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デジタル行財政改革 課題発掘対話(第6回)に参加してきました

さて、ご縁を頂きまして、デジタル行財政改革会議の、課題発掘対話(第6回)で、自治体の人材育成やシステム共同化の課題について発表させていただきました。
当日の模様はYoutubeでライブ配信されており、アーカイブ動画でも見れるようになっています。また、各出席者の資料もダウンロードできます。

当日は時間も限られていたため、駆け足で発表させていただきました。言葉足らずな部分もあったかと思うので、こちらの note で振り返りや補足をさせていただこうと思います。

補足は、全部で4本の記事になっています。下記が、それぞれの回へのリンクです。
第1回:デジタル行財政改革 課題発掘対話(第6回)に参加してきました(本記事)
第2回:自治体の人材育成とシビックテックの関係
第3回:自治体毎にシステムを作るのは限界
第4回:自治体のインセンティブ設計を見直そう


自治体の人材育成について

自治体の人材育成は大きな課題。提出資料よりキャプチャ

自治体の人材育成の課題

まず、これは以前月刊J-LISのインタビューでもメインの主張にあたる部分ですが、自治体のデジタル職は主体的にキャリアを描きにくい状況にあります。そもそもデジタル職(もしくは情報職など)という職種を定義して雇用している自治体はそれほど多くはなく、明確な育成モデルを持つところとなると更に少なくなります。同じく対話に参加していた自治体職員の八鍬氏も言っていましたが、本来デジタル人材が育つには5〜6年くらいの期間と適切な経験やフィードバックが必要です。
しかし、実際には、ようやく技術のことが分かってきたというタイミングで、他の部署に異動になるケースも多いです。異動先でもデジタル関係のことがやれるならばまだ良いのですが、全く関係のない仕事を担当することも珍しくありません。
デジタル人材が育たない結果、適切な仕様書を書くことができず、実際のシステム要件定義はベンダーだよりになりがちです。そうなると、デジタル担当課に入っても良い経験が積めず、更にデジタルのことがわからなくなるという悪循環になってしまいます。
プロジェクトマネジメントや要求定義など、上流行程ができる人材をどう育てるのか、という方針を作る必要があります。

自分のキャリアを主体的に考えられない

どうも、自治体の管理職や人事課と話をしていると、「言われたことをしっかりとこなす」「決まっている手順を間違いなく実施する」といった部分を重要視していると感じます。事務要項がしっかりと決まっており、それを間違いなく遂行するということが重要だった時代であればそれでも良いのですが、今の時代で求められているのはBPRや全体最適化であり、いままでやっていたことをやめたり、別のやり方で行うことを思考/実行したり、新しい企画を立案できる能力です。
そのような能力を発揮するには想像力が必要で、主体的な思考や行動力がその源となります。自らの能力をどのように伸ばすのか、将来どのような仕事をしていくのか、組織、市民、社会にどのように貢献するのか、そういったイメージが沸かなければ主体的な行動はできません。ましてや、DXに求められる「トランスフォーメーション(変革)」のような大変なことには取り組めるはずもありません。

昨年、総務省が、自治体の人材育成・確保基本方針策定指針を26年ぶりに大幅に改定しました。そこには、キャリアモデルの明確化や職員エンゲージメント評価など、なかなか良いことが書かれています。

しかし、残念ながら、自治体の首長や人事課に聞いてみても、この改訂について知らないところが多い状況です。せっかく良いことが書いてあるので、これらの考えが自治体の人事課に浸透していくことを望みます。

以前、自治体の人事課とこの話をしているときに、「理屈はわかるが、自治体の現場には、とても大変で主体性を発揮しにくい部署もある。キャリアの主体性を重視し始めたら、そういった部署に異動できる人がいなくなる」といった事情を聞いたことがあります。各部署の定数を考えながら、一斉に人を動かす人事異動計画を立てるのも大変だという声もあるでしょう。
人事というのは組織の文化でもあり、全体をいきなり変えるには時間がかかるのはわかります。まずは、デジタル人材のキャリアプランづくりと、職員エンゲージメント調査から始めてみてはいかがでしょうか。
例えば、東京都はデジタル人材確保・育成基本方針を取りまとめています。私もフェローとして少しレビューさせていただきましたが、IQ/EQ/GQ/DQ という形で能力ポートフォリオを明示したり、1on1 ミーティングを実施するなどなかなか良くできていると思います。

また、兵庫県は令和5年に人材マネジメント方針を改訂し、タレントマネジメントや、職種別のキャリアガイドの作成などに踏み込んでいます。方針策定時には私も議論に参加させていただきましたが、県の本気度を感じました。

広域自治体のデジタル人材サポート

対話では、広島県から、デジタル人材を一括雇用して派遣する制度について説明がありました。このような広域サポートを行っている自治体は他にもあり、とても有益だと思います。特に小規模自治体でデジタル人材を採用するのは非常に難しい状況ですので、このような県の動きは大歓迎です。
東京都デジタルサービス局や GovTech東京も、区市町村支援の部隊がいますし、他の広域自治体でもこのような動きは増えてきています。

広域支援だけでは足りない

広域での人材シェアリングは確かに有益ですが、外部からサポートできることと、できないことがあるのは意識しておく必要があります。
多くの自治体で起きているのは、デジタル推進課が現場の説得をできず今までのやり方を変えられない、BPRが進まない、ということだからです。
内部からの巻き込みができていないのに、外のデジタル人材の言うことを信じてもらう状況はあまり生まれません。
外部の知恵を借りるだけではなく、内部のBPRやリスキリングは必ず必要になります。
私自身、10を超える自治体でアドバイザーをしていますが、結局は現場がやる気になってくれないと、いくらアドバイスをしても響かず、砂漠に水を撒くような感覚になってしまいます。もちろん、私自身が現場に積極的に入っていき信頼を得る努力も必要ですが、時間はかかります。
今日本全国で広がっている窓口DXの動きは、現場がやる気になる仕組みを作った点が重要だと思っています。窓口課の職員が先行自治体に視察に行って、現場を見て話を聞いたことでやる気になったという話はよく聞きます。
座学で小難しいことを学ぶだけでは、リスキリングにはなりません。現場にそのような体験をしてもらい、実際に少しづつでも改善の動きを始めることで、結果的にリスキリングが進んでいきます。そのような予算や機会をぜひ作っていただきたいと思います。

1記事でサクッと補足するつもりが、スライドの1ページ目でこんなに長くなってしまいました。続きは別のエントリにしたいと思います。

もちろん、違う見方や論点もあると思いますので、ぜひXなどでフィードバックいただけると嬉しいです。

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