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12年勤めたSIerを辞めた話

こんにちは。
サラリーマンSEの傍ら、個人開発アプリなんかも作っているHALと言います。2021年の4月末に、新卒から12年と1ヶ月勤めたSIerを辞めたので、自身の棚卸の意味を含めて、いわゆる「退職エントリ」を書こうと思います。

入社前:なぜSE・SIerを選んだのか

 自分は理系大学の情報系(?)学部の出身です。(?)とついているのは、一応プログラミングなども勉強するのですが、人によってはIT技術よりは人文科学系の研究にも進めるような学部だったためで、とはいえ自分はJavaをメインに使った研究をしていたので、プログラミングは多少できる状態でした。

 また、父親もエンジニアであったため、家には割と早いうちにパソコンがありましたし、いわゆる「パソコン通信」とかにハマった時期もあり、自然とシステムエンジニアと言う職業には興味を持っていました。就活の開始時点では、とりあえずSE、と言うところだけ決めていた感じでした。

 ではどんな会社に入ろうか、と会社を調べ始めるわけですが、自分が就活をしていた13年くらい前は、まだまだIT系の企業はブラックだと言う話がたくさん聞こえてくる時代でした。(実際、当時同じ大学だった友人たちで、ブラック企業に入ってしまったと言う愚痴を聞いた数は少なくありません。)そんなわけで、自分の中での条件はこんな感じになりました。

・ブラックではなさそう
・名前の知れたグループ会社
・そこそこの会社規模がある(数百〜数千人)

 最初は「やりたい仕事がある」とか「やりがいがありそう」とか「この業界のシステムがやりたい」とか、そういった思いはほとんど無く、「そこそこの給料をもらえるブラックすぎない」ところを重視して探して行きました。そして、この条件に当てはまる会社というと、大体がSIerになってくる、ということで、消去法的な感じで選んだのがSIerだった、ということでした。

 結果的には、この選択は間違っていなかったと思っていますが、今ならもうちょっと業界の全体像とか調べてるだろうな、と思います。また、同じ条件でも、今ならSIer以外の選択肢ももっとたくさんある(ということに気付ける)だろうなとも思います。

入社後:SEの仕事の想像と現実

 そんなわけでSIerをメインに就活をしていき、前職であるとあるグループの子会社に入社しました。あんまよく分かってなかったですが、グループ会社内ではまぁまぁ良い方の会社だったことを、入社してしばらくしてから知りました。(大手グループの子会社ってたくさんありすぎて、それぞれの優劣なんて学生にはわからないですよね。)

 入社してからしばらくは、金融系のプロジェクトに入りました。金融系はとにかく規模がでかいので、たくさんの会社の人が入り混じって仕事をしていたのが印象的でした。まだその時は、「多重下請け構造」とかもあまりピンときてなくて、「こんなにいろんな会社から寄せ集めて仕事してるのか!?」と驚きました。とはいえ、当時のプロジェクトは5次6次なんてとんでもない深さの人はいなかったと思いますが・・・知らないだけだったりして。

 そんな感じの大規模プロジェクトで、開発よりは環境周りの整備とかをするようなチームで仕事してました。仕事の内容はほとんどが打ち合わせと資料作成。たまにツール開発。あとは別チームからの作業依頼の対応。朝から夜までずっと打ち合わせで、自分の作業はそれからスタートで、毎日22時や23時まで仕事、なんて日々を過ごしてました。

 「SEってこんなに打ち合わせとかExcel作業ばっかりなの!?」というのがSEになって最大のギャップでした。いや、これはSIerとその関連企業のSEに限るかも知れないですが・・・。これ自体は、自分はそんなに嫌でもなく、勉強になることもたくさんあったので良い経験だったと思っています。

 特に、打ち合わせとかで偉い人は何を気にするか、というのは学びがたくさんありました。偉い人が気にすること(ここの試験はどんなことをやったんだ?とか)は、その人の過去の経験から出てきた質問だったりするので、経験の浅い自分のような若手には気付けない視点がたくさん含まれています。そういう知見に触れる機会がたくさんあったのはありがたかったです。

 とはいえ、モノづくりをあまりしないまま数年が経つと、流石にこのままじゃまずいなと思うようになりました。そこで、異動を願い出て、開発がやれる担当に異動をさせてもらいます。

異動:大規模から小規模へ

 そんなわけで、数年して異動をさせてもらい、次は小規模な開発をする担当になりました。チームの大きさでいうと、大体5~10人で開発するくらいの規模感です。とあるパッケージを担いで、それに顧客向けのカスタマイズをする、みたいなよくあるパターンの開発をやってました。

 技術的な面でいうと、クライアント側がC#、サーバー側がJavaという構成で、フレームワークとかもひと昔前のモノを使っているということで、正直イケてる開発ではなかった感じです。また、手作業が多くてビルドもいちいち人がGUIでポチポチやるような感じだったので、手間ばかりかかって効率が悪いなぁ、といった感じのところでした。とはいえ、そもそも開発をちゃんとやれていなかったので、「やりたかったことがやれている」というのはとても嬉しいことでした。

 技術以外の面でいくと、いわゆるエンドユーザーさんと直接話ができるチームだったため、セールスエンジニアの真似事や要件定義・基本設計の経験も積むことができました。特に、ユーザーさんが何に困っていて、だからシステムで解決する、というところをリアルに感じることができたので、そこがよかったなと思います。システムは現実の課題を解決して初めて価値が生まれる、と思ってはいても、想像するだけと生の声を聞くのでは全然違うなと思いました。

転機:転職を考え始めたきっかけ

 異動してしばらくすると、いくつかのプロジェクトを担当して、それなりにスムーズに開発を進められるようになりました。その間に、改善活動もいろいろやって、ライブラリ管理の変更や、チケット管理の導入、DB構成管理の導入といったことを進めて行きました。比較的、自分の提案を取り入れてくれたり、自由にやらせてもらえたので、その点はとても良かったなぁと思っています。

 ただ、そうは言っても管理も技術もいわゆる「モダンなスタイル」とは程遠く、調べながら改善すればするほど、理想と現実の乖離を目の当たりにする、という感じでした。それが悪いということではなく、前職の会社は金融系に強みを持っている関係もあり、「枯れた技術・やり方に重きを置く」傾向があったということです。それが評価されて、しっかり品質高くシステムを作ることができる会社だと思っているので、自分のやりたいこととずれてしまったのだ、という風に理解しています。

 自分はどちらかというと、無駄なことはやりたくないし、手間のかかることは省いていきたいと考えていますが、システムの品質を高めようとしたときに、一見無駄に思えることもやらないといけなかったり、「良さそうだから」という理由では採用できなかったりしてしまいます。QCDは常にバランスを取るしかないので、品質を高めたければ時間やお金をかけるしかないし、仮に品質を高めつつ効率化するのに良さそうなものが出てきても、「本当に導入して問題ないか」「導入による副作用はどんなものがあるか」をきちんと考えないといけません。それを組織として統制をとりつつやろうとすると、根回しとか、承認とか、そういったものが必要になります。これはもう避けようのないものでした。
 もちろん、小さい会社だからって好き勝手に新しいことがやれるわけではないです。けど、メンバーと相談すれば導入できるのと、他部署と調整してからでないと導入できないのでは、スピード感は全然違ってしまうのは仕方のないことです。

 また、SIerは多くのエンジニアを抱えてシステムを作ることを特徴としています。たくさんの人が集まれば、技術のレベル感はまちまちになり、それに個別に対応するのは難しいので、ある程度低いレベルの人に合わせ、そういう人でも開発できる体制・やり方を考え、進めていくということになります。もちろん、技術力のある人にはなるべく実力を発揮してもらえる仕事をしてもらうように考えますが、必ずしも仕事の状況によってうまく割り振れることばかりではありません。そんなときには、あまり実力を発揮してもらえなかったり、他の人のサポートに回ってもらうことになって苦労をかけたりしてしまいます。

 理想を言えば、全てのメンバーが高い技術力を持っていて、みんなが自走して開発をしてくれるのが一番です。けど、大規模なプロジェクトになればなるほど、そんなことは無理なので、「レベルが低い人がいてもシステムを作れる仕組みを作る」ことが必要になります。SIerはそれを特徴として構成された組織なので、場合によっては非効率なやり方を強いる必要がある、というのは仕方のないところになります。

 この辺りの、「SIerの特徴」とでも言うべきことが、自分の今後の目指したい方向性とズレていると気づいたことが、転職を考え始めたきっかけになります。学生時代には、そんな特徴があると言うことはよく分かっていなかったが、仕事をしていくうちに理解してきた、と言うところですね。

転職:今後の方向性

 じゃあ、自分がやりたいことってなんだろうと考えたときに、10年20年先のことはわかりませんが、とりあえず今は、もっとユーザーさんに近いところで、ビジネスレイヤーを意識した仕事を、いろんな業種のお客さんと一緒にやりたい、と言うところでした。これは、前職のエンドユーザーさんと要件定義などをして、それをシステムにしていくのが面白かったのと、ぼんやりとした課題や希望を言語化してシステム化するところに、適性があるんじゃないかと思ったのが大きいです。

 と同時に、技術力もまだまだ磨きたい、新しいことを勉強し続けるのは楽しい、と言うところがあり、自分で手を動かせる「エンジニア」であり続けたい、と言うのも一つありました。ただこれについては、個人開発アプリなどで自分で学び続けることもできるので、可能であれば、と言うレベルの希望でした。

 そんなわけで、転職活動時にはコンサル系、自社サービス系、Web系など、幅広く探して、マッチしそうな会社さんを探して行きました。その結果、5月から入社する会社とご縁があり、入社、と言う運びとなりました。

 なお、入社エントリはまた後日、気が向いたら書きます。

感謝:あの会社で良かったと思うこと

 色々とアンマッチなところを書いたりしましたが、そうは言っても12年も続けられたのは、SIer(というか前職の会社)が良い会社だったからです。そこについては自信を持って言えますし、将来また何かの形で恩返しをしたいなと言う思いもあります。(多分、会社の人とは今後も繋がりも残るし、飲み会とかも顔を出したりすると思います)

 あの会社で良かったなと思うことは、システム開発のフルセット(という言い方をよくしていました)を学ぶことができたと言うことです。

 いわゆるウォーターフォールで開発をしていたわけですが、何を管理し、何を作り、何を試験していくかといったことが、全て含まれた開発というのは、意外と経験できていない人が多いのではないか、と思っています。必要だと分かっていても、予算が足りないので一部省略したり、簡素化してバランスを取って進めると言うことが多く、教科書通りの進め方で開発するなんて現実的ではないと言うことが多いです。でもそういったときに、「教科書を知った上でリスクを承知で省略する」のと、「昔からそのやり方だからそれでいく」のでは意味が違ってきます。そう言う意味で、「教科書を教えてくれた」前職での経験はとても貴重なものだったと思います。

 これは先の「レベルの低い人がいても開発できるように」と言うところとも関連しますが、教育する姿勢がきちんとあった、と言うことでもあると思います。出来ないのが当たり前、出来るように育てていく文化、と言うのがあるからこそ、学べたことでもあったと思います。この点については、本当にとても感謝しています。

 SIerは何かと叩かれたりすることも多いですが、結局主語がデカすぎるだけで、良い会社はいくらでもあるし、クソみたいな会社もある、と言うことだと思っています。そして自分は、SIer出身であることに誇りを持ち、また、「SIer出身はやっぱりダメだな」とか思われないように、今後も研鑽して、新しい職場でも頑張っていこうと思います。

 長文を読んでいただき、ありがとうございました。

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