これからの24時間ジム経営ガイドブック」を作成いたしました。

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開業までの流れ、デジタル活用のヒントが満載です。
本稿のさらに詳しい内容を掲載しております。
ぜひ、合わせてご覧ください。

「これからの24時間ジム経営ガイドブック」ダウンロードはこちら

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9月29日(水)17:00〜18:00開催

名称未設定 1

澳本氏と24時間ジム「GANZAN」を運営する岩山拓磨氏が登壇し、
24時間ジムの未来についてディスカッションします。
ぜひお気軽にご参加ください。
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