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『口に出して』とフェミニズム考察

※この記事には後半、メンバーシップ限定で写真を含みます🌷

突然だが日本のフィメールラッパー、Awich(エイウィッチ)さんをご存じだろうか。
(ここでは敢えてフィメールラッパーと記させて頂く)

Awichは、日本の女性歌手、ラッパー。沖縄県出身。YENTOWNのメンバー。 19歳で渡米し、大学を卒業。アフリカ系男性と結婚し娘を出産するも、夫と死別。その後日本に帰国し、本格的な音楽活動を再開。2020年ユニバーサルミュージックよりメジャーデビュー。 

ウィキペディア

私もカッコよくて大好きなのだが、その中でも2021年にリリースした『口に出して』という曲を独断と偏見で考察していきたい。

口に出して 溜めてた分全部
口に出して 怖がらないでいい
口に出して 恥ずかしがらずにほら
全部飲み込むから口に出して

口に出して/作曲:ZOT on the WAVE
作詞︰Awich

これが歌詞の序盤だ。
最初からエロティック且つ性的要素を充分に連想させるパンチのあるリリックである。

しかし、彼女は敢えてそれを際立たせることで何がしたかったのだろうか?
話題性へのフック?性的アピール?

その前に考えるべきなのは、そもそものこの歌が私達に興味として引っ掛かる理由は歌詞云々よりも、''女性だから''という点では無いだろうかと私は踏んでいる。

女性でありながら、「口に出して」
過激で挑発的だ。

しかしここで一点、置き換えてみて欲しい。
もしこれが男性が歌っていたら?
性豪さ、奔放さ、据え膳食わぬは男の恥という言葉や英雄色を好むという言葉に違和感が無く丸く収まっている現状でそこに話題性を投じる人間は一体どれ程居るのだろうか?

果たしてこの感じ方は正しいのだろうか。
私は''色''や''性''を敢えて強調したこの曲は女性である彼女が歌った事で、私達に歌という手段で女性という性別と性のあり方を今一度考えさせるきっかけを与えていると感じた。

ごちゃごちゃ何言ってんの?
舐めてもないのに何イッてんの?
口にすら出せないやつらは知らんぷり
ハートがあるならば見せてよ全部

口に出して/作曲:ZOT on the WAVE
作詞︰Awich

そもそもの、女性が貞操を重んじるべきであるという考え方や、女性が性的にオープンであることに非難の声が上がる事には諸説のひとつに明治時代の家父長制が挙げられる。

1.家制度とは、
1898年に施行された明治民法に定められた家族制度を指します。1947年の制度廃止まで続きました。
「家」を単位として1つの戸籍を作り、戸主である家長がそこに所属する家族全員を絶対的な権利をもって統率(支配)する仕組みでした。戸主(家長)は家で一番「年長の男性」と決まっていました。たとえば1つの戸籍に祖父・祖母・父親・母親・男児・女児といれば祖父が戸主で家長です。

https://onl.sc/7Ybszmb より引用

継いだ先の家庭で本当は誰の子かわからない状態は、あってはならない事態だ。

このような制度を守るべく、根付いたのが女性が貞節を重んじるといった考え方だと言われている。
それは1947年に廃止されても尚、根強く根底に残っていると言えるだろう。

女性は恥じらいを常に持ち続け、欲望は包み隠し固く貞節を守り抜くべきである。奔放であるという事は恥である。
確かに考え方のひとつとして人として大切である思う。

でも一つ投じたい。
そんなに大事なことならば女性だけではなく男性にも適用されるべき、人類で守るべく価値観の一つとして捉えれば良いのでは無いだろうか。
男性は子孫を残すべく遺伝子が〜などとよく聞くような御託が並ぶかもしれないが、私達は動物とは一線を画す、理性を兼ね揃えた人間だ。

人間である、という等しき条件の元、わざわざ性別で差異を付ける必要性はどこにあるのだろうか。
いや、どこにも無いだろう。

女性に頑なな貞節を求める一方、街角やインターネットに溢れる女性性を強調したポルノ写真や映像。
自分の欲望や都合の為だったら利用して良いのだろうか?
全てが矛盾を孕み、歪んでいると思う。

I’m a gangsta. Sex iconお掃除してあげる Dyson
器デカい男なら You know
腹ばっか立てずに立てろよChimpo
その愛 このBody剥き出し Give it to meウジウジ しないで
出せないならもう私が出すわよBoy

口に出して/作曲:ZOT on the WAVE
作詞︰Awich  

この「腹ばっか立てずに立てろよChimpo」という部分があまりにも露骨な表現すぎてAwichさんが変更しようか迷っていた所、YZERRたちBAD HOPのメンバーの助けもあり、そのままの歌詞の強さで決行されたそう。

私はこの曲が、受け取り側に多くの期待を託していると感じる。

そもそも、エロスは一体誰の為?
その答えはたった一人の異性のためでも良いし、同性の為でも、はたまた自分の為でも良いのだろう。
〇〇の為、という欄の中に入る言葉はきっと人それぞれだ。
空欄の人だっているはずだ。

Awichさんはよく曲中で『媚びないエロス』という言葉を発している。
それがAwichさんにとっての答えであり、私達に切に伝えたいことなのでは無いだろうか。

そう。何も取っ替え引っ替え性的に奔放になりたいと証言しているのではなく、貞節という概念を女性であるという区別の中、敢えて強制されなくとも自分の価値観は自分で定めたいと言っているように私は感じた。

媚びないエロス。
別に胸元が大胆にはだけていても良い。ミニスカートで自慢の脚とその若さやフレッシュさを炸裂させても良い。
要は、顔も知らない第三者に勝手にとやかく人格や生き方を定められなくとも一人の自立した人間として、善悪は己で決めさせろという事であり、言いたい事ははっきりと自分の口に出して伝える、主張するといった権利に関してもダブルミーニングを用いて巧みに伝えられているのではないだろうか。
音楽の中に社会性も交わった、まさに日本語ラップ界のプロフェッショナルだと私は思う。

彼女の逞しい強さ、骨太なリリック、肝の座った立ち振る舞い。
彼女の、彼女にしか出すことの出来ない主張にこれからも目が離せない‼︎


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