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かいしゃのともだち

事務のおばちゃんとして働き始めて、もうすぐ2年になる。
本当は大学の寮母さんになりたかった。「寝坊した学生を起こそうと布団をめくった途端、朝勃ちしたちんぽが飛び出てきてビックリする」という茶番をやってみたいし、童貞の寮生全員の筆下ろしをして彼らの同窓会のサプライズゲストとして呼ばれてみたい。
転職活動中、某大の寮の管理人の求人広告が出ていたので即応募して面接に行ったが、よくよく聞いたら女子寮だった。まぎらわしい求人出すな!

「寮母が無理なら作業服の男がたくさんいる会社で働きたい」と思い、今の職場を派遣会社に紹介してもらった。不純な志望理由で前職(マスコミ系)とは全く畑違いの業種に飛び込んでしまった為、入社当初は右も左もわからずオロオロするばかりだった。
私の教育係の上司は鬼神の如く仕事をこなすバリキャリで、社内でも厳しいことで有名な女性だった。彼女から毎日ビシビシ指導を受け、事務のOLってこんなに大変なのか!と感心した。
後から聞いた話によると、周りの社員さんたちは「あんなに怒られてたらすぐ辞めちゃうだろうなってみんな心配してた」そうだが、そういうものだと思っていたのであまり気にならなかった。そして、鬼神(の如く仕事をこなす)上司本人は、

「私、かなり怒ってるのに永田さんニコニコしてて怖い…」

と漏らしていたらしく、怒る側が恐怖を感じるというおかしな状態になっていた。
そういえば、大将も「怒っても怒っても全然気にしないから何考えてるんだかさっぱりわからない」みたいなことをぼやいていた。
どうやら派遣先でもバイト先でも「怒られていることに気づかない」という私の特殊能力(能力名・IQゼロ)が発動していたらしい。
(なので、実際は私が怒られたと認識している回数の数倍は怒られていたことになる。)
IQゼロ発動中は「わざわざ教えてくれてありがとう!」という純度100%の感謝しかないので、ニコニコしてしまう。怒っている人間に恐怖と気持ち悪さを植え付け、ストレスを与える危険な能力である。


さて、派遣先の友人の話である。
ノロマな事務のおばちゃんとして少しずつ認知されるようになってきた頃、同じ部署の人たちの飲み会に参加した。私の酒癖の悪さは前出の通りである。

酔って派遣先の会社の人のちんちんを舐めてしまわないよう、細心の注意を払わなければならない。
一次会ではおとなしく過ごしたが、二次会でエンジニアの男の子と2人きりになった途端、つい気が弛みハプニングバーについて熱弁してしまった。
飲み会でハプバーについて熱く語る派遣社員、最悪の人材である。
(ちなみに、その日も泥酔して寝過ごし、路上で寝てるところを通報されてパトカーに乗せられた)

翌日その男の子から呼び出しがあり、会社から少し離れた場所にある喫茶店で話すことになった。
もしかしたら記憶がないだけで、彼にとんでもないセクハラをしてしまったかもしれない。してなかったとしても、ドン引いてることは間違いない。
どう謝罪すべきか考えながら喫茶店に向かうと、エンジニアの男の子が開口一番こう言った。

「僕もハプバーよく行くんですよ」

話を聞くと、実はもともとハプバーの常連で、縄の練習をしているのだという。助かった、変態だった。
それ以来、彼とは立場や年齢を超えて仲良くしてもらっている。
2人で飲みに行ったり縛ってもらったりしているが、我々は無挿入契約(NIA=Non Incert Agreement)を締結しているので、性的な関係はフェラチオまでである。所謂「友フェラ」というやつだ(「友チョコ」の派生)。

派遣会社の担当者から「前職と全く職種が違いますが大丈夫ですか!?」としつこいくらい心配されたが、就労アンケートの職場環境の項目は常に最高評価をつけている。
実はヤリマンの事務のおばちゃんと実は変態のエンジニアが、何食わぬ顔して一緒に仕事できるのだから、これ以上いい環境の職場はない。

たまに私が落ち込んでいると、トイレから自分のちんちんの写真を送って励ましてくれたりする。
やはり持つべきものは、変態の友だ。
いい会社で働けて幸せである。

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