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詩 『文』によせて (2010.4.26)

すきま無く並ぶ集合体
何百 何千 何万と
ただワクの中に
何かを形作る訳でもなく
ぎっしりと整列している
黒一色の服をまとい
文字という称号をもらって

だが一つ一つ個性あるそのものは
立つ位置を選ぶ
前後にいるものを意識する
横に並ぶことを踏躇する

小さな集団を作り
    集団が組織を成す

色がある
音が聞こえる
においがする

風と光と影が誘う
涙と笑い
優しさと暴力

広がるあらゆる美しい世界
絶えることの無い愚かな争い

経験し得なかった
さまざまなことを
主役となって私は生きる

悩み 怒り 時に歓喜し 時に乱舞する
王となり 家来となって 時代を生きる
男となり 女となって 人間を理解する
犬となって 猫となって 優しさを学ぶ

ミクロと宇宙の果てしない広がり
領域のない無限の謎の世界へ
ひとっ飛びで旅をする

すきま無く並ぶ集合体
無機質な黒の組織
なのに私を魅了する

感情が刺激される
驚きと喜び 悲しみと励み
思考の扉が開き 

心は自由に飛びまわる
生きている
私は生きている
今ここでこの時を味わっている

予測のつかないずっと先の世紀は?
考えても答えのないあの世の世界は?
人間とは? 人生とは?

謎だらけだけれど
今いるこの時を教えてくれる

無機質な黒の組織は
私が私であることを教えてくれる

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