きみの窟はすずしい日陰たくさんの水たまりをそのうちに抱えて


歌集(ジャッカロープ)の手元の在庫がなくなりました🦌🐇
ありがたいことです。一年経つといろんなことが変わるもんだね。


生きたり死んだり、そういう創作をしていると思うけど死への憧憬みたいな感情はもうない。死はあまりにも身近だからだと思う。
病院で働いていたとき、患者が亡くなることを「ステる」と言っていた。ドイツ語の「sterben」(死)が語源で、特に医師は日常的に使っていた印象がある。わたしと同期入職した同僚たちも半年くらい経てば少しずつこの言葉を使うようになったけど、わたしは前職をしていた数年間で一度も使ったことはない。この言葉(や医療者の職業ゆえの"感覚の麻痺")に対する嫌悪感は決して表には出さなかった。そこまで立派な人にはなれない、それで、それが自分をじわじわと蝕んでいった。こういうこだわりは本当に自分の悪い癖だと思うけど、違和感を受け入れてそのことばを発する自分を想像すると死にそうなくらい凹んでいたので、迎合するよりは余程いいと思えた。


わたしは結構「まあそれもいいんじゃないですか」「そうかもしれませんね」とか言ってしまいがちなんだけど、どうしても受け入れられない表現というのはある。
それは他の人から見た自分の表現もそうであることが多分にあると思っていて、だからというか、そうしたいからそうするのだけど、自分の指で巻き取れるくらいのたましいの飛ばし方でやっていきたいと思っている。それなら責任を持てるからだ。


同居人に短歌のことを話していたら、あんまり語るもんじゃないですよ、と言われた。
それは本当にそうかもしれませんね。



きみの窟はすずしい日陰たくさんの水たまりをそのうちに抱えて
/湯島はじめ

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