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CEO日記 2023年8月2日「業界ルール」

業界ルールとは、同業種の中で常識や商慣習として存在するものです。私が業界に入って知った、驚くべき!? 業界ルールをご紹介していきます。

出版と編集の業界ルールとは

今回、弊社の主要事業である、出版と編集の業界ルールを少しご紹介したいと思います。

と、ここまで書いて、頭を整理するために、編集と出版の業界ルールって、どなんものがあるのだろうとググったところ、この記事がTOPに表示されました。

一発目から、著作権法が出てきました。出版・編集業界が最も意識する法律は、やはり著作権法でしょう。しかし、これ以下は難しい話を抜きに、私が見聞した業界ルールを書いていくことにします。


類似した本を他の出版社から出してもOK

著者A氏がX社から出した「愛のある話」という恋愛エッセイが爆売れしました。すると、他の出版社YとZが、A氏に「愛のある話」のような本を出したいとオファーし、A氏はY社から「愛ある生活を送ろう」、Z社から「愛のある100の話」という恋愛エッセイを出しました。

一般的な出版契約では、他社から似たような本を出してはならない、他社から似たようなテーマの本を出してはならない旨の条文が入っています。

でも、上述のA氏と出版各社の例は、業界ルールでOKなのです。2匹目のドジョウ的な本が多いのは、そのためです。法的なことは調べてませんが、ほぼ同じ文章や構成でない限りOKだよと(緩く)判断するのが業界ルールのようです。

個人的には、著者と編集者の倫理観的な問題かと思いますが、商い的には、業界ルールでOKならば、私も「あり」だと思います。

これが書籍ではなく商標権に絡む問題でしたら、きっと大揉めに揉めるでしょうね。商標権の判例を見る限り、なんとなく似てるよねはアウトですから。

書店は売りたい本を入荷できない

多くの書店さんは、入荷を取次(とりつぎ)と呼ばれる本の問屋さんにお願いしています。そして、取次さんは、取引がある(業界では「口座がある」と表現)出版社から本を仕入れて、書店さんに出荷します。

この際、一般的な商取引では、発注者が注文した商品と個数を、受注者が納品しますが、出版の業界ルールでは、取次さん(受注者)が自ら商品を選定して、書店さん(発注者)に商品を送ります。

これを「見計らい配本」と言います。本の売れ行きなど情報を持つ取次さんが、売れるであろう、あるいは売りたい本を納品するシステムです。

見計らい配本のメリットは、書店さんが新刊情報や本の売れ行きを調査して、発注する手間がないことです。一方で、売りたい本が納品されないおそれというデメリットもあります。

聞くところによると、書店さんは取次さんから納品された段ボールを開けることなく、返品することもあるとか。書籍の返品率が50%近くになるという理由は、ここにあります。

なお、弊社ではトランスビューさんを通じて、書店さんから注文をいただいてから発送する「直接注文」システムをとっています。トランスビューさんと直接注文については、別に書いてみたいと思います。

請求は雑誌が発売後、入金は更にその先

これは出版も編集も共通する業界ルールだと思います。

分かりやすい例を上げると、8月15日発売の雑誌の請求は8月31日、入金は9月31日というルールです。

この場合、編集プロダクションは6月半に取材・撮影をして、7月末の校了(編集作業の終了日。データを印刷会社に渡す)までに誌面デザインに落とし込んだ記事を納品しています。

ですが、請求と入金が上述のようになるが、出版・編集の業界ルールです。

この業界ルールを、物販(仕入れと販売)の方は驚かれるかと思いますが、出版・編集という業界では、文字や写真などデータを”整理した”記事が商品となりますので、取材日から校了日までは商品制作期間という認識なのだと思います。また、実際に校了前日まで何度も修正することは珍しくありません。

そうであれば、校了日の月末に請求すればいいのでは? という考え方もあるかと思いますが、そこが業界ルールです。お互いに相手のあることですから、発売を請求の起点にしているのでしょう。

ただし、発売という概念がないWeb媒体の場合は、納品日の月末に請求、翌月末に入金という流れが一般化しています。

私は、出版・編集業界以外のことは分かりませんが、例えば、建築業界などはどうなっているのか興味があります。職人さんへの代金や設備の仕入れは、鍵の引き渡し後になっているのでしょうか?


いかがでしたでしょうか。出版・編集の業界ルールは、もっと他にもありますが、今日はこれにて筆を置きます。

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