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イスラム教の世界観

1.       はじめに
 本レポートの目的は、イスラームの基本的な教義と世界観・歴史観についてまとめることにある。第2章ではイスラームの世界観と歴史観についてまとめ、第3章ではイスラームの基本的な教義についてまとめる。

2.       イスラームの世界観と歴史観について
 まず、「イスラーム」の語義はアラビア語の動詞「アスラマ」の動名詞にある。「アスラマ」の意味は「(神に逆らわずに)降伏すること」「(神に)従うこと・帰依すること」である。        次に、イスラームの神は、創造主であり全知全能である永遠の唯一の神である。この神はユダヤ教のヤハウェ、キリスト教の主・神と同じ唯一神である。
次は、直線的歴史観についてである。直線的歴史観とは、神の天地創造から終末に向けて直線的に流れる時間に基づく歴史観である。具体的には、有限の現世、つまり一回きりの人生=神との契約を果たしたかによって終末の日に裁かれるという内容である。次に、宗教に基づいた世界分割についてである。イスラームには、様々な啓典と使徒に従う様々なウンマ(共同体)がある。中でも、「ムハンマドのウンマ」はムハンマドに下された啓典と、ムハンマドの残した、慣行(スンナ)に基づき、神の法(シャリーア)によって統治される秩序と平和が行き届いた空間である。これは、「戦争の家」つまり唯一神を知らず、あるいは、知っていても正しく信仰しないために、無秩序と暴力が支配する空間と対比の関係にある。

3.       イスラームの基本的な教義について
 イスラームの教えとは、「タウヒード」=唯一神信仰+預言者ムハンマドの指導である。具体的には、「六信五行」がある。六信五行とは根本的な六つの信仰箇条と五つの宗教的義務行為である。
根本的な六つの信仰箇条である六信とは、一つ目は唯一神(アッラー):万物の創造主、全知万能、超絶的唯一神である。二つ目は天使(マラーイカ):神に仕える霊的な被造物である。三つめは使徒(ルスル):神が人間を導くために召命し遣わした者たちである。四つ目は啓示(ワフイ):神が預言者を選んで、言葉を伝えることである。五つ目は来世(アーヒラ):「終末の日」に「最後の審判」があり、その後訪れる永遠の世界である。六つ目は定命(カダル):天地創造から終末までの間の一切は、神によって既に決定されているということである。
 ムスリムに義務として課された五つの信仰行為である五行とは、一つ目は信仰告白(シャハーダ):イスラームの根本教義を信じることを明言することである。二つ目は礼拝(サラート):神を称え服従を表現する行為である。三つめは喜捨(ザカート):神と困窮者のために財産の一部を差し出すことである。四つ目は断食(サウム):ラマダーン月(ヒジュラ暦第9月)に、日の出から日没まで飲食・性交を絶つことである。五つ目は巡礼(ハッジュ):ヒジュラ暦第12月にマッカ(メッカ)の カアバ(神の館)に詣で、規定の儀礼を行うことである。

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