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THE MIRROR/松川ボックス

1971に竣工し、1979年に建築学会作品賞を受賞した宮脇檀の設計による松川ボックスがアート・ギャラリーとして利用されていると聞いて訪れた。

1960年代から1970年代の前半に掛けて、日本は高度経済成長期を迎えて無秩序に都市開発が進んだ。「日本に都市計画はない」とよく言われるが、他の先進国に比べて計画的に街区が整備された場所は京都や札幌などを除いて、とても少ない。松川ボックスが立地する西早稲田も例外ではなく、東京都は震災復興した隅田川東側を除いて、今も街区を歩いてみると殺伐とした都市風景を肌で感じ取ることができる。

そんな時代に西早稲田に計画された松川ボックスは、宮脇檀の「プライマリィ・アーキテクチャア論」/『建築文化』1970.08に基づいて設計されている。吉村順三の弟子である宮脇檀はモダンリビングの申し子のような存在だが、「L+nB」の形式で商品化されるメーカー住宅群や無秩序に開発される殺伐とした都市風景に対して「周囲に馴染むような連続の仕方をしえない」「形態が自己完結的」で「比較的関係なく認識されやすい性格を内在している」建築を目指している。「プライマリィな形」の先にボックス・シリーズは生み出されたようだ。

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