ブックガイド(111)「旗師・冬狐堂二 狐闇」(北森鴻)

シリーズ二作目

 店舗を持たない古美術商・旗師。宇佐美陶子シリーズの第二作である。第一作「狐罠」は贋作による「目利き殺し」と殺人事件を描いたコンゲームにして殺人事件譚であった。
 今作は、贋作者の汚名を受けて鑑札を剥奪された陶子の戦いが描かれる。

古代史の謎から近代史の闇に

 市で競り落とした二枚の青銅鏡の一枚が、全く別の三角縁神獣鏡にすり替えられていた。 第一作と打って変わり、今作では古代の青銅鏡、明治期の文化財にまつわる盗掘事件などが語られる。陶子の周りに集まってくる仲間達に、異端の民俗学者・蓮丈那智が登場
 人気シリーズ蓮丈那智シリーズは、諸星大二郎氏の妖怪ハンターシリーズ稗田礼次郎に対するトリビュートが特徴だが、今回の「狐闇」は星野宣之氏の宗像教授シリーズを思わせる。

今回は伝奇要素も!

 常々、私の脳内には稗田先生と宗像先生という伝奇脳があるのだが、今回は宗像脳が響いたわけだ。古代製鉄民族も出てくるし。
 作者・北森さんと私は三歳違いの同世代である。2010年没は、あまりに早すぎる。もっと長く生きて、作品を書いて欲しかった。
「旗師・冬狐堂二 狐闇」

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