断酒6年

 お酒をやめて6年が経った。1年目で仕事を辞めてフリーランスになり、2年目は結構心身共に充実した時間を過ごし、3年目でフリーランスの仕事も途切れてそのまま引きこもり始め、4年目は引きこもったまま泥沼で、5年目で引きこもりから脱出してニュージーランドに人生の舞台が移り結構好転して、6年目は1年間ニュージーランドで過ごしつつ何度かアップダウンを経験した。思ってみればここまで来るのは早かった。山も谷もあったけど、それでも「お酒は飲まない」ということは徹底できている。
 最初の頃は3カ月から半年くらいでかなり人生が変わると思っていたけど、実際には思ったよりも遥かに長期戦だ。確かに最初の1カ月で体重は4-5キロ落ちたし、半年くらいで顔つきの変化も感じられて、「短い期間で効果が出た!」と喜んでいた。だけどその後、メンタル不安定の時期があったり引きこもったり、「断酒だけしていれば人生の問題が全て片付く」ほどシンプルではないことに気付かされていった。寧ろこれまで酒を飲んで誤魔化していた問題の1つ1つと直面することになる訳で、それは長い目線で見れば「乗り越えるべき壁」のようなものだけど、渦中にいるときは結構しんどい。
 例えば、途中で1年半引きこもっていたけど、脱出した頃にこれまで「如何に下らないことを気にしていたか」「肩肘張って生きていたか」「自分を客観視することを忘れていたか」に気付かされた。もし諸々のストレスをお酒で誤魔化していたら引きこもらなかったかもしれない。だけどこの気付きも得られなかっただろう。これからも断酒は続けるけれど、生きている限り何かしらの問題に直面し続けるはずだ。でもその度に気付きがあって、新しいバージョンの自分になっていけるのだろう。断酒をしたからと言って、全てが一気に変わる訳ではない。紆余曲折を経ながら、ゆっくりと、でも確実に変わっていく。
 
 そもそも人生は、そんなに短期間で一気に変わるようなものではないのだろう。勿論一夜にしてスーパースターになったとか、1カ月くらいの海外旅行で価値観が大きく変わったとか、数カ月の勉強で難関試験を突破したとか、そういうフェーズはなくはないし、ストーリーとしては注目されやすい。だけどそれだけで人生が終わる訳ではなくて、その後の方が1人の人間の人生としては遥かに重要だ。短期間で一気に人生が好転した後、大抵はしんどい時期がやってくる。そのしんどい時期を上手に過ごせることで、心のアップダウンは結構抑えられるのではないだろうか。
 ここ最近の僕も反省する点が結構ある。引きこもりから脱出した直後の4カ月、そしてその後ニュージーランドに渡ってから最初の半年くらいは、自分の予想以上のスピードで物事が好転していき、とてもワクワクする日々であったし、「もうこれで人生大丈夫かもしれない」と思うことも多々あった。だけどある時を境にその感覚が崩れていき、次第に精神不安定な自分に戻ってしまった。あの頃に「今はこんなフェーズだよな」と客観視できていれば楽だったのだろうけど、いまいち上手に対処できなかった。当初の好転し続けていた日々と比較して、1人で苦しくなっていたのだ。

 何はともあれ断酒6年。まだまだこれからも学ぶことが多い。ここまでの6年で、予想以上に多くの方々に断酒のことを理解して頂けたし、沢山のサポートや励ましも頂くことができた。本当に感謝してもしきれない。過去にあれだけ酒に溺れていた人間がこうも変われるものなのだと思うと、何だかもっともっと様々な面で良い方向に変わっていけるのでは?という希望も見えてくる。焦る必要はない。1つ1つ経験して、1つ1つ学んで、1つ1つ変えていこう。

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