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書籍レビュー『ユーザーの心の声を聴く技術』

『自分の当たり前を捨てて、ユーザーの声を聴く』

ユーザーインタビューを行う際、ファシリテーターが戦うのは様々な認知の壁である。
それは自分自身の認知の癖に始まり、周囲のメンバーの思い込みや勘違いであったり、インタビュー対象のユーザーの誤解など多種多様である。
こうした様々な壁を乗り越えて、ユーザーの心の声を聴いた先に、次に生かせる有益が示唆が見つかる。

本書はユーザーインタビューの経験豊富な著者が、ユーザーインタビューを実施する際に直面する様々な失敗とその回避・解決策をまとめたものである。
インタビュー実施前の企画段階から始まり、ガイドの作成、リクルーティング、インタビュー実施、分析と一通りの流れを網羅しているため、ユーザーインタビューを実施する人にとっては本書一冊で全体を網羅して理解することができる。

また、ユーザーインタビューの専門家である著者ならではの示唆にも富んでいる。
言うまでもなくユーザーインタビューは定性調査であり、特定のユーザーの実態を深く知るためのものである。
最近は大容量のデータ解析が簡単にできるようになったこともあり、Webのアクセス解析などの定量分析を行ったことのある人の方が多いかもしれない。
ユーザーインタビューではそれほど多くの人の声を聴くことは難しいが、データだけからは見えない、名前の声を聴くことができる点が有益である。
時にサービスやプロダクトの改善には、多数派の意見を聞くよりも少数のファンの声を聴いた方が良い時もある。

こうした、他の調査手法との差別化を図る意味でも、ユーザーの行動、その時の環境や文脈、その時のユーザーの心境を網羅的に、徹底的に深堀することが重要だと述べられている。ただ単に質問を流していくだけではアンケート調査と変わらない。ユーザーインタビューならではの成果を出すために、ユーザーを誘導せず、深く共感できるレベルまでひたすら聴くことが重要であると学ぶことができた。

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