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母になったとて

自分に自信が無い。行動・言動・服装に至るまで、全てにおいて自信がない。これで良いのだと思えた事は今までの人生でほとんどない。暗い過去があるとか親に捨てられたとかそういう理由は無く、ただただ自信が無い。

そんな薄暗い私が子供を産み育てるなんて想像もしていなかったが、意外と楽しく暮らせている。

昔から褒められる事がとても苦手だった。
褒められても自信の無さ故に謙遜するか、どこか小馬鹿にされている気分を編み出し、勝手に憂鬱になっていた。

でもこの20年繰り返され続けたスタイルは、子に関しては適用されなかった。

本当に衝撃だった。子を褒められる度に心がぷくぷくと泡立つような、鎖骨がじんわり暖かくなってほっとするような不思議な喜びを感じた。

自分が褒められた時の居心地が悪い気分とは、似ても似つかない素晴らしい気分だった。

これが褒められて嬉しいって事なんだと、その日の記憶のハイライトを噛み締めて眠れなかった。本当に本当に嬉しかった。

興奮が落ち着いた後、改めて考えた。

自分自身の事の様に感じていたが、子と私は別物である。一心同体のように感じていたがそれは違う。ちょっと離れて考えられる分、純粋に嬉しさを感じる事が出来たのだ。このまま突っ走ると所謂毒親になっていただろうか。
今のうちに気付けて良かった。

そして子の事を本気で素晴らしいと思っているからこその喜びもある。ありきたりだが、共感してもらえる喜びは素敵なものだ。

こじんまりとした顔、耳に優しい声、旺盛な食欲、どこをとっても素晴らしい。

この子を世に産み出した事は、私の人生においての数少ない100%の大成功である。

子がどういう人間になっていくかはわからないけど、人並みの自己肯定感を持ち、褒められる喜びを日常的に感じられる子になってもらいたい。

相変わらず私自身は褒められると、岩をなめさせられる様な嫌な気持ちになる。理由は未だにわからない。

でもこんな素晴らしい子を産んだ自分も、案外悪くないんじゃないのかという気持ちもたまに浮き上がる。
このまま行けば私の自己肯定感も子と一緒にすくすくと育つのだろうか。

どちらにせよ屈折した心根はすぐには変われそうにない。
母になったとて。

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