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句集を読む:『萬の翅』

『萬の翅』 高野ムツオ 2013 角川学芸出版
著者は昭和22年宮城県生まれ、多賀城市在住。「小熊座」主宰。
本書は著者の第5句集、全496句、第48回蛇笏賞受賞作。

[章立て]
樫の実 平成14年
蝦夷蟬 平成15年
凍れ日 平成16年
雪間草 平成17年
鯨の血 平成18年
緑の夜 平成19年
崖氷柱 平成20年
櫟落葉 平成21年
凍裂 平成22年
蘆の角 平成23年
鰯の眼 平成24年

[好きな句15句]
裸木となる太陽と話すため
バーベルのような夏の陽病室に
息を吸うたびにきらめき犬ふぐり
東京はついに迷宮蟬しぐれ
車にも仰臥という死春の月
瓦礫みな人間のもの犬ふぐり
みちのくの今年の桜すべて供花
死の恐怖死者しか知らず花万朶
暮れてなお空を見つめて母子草
残りしは西日の土間と放射能
破魔矢射よ永遠に途絶えし未来へと
村一つ消すは易しと雪降れり
被曝して吹雪きてなおも福の島
人間を見ている原子炉春の闇
雪解水あるはずだった未来より

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