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いい夢みろよ 駅近瀑湯篇


17:53

近鉄日本橋

鶴橋から大阪上本町まで乗車、1分。
さらに近鉄日本橋まで乗車、1分。

そんなに刻む必要あるの?
って感じで移動&移動。間がない。

ただ、たしかに慌ただしくはあるのだが
旅先はたいてい初めて見る場所。
流れていく景色は、いつも新鮮で楽しい。

さて、ライブ前に銭湯へ浸かるのは
よりリラックスして音楽に浸かるため…
もはや儀式に近いけれども
楽しんで行ける可能な範囲で
行くようにしている。

地下にある近鉄日本橋の駅。改札を出る。
スマホ地図を頼りに、地上へ向かう構内。
ん?なんだ。ちょっと生臭いぞ…。       階段先の地上に答えがあった。

鮮魚屋さん。ああ、どおりで…。
お店の横はちょっと下り坂。

この通りを進んで…って…は?

もう見えてるのだが?

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

17:58

末広湯

付き出した「ゆ」の看板は、鮮魚店からも見える

地図の縮尺の関係で、駅からは
もっと離れているのかと思っていた。
駅近すぎて驚く。

どれくらい近いかって言うと
駅の改札から地上へ出るよりも
地上出て銭湯まで歩く距離の方が短い。

別府の駅前高等温泉並に駅近、いや、
距離で言ったら、こちらの方が近いかな?

体格のいい男性3人組が先に玄関にいる。
順番待ちというほどでもないが
続いて番台で受付をする。

脱衣所。狭すぎる、ということはない。
雰囲気はいい感じに雑多な感じだ。
大阪の空気がそうさせるのだろうか。

早速、浴場へ。こちらも似た印象だ。
古そうではあるが、蛇口や浴槽などは
かなり綺麗に整備されている。

入って右手に湯舟が並び
手前から、ジャグジー、座湯、電気とある。
奥にはサウナ。隣に水風呂。

アタリを引いたなぁ。惜しむらくは
長居できないことくらいか…。


入って左手は洗い場。
誰かの使いさしの石鹸がある。
触れはしないが、濡れて見える。
誰かの忘れ物かなと思う。
掃除もあるだろうに。
お風呂屋さんが、わざわざ
残しているわけはなかろうて。

自前のお風呂セットにて
髭を剃り、頭と体を洗う。

湯も派手に、気前よく出てくれるし
ちゃんと熱々である。

アタリを引いたなぁ!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

湯船に浸かる。

浴室内には8人ほどいた。
ちょっと混んでるのかなぁ。けどまぁ
芋洗い状態ではないから、まだ大丈夫か。

若年層が意外に多い。
そして、出入りも中々に激しい。
客たちは、せっかちそうにすぐに出ていく。
来客も多く、脱衣所にはもう次の客が見える。

回転率の高いラーメン屋さんかなにかか?
繁盛するのは、実にいいことだ。

サウナへ。
こぢんまりとしているからか、室温高め。
5人も入れないだろう。狭さ際立つ。
奥の方に座る。

後から1人入室。
ドアの前、私の隣に座る。

私の奥側の足元には何やら機械。
小さなボイラーだろうか。
その機械の後ろ辺りから蒸気が出る。
丁度、膝小僧らへんの位置。

「アツツッ」

少し座るところをずらして調節する。
隣の男は目を閉じ動じない。
熱いのはここだけなんだろうな…。

1分もたたないうちに隣の男は立ちあがり
満足そうに息を吐いて出ていく。
え、もういいの?…まぁ、いいのか。
サウナ楽しむ時間なんて人の好みだ。

自分もほどほどにして出る。

サウナを出てすぐの、水風呂が気持ちいい。
ライオンが口から水を豪快に
「マァーッ」っと大瀑布している。
これがあるだけで、随分と銭湯が楽しい。

「よぉーしよしよし」

顎裏を撫でつつ、水風呂から浴室を眺める。

欧州系の男性が、さっきの石鹸を
怪訝そうに見ている。
隣の人へ尋ねる。
どうやら忘れ物かどうか確認している様子。
隣の人は手を振りわからないといった素振り。
男性は、どうしても気になったのだろう。
疑問を解消したいのか番台へ行く。
手には使いさしの石鹸を持っている。


一部始終を見つめたまま、目を細める。


「こういう時
 どんな顔をしたらいいのか
 わからないの」


「神妙な顔になってますよ」



脳内の役者たちが
また変なことを言っている。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

18:30

熱い湯舟と水風呂は、それぞれ
2回ほどルーチンして風呂を上がる。

う~む、いい週末だなぁ。
駅が近くて、疲労感を全く感じなかったし。

どうせ行くのだから、多少疲れていた方が
お得な気がしないでもないのだが(貧乏性)。
けれども『疲れ』なんてものは、
なくていいなら、元からない方がいい。

駅近いし、ラッキーだったなと思う。
次に移動する時も、億劫に感じないからね。


18:40

日本橋駅

到着は近鉄日本橋だったが
次乗るのは大阪メトロの日本橋だ。
駅は隣接している、というか
乗り換えられる駅なんだから当然か。

駅へ着くと、さほど待たずに電車が来る。
流石大阪。5分おきに運行しているようだ。

列車は地下を走る。
大都市の中心は開発を進めるため
路線を埋設して建造するものだ。
と、昔何かで見た気がする。そういえば
東京も名古屋も中心部は地下鉄ばかり…。
発展のための『効率』というやつか。

目的地の最寄り駅、北浜まで3駅。
所要時間も、僅か5分ほどである。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

北浜駅

電車を降り、改札を進んで地上へ。
スマホを頼りに目的地を目指す。

すると、橋の意匠も美しい大きな川。
川には島が浮かぶ。ここは中州か?

広がる夜空に川からの風が気持ちいい。

水面に映る夜景が、世界を美しく2倍にする
中空に浮かんでいるようにも見える


東西にのびるこの島は、中之島と言うらしい。

東に向かって先細になる島の大部分は
どうやら公園になっているようだ。
橋から島へ向かう階段も伸びている。
階段の先には庭園が見える。
遠目でも、白い花が咲いているとわかる。
あれは、バラだろうか?白いバラか?
近くで見たい…、けれど…。

時計を見る、時刻は18:46。

もうライブ会場はオープンしている。
スタートは19:00の予定。
…会場へ向かうのが正解である。

後ろ髪を引かれつつも、先を目指す。

西側を見る。
道路を挟んで、川の両岸にビル郡。
その一角から夜空へ向かって
緑色の細いレーザーが穿たれている。

夜空切り裂くレーザーの先は、何を座すのか



本来の目的を、忘れちゃあならないよな

私はライブを見に来たのだった。





つづく






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