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身体操作・古武術関連記事まとめ

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今までの自分の記事の中から、身体操作と古武術の記事をまとめました
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記事一覧

あなたはリュックサックを使うべきか? 歩き方で決まる向き・不向き

リュックサックを使っている人、増えましたよね。ビジネス用のリュックなんてものもできて、楽になりました! といいたいのですが、私の場合、なぜかリュックで歩くと疲れます。 ・リュックが向く人、向かない人 つい先日、同じことをおっしゃるお客さんと会いました。お互いの歩き方を話すうちに、わかってきたこと。 リュックは、大股で歩く人には向きません。 理由。 大きな歩幅で歩く場合、骨盤を回して歩幅を広げます。 ところがリュックを背負って大股で歩くと、荷物が揺れてバランスが変化する

骨盤を開閉する

前回に引き続き骨盤の話。 骨盤は、3つの骨が集まってできていて、継ぎ目で動けるという話でした。 動かせる量は大きくありませんが、運動の自由度がちょっと上がります。 ・骨盤を開閉する 前回、骨盤が蝶のように羽ばたくと書きました。 足を止めたまま骨盤を開く場合、考えられる効果は2つあります。 1つは、足の外旋が大きくなること。 バレエなどで、足を外旋する人に有効です。 2つ目は、重心の位置の変化。 骨盤を開くと、脊椎の下端にある仙骨が前に押し出されます。閉じると後ろに引

骨盤は、蝶のように羽ばたく

足の動かし方を考えるときに、忘れてはならないのが骨盤です。 骨盤は、ねじったり開閉したりと、いろんな事ができる骨なのです。 ・骨盤は3つの骨でできている図のように、骨盤は中央の仙骨と、両側の寛骨の3つが集まってできています(このうち、寛骨は腸骨、恥骨、坐骨の3つがくっついて一つの骨になったもの)。 その継ぎ目は3つ。 まずは前方の一つ。下腹部の骨の出っ張り、恥骨結合です。 ここは軟骨でできていて、その弾力によってわずかに動きます。 そして後方に2つ、仙腸関節。 脊椎の下

身体を分割して動けば、出足が早くなる 

武術でもスポーツでも、移動は大事な要素です。 最近、気がついたのは、 「全身同時に動かなくてもいいんじゃないか?」 ということ。 ・早く動く方法は2つある 人間が移動するには加速・減速が必要です。 物理で考えると 加速度 = 力 ÷ 質量 なので、急加速・急減速をしたいなら、方法は2つ。 力を大きくするか、質量を小さくするか、です。 一般的に使われるのは、力を大きくする方法。 筋力を上げたり、力を出しやすいポジションを使う(関節を曲げすぎない)、重力の助けを借りるなど

腕の中を「割る」練習

甲野先生のところで習った技術に「身体を割る」というものがあります。 腕を一本の棒と考えていると、動きのバリエーションは限られてしまいますが、腕をいくつもの部分に分けて認識できると、できることが増えます。 今回は一番初歩の「前腕の分割」。 野菜を縦切りにするように、縦に四分割して認識できるようにします。 注 noteで、これとは別の「身体を割る」技術について書いている方がいらっしゃいます。たまたま言葉は同じですが、別の技術です。 ・前腕の分割①指を広げ、軽く固める 指を

足ぺらを乗り越えて、JFFC本戦に進出したkoji選手

フリースタイルフットボールの話です。 少し前の話になりますが、足ぺらの治療で八起堂に来てくださっているkoji選手が、フリースタイルフットボールの全国大会、JFFCの予選でベスト32まで進み、本戦に出場されました。 本戦では勝てなかったとのことですが、足ぺらを患った選手がエアムーブを武器に本戦にまで進むこと自体が、稀有なことのようです。 今回は、koji選手の話。 ・「足ぺらになってから上手くなった」 koji選手のすごいところは、上の一言に尽きます。 足ぺらになっ

相手の力を抜いてしまう技の原理③ 筋肉の「センサーモード」

甲野道場にいたときに使われていた用語の一つに「センサーモード」があります。 先生の技を受けたときに、力が入らなくなって、スッと崩されてしまいます。そんなときの説明に使われていました。 ・センサー・モードは感覚に集中する状態 家の階段や、駅の階段なら、駆け上がることができますね。 では廃屋の、見るからに腐りかけていて、ギシギシ音のする怪談を駆け上がれるでしょうか? 無理ですね。いつ落ちるかわからないところで、警戒心なく動くことはできないでしょう。 以前も書いたとおり、私達

進化論的な稽古の方法

身体の動かし方を左右する内部感覚。できる人にとっては当然のことでも、できない人にとっては全くわからなかったりします。 長嶋茂雄氏の「バッといってガーンと打つ」みたいな話。 こればかりは、師匠から聞く教えもヒントにしかなりません。自分自身で再発見するしかないところです。 ・進化論的アプローチ 先日読んだ本「失敗の科学」(マシュー・サイド著 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)に、ぴったりくる話が載っていました。 1970年当時、総合メーカーのユニリーバは、粉末洗剤

「良い動作」を脳に保存するには ~上達論

動きをパターン化すれば、高度な動きでも脳の負担を減らせる、というのが前回の話。 では、どう練習すれば高度な動きのパターンが作れるのか、が今回の話です。 大脳で繰り返した動きが小脳に保存されるので、理論的には良い動作を繰り返して小脳に保存すればいいことになりますね。 とはいえ、その「良い動作」が難しい。 ・最初は形から がむしゃらに数だけやっても、それまでと同じ動作の繰り返しなら上達には繋がりません。良い動作を取り入れるための方向づけが必要です。 初心者の場合は、まず形

アスリートの脳は、どうやって身体を動かすのか

前回は、脳の負担を減らすと反応が良くなるという話でした。 一般に、精密で高度な動きは多くの情報を処理しなくてはならないので、脳の負担が大きく、反応速度は遅くなるはず。 しかし、一流のアスリートはそれを両立させます。 それを可能にするのは運動の省略化、セット化です。 ・繰り返しによる「セット化」 わかりやすいように、食事で使う箸を例にします。 たった2本の棒でいろんな操作ができる箸は、五指を複雑に使っているように見えますね。でも、分析すると同時に動いている部分が多いのです

「身体は固かったけど、反射神経は良かった」という思い出話から考えてみた

もしかしたら「身体が固い方が反射神経が良い」のかもしれない。 そう考えたきっかけは、数人の患者さんが、同じ思い出話をされたこと。 「私、子供の頃から身体が固かったんだけど、反射神経は良かったわ~」 「身体が固い」と、「反射神経が良い」。 無関係に見えるこの2つには、実は関係があるのではないか?  ありえない、とも言い切れないのです。 ・手抜きする脳 私達の身体には、数千を超える筋肉があると言われています。脳はそれらのすべてをコントロールしているわけですから、大変ですよ

古武術の「消える動き」は、なぜ見えないのか? ミラーニューロンの仮説

古武術では、動作について「見えない(消える)動き」という表現が使われることがあります。 速度が速くて目に見えない、という意味ではなく 「どう動いたかがわからない、いつの間にか動作が終わっている」 という動きです。 有名なのは、駒川改心流剣術、民弥流居合の黒田鉄山氏の動きです(you tubeで「黒田鉄山」か「消える動き」で検索してみて下さい)。 なお、私は黒田氏にお会いしたことはなく、理論も詳しくは知りません。今回の記事は全て私の勝手な考察であることを申し添えておきます

昔の人は、なぜ力持ちだった? 型稽古の、もう一つの意味

時代劇などでよく見る米俵。あれひとつで、だいたい60kgあるそうです(時代や地方によって多少の違いあり)。 この大きさは「一人で担いで運べる」ことを基準として定められたとか。 みなさん、担いで運べます? 私は無理。 古い写真で昔の人の身体を見ると、それほど太い筋肉はついていません。 考えられるのは、筋肉の付き方が違っていたのではないかということ。 ・昔の人も楽をしたかった 昔は、動力と言えば水車と牛・馬。 逆に言うと、それ以外はすべて人力が頼り。なんでも人の力で動かし

「力を抜くと重心が落ちる」とはどういうことか?

重心は、身体各部の重さで決定されます。普通に考えると、姿勢を低くしないかぎり、重心の位置は下がりません。 でも、普通に立っているのに重心が落ちて安定していると感じるときがありますよね。たいてい、余分な力が抜けている時。 ・力を抜くと重心が落ちる? 「力を抜くと重心が落ちる」はよく言われるのですが、どうしてそうなるのでしょうか? 実際に重心が落ちている可能性もあります。 例えば筋肉は、力を抜いているときにはダランとなりますね。 ダランとなって垂れ下がれば、いくらか重心が