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紫式部や清少納言と同時代に活躍した、金太郎の『酒吞童子図扇面』@東京国立博物館

坂田金時さかたのきんときといえば、あの「金太郎」のことで、誰もが知っている……と書き出してみたものの、何をした人だったっけ? と、幼い頃に聞いたお話が、今ひとつ思い出せませんね。

そんな金太郎こと坂田金時さかたのきんときなどを引き連れて、鬼を退治したのが源頼光みなもとのよりみつということになります。

実は今はもう展示されていないかもしれませんが、それほど遠くない先日に、東京国立博物館トーハクへ行った時に、『酒吞童子しゅてんどうじ扇面せんめん』というのが、ズラッと並んで展示されていました。その時に撮った写真を、noteに保存しつつ、今まで未公開だったのですが、そろそろ展示替えでなくなってしまうんじゃないかと思いたち、急いで公開することにしました。

■実は紫式部や清少納言と同時代だった金太郎

まずは坂田金時(金太郎)を調べてみると、まぁ想像どおりというか、記憶の通りに、箱根の近くにある金時山のあたりで生まれて、山姥やまんばに育てられたようです……。まぁ「ようです」なんて言っていますが、実在なのかどうかは分かりませんけれど、おそらくモデルとなるような腕白小僧はいたのでしょうね。さすがに熊と相撲をとって遊んでいたかは、怪しいですけどね。

箱根に観光で行くと、必ず耳にする金時山などです

すくすくと育った金太郎は、当時の東海道があった足柄峠で、源頼光みなもとのよりみつと出会って、そのまま配下となって京都へ行き、鬼退治へと出かけていくわけです。

それでまたWikipediaで源頼光みなもとのよりみつの項を読んでみると、この方も実在の人で、しかも藤原道長の側近として仕えたこともあるそうです。つまりは『源氏物語』が紫式部によって執筆された時代の人なんですよね。藤原道長の側近だったのですから、紫式部や清少納言の噂も聞いていただろうし、まぁこのお話は、そういう時代のお話だったというのが意外でした。

■室町時代に描かれた『酒呑童子図扇面』

トーハクに展示されていたのは、『酒呑童子図扇面』という、扇子の扇面のような形の紙に描かれたものです。誰が描いたのかは不詳ですが、室町時代に描かれたと推定されています。どうやら、この室町時代には盛んに『酒呑童子』の物語が描かれていたようです。

さて、今回の『酒呑童子図扇面』は「物語を36面に描いた作品」と解説パネルにはありますが、展示されていたのは半分の13面くらいでした。

物語は、京の若者や姫君が神隠しに遭っているという噂が広がっていることから始まります。それを陰陽師の安倍晴明に占わせると、どうやら大江山に住む鬼……酒呑童子の仕業だと分かります。そこで、源頼光が退治しに向かう……というお話です。

続きは、展示されていた扇面と解説パネルの文章を読んでいきましょう。

酒呑童子の館に向かう源頼光の一向は、倒木を渡る。
The samurai Minamoto no Raiko and his followers walk across a fallen tree on the way to the demon Shuten-Doji's lair.

険しい崖を登る頼光たち。
Raiko's band climbs a steep cliff.

洞面を抜ける頼光たち。
Raiko's band walks through a cave.

酒呑童子に捕らえられた女房が川で洗濯をしている。
A woman in Shuten-Doji's captivity is doing the laundry at the river.

酒呑童子の館の門で鬼と問答する頼光たち。
At the gate of Shuten-Doji's lair, Raiko and his followers exchange words with an ogres.

上の絵の左側

酒呑童子の館にある「四季の庭」の様子。
The "Garden of the Four Seasons" of Shuten-Doji's lair

館の主、酒呑童子が現れる。
Shuten Döji, the master of the lair, shows up.

上の絵の左側

酒呑童子、頼光たちを試すため人の肉を食べるよう命じる。
Shuten Doji orders Raiks and the others to eat human flesh to see how they react.


頼光たち、酒呑童子にもってきた酒を飲ませる。
Raiks and his followers have Shuten Doji drink poisoned alcohol they brought.

毒の酒で酔っぱらう酒呑童子。
Shuten Doji gets drunk with the poisoned alcohol.

坂田金時が舞を披露する。

鬼たちは酔いつぶれてしまう。

そして酒呑童子や配下の鬼たちが酔いつぶれているところを、藤原頼光や坂田金時などが切り伏せる……という、なんとも卑怯な退治法ですが……まぁ相手は鬼ですから、正攻法で闘っても勝てる相手ではありません。ここは、毒の酒を飲ませるという、作戦勝ちということで、その後の時代にも人気の武勇伝となったのでしょう。

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