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映画日記『ベイビー・ドライバー』マーク・ボランとクィーン! 音楽にまみれたオタク映画なのか?

ネットフリックスで『ベイビー・ドライバー』という映画を見た。アメリカ映画だと思って見ていたが、音楽がイギリス寄りなので、イギリスの映画かもしれない。風景は、アメリカにも見えるし、ヨーロッパにも見える。でも、やけに平たく広がった、大陸的な風景だった。

ハナシは簡単だ。主人公は、銀行強盗チームの専属ドライバーをやっている。だから銀行強盗のハナシだ。主人公は十代に見えるほど若いのに、なぜか、天才的なドライビング・テクニックがあるのだ。

主人公の設定が何歳なのかわからないが、やけに童顔で、そのくせ背がとても高い。なんとなく野球の大谷翔平を連想した。大谷ほど顔はちっちゃくないが、かなりの童顔だ。

主人公は、本当は犯罪に手を染めたくないのだが、理由があって、加担せざるを得ない状況にある。また、人を殺したり、暴力をふるったりするのが嫌いだ。嫌いというより、主人公の主義に反するのだ。

主人公は、名前を「ベイビー」という。だから、映画のタイトルが「ベイビー・ドライバー」なのだ。

この映画の時代設定がいつなのかわからないが、銀行強盗が成り立つ、時代・社会を前提にした映画だ。監視カメラは少し出てきたが、パソコンは出てこなかった。

音の録音はテープレコーダーでするし、メディアもカセット・テープと塩ビのレコード盤だ。でも登場する自動車は、日本車も多く、2000年代以降のものに見えるし、iPodがいくつも登場する。

だから、時代設定がよくわからない。わからないというより、時代考証が滅茶苦茶で混乱する。もしかしたら、この映画は、ファンタジーなのかもしれない。

この映画自体が、いつに作られていつ公開されたのか、わからない。2005年の気もするし、2015年の気もするし、2020年の気もする。調べればすぐに判明することなのだが、そこまでする気が、まったく起こらない。

知っている役者が一人だけ出ていた。強盗団のリーダーだ。『評決のとき』や『L.A.コンフィデンシャル』に出ていた俳優だ。ラッセル・クローか、ケビン・スペイシーのどっちかだ。多分、そういう名前だった。

特定できないのは、ちゃんと覚えていないし、私が映画に全般に詳しくないからだ。

私が映画をよく見ていたのは、1990年代の半ばくらいまでで、その後は、2022年まで、ほとんど観ていない。だから、その間のことは、欠落している。どんな役者が出て来て、どんな作品が流行ったのか、観ていないから知らないのだ。

そもそもが、大ヒット映画よりも、ミニシアター系が好みだったから、今の映画の一般常識が、私には身についていないのだ。

4月にネットフリックスに加入して、映画やドラマを、毎日2本くらいずつ観ている。似たような映画に似たような顔ばかりで、正直、何がなんだかわからない。

私は61歳だ。なんとか坂の集団アイドルやジャニーズの誰それなんて、何回見ても、頭に定着しない。それと同じで、若い俳優の顔など、認識できないのだ。

そういう状態で、ネットフリックスで大量の映画を観ている。だから『ベイビー・ドライバー』がどういう系譜に位置する映画なのかもわからない。でも見ていたら、そろそろ何かたまってきた。で、すこし、吐き出そうと思って、これを書いている。


主人公がいつも行くダイナーに「デボラ」という名前の女の子がいて、二人は恋仲になる。女の子は美人なので、好かれるのはわかるが、主人公が彼女に好かれる理由が、いまいち、わからない。まあ、いっか、主人公だし……。

この映画を作っている人は何歳くらいなのだろうか? デボラがらみで、ティラノザウルス・レックスの「デボラ」がかかる。1968年の曲だ。私は、マーク・ボランのミーハーだから、すぐに1968年なんて年代も出てくる。

私が生まれて初めて買ったシングルレコードがT-レックスの「チルドレン・オブ・ザ・リボリューション」だったりする。でも、「デボラ」となると、私より数歳上の人だ。

また、主人公が車を運転するときに最もマッチする曲として、クィーンの「ブライトン・ロック」がかかる。1974年の曲だ。私は、日本におけるクィーンの第一世代だから、こっちも詳しい。

この2曲だけで、映画の良し悪しは別として、強烈な親近感を抱いてしまった。

Tyrannosaurus‐Rex Debora


Queen - Brighton Rock - Sheer Heart Attack - Lyrics (1974) HQ



こんなふうに、英国のロック・ミュージックが、この映画の物語と不可分な関係にあって、ミュージック・ビデオのようなシーンがいくつも映画の中に現れる。

だから「ベイビー・ドライバー」は、音楽にまみれて育った人間が、そのオタク性を存分に発揮して作った映画と言える。この映画を観て、私が何かを書きたくなったのは、そこに触発されたからだ。

でも、なんか違う気がする。理由はよくわからないが、この映画を作った人は、私と同世代というよりは、下の世代の気がする。T-レックスもクィーンも親が聴いていて、この映画を作った人は、その子供の世代の気がするのだ。

映画自体は、なんということのないストーリーで、正直、退屈だった。見ながら、次の展開も予測出来て、なんら目新しいところはなかった。この映画の新しい点は、依存している音楽の取り込み方だ。音楽依存をそのままエンタメにしているところだ。

なんて書いてみたけど、見て良かったなとは、いまいち思わなかった。いつものように、身も蓋もない結論になってしまった。最後にT-rexの「ライド・ア・ホワイト・スワン」を流して誤魔化そう。

T.REX "Ride A White Swan"


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