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句集を読む:『あの時 俳句が生まれる瞬間』

『あの時 俳句が生まれる瞬間』 高野ムツオ 写真・佐々木隆二 2021朔出版
著者は昭和22年宮城県生まれ、多賀城市在住。「小熊座」主宰。

2019年から2021年にかけて開催された「語り継ぐ命の俳句」展を機にまとめられた1冊で、同著者による『語り継ぐいのちの俳句』(2018年朔出版)の第三章「震災詠100句自句自解」を写真と共に再構成、加筆修正したもの。100句は著者の句集『萬の翅』、『片翅』からの句+新作。著者自身は「自解は避けるのが俳句本来のありよう」あとがきで述べておられるが、その上であえて全句を解説した「自解」は、東日本大震災を伝える重要な要素になっている。

[好きな句15句]
四肢へ地震ただ轟轟と轟轟と
車にも仰臥という死春の月
瓦礫みな人間のもの犬ふぐり
みちのくの今年の桜すべて供花
暮れてなお空を見つめて母子草
残りしは西日の土間と放射能
村一つ消すは易しと雪降れり
かいつむり何を見て来し眼の光
被曝して吹雪きてなおも福の島
人間を見ている原子炉春の闇
福島の地霊の血潮桃の花
また降って来る氷塵かセシウムか
人住めぬ町に七夕雨が降る
福島は蝶の片翅霜の夜
生者こそ行方不明や野のすみれ

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