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Y染色体ハプログループ・語族・人種第1章『人類最古のA系統・B系統』

 めちゃくちゃわかりすく纏めるとY染色体ハプログループは男系遺伝子でY染色体にあるので男性にしかなく、場合にもよりけりですが言語系統、つまり語族の分布とある程度の一致が見られるため同時に語りましょう。

 ちなみに言語系統学とハプログループ、人間や犬、金魚の形質学、ヒト属の進化学が私の青春を奪い去り、私は何度も同じように日々の暮らしに何の代わり映えもなく夏の終わりを自覚する頃に、誕生日を迎えていっていました。後悔しています。

それでは早速、Y染色体ハプログループ・語族・人種第1章、行きましょう!!


「ハプログループA」

 Aグループは一つの系統ではなく最初の方に別れた何個かの系統を合わせて呼んでいるだけ、つまり生物学的に言うと一部の蝶を除く蝶類を蛾、人間を除く霊長類を猿と呼ぶような側系統であるため、それぞれの系統の分布地が異なる。

ジェベル・イルードの人骨

 最も初期の27.5万年前に他から分岐したA00系統はカメルーンの人々に低い程度見られる場合があり、30万年近く前のジェベル・イルードの人骨からも発見されていて、次に分岐したA0系統もカメルーンやアルジェリアのベルベル人などに低い頻度で見られ、さらに次に分岐したA1a系統はギニアビサウやマリ、カーボベルデ、モロッコなどで見られる。

コイサン言語連合の系統

 そしてA系統のメインを占めるA1bに属す系統ではA1b1a1aとA1b1b2aの二つはコイサン諸語と総称される幾つかの語族や孤立した言語を含む吸着音という独特な音を持つ言語連合(前にか書いた言語分類の基礎 https://note.com/halgie_lenonx/n/n544fedd0766d を参照)に属す言葉を話す部アフリカの先住民である狩猟民コイサン諸民族に多い。

黄色がコイサン諸語

 コイサン諸民族は言語以外に形質的に見ても異質で、他のネグロイドと区別されてカポイドという別の人種であると判断される場合も多く、母型遺伝子(ミトコンドリア)を見ると9万年前に他の人類から分岐したことが判明している。

 見た目上の特徴としては胡椒のようにグルグルの髪、無い鼻筋、黄褐色の肌、やや低い身長、黄色人にも似ているような違うような瞼などがある。

コイサン出身の名俳優ニカウ

東アフリカの系統

 A1bの中でもA1b1bはアフリカの角地域、特にアフロアジア語族のセム語派がエチオピアに亘ってきたアムハラ人などの南セム諸民族に低頻度で見られる。
 A1b1b2bという系統はマサイなどのナイル・サハラ語族東スーダン語派ナイル諸語に属す言語を話すナイロート諸民族で半数を占めるほど多く、他にもナイル・サハラ語族が分布するスーダン地域や東アフリカの周辺民族達、そして西アジアやトルコなどにも低頻度で確認されている。

ナイル諸語の分布

 ナイロートの人々は形質的に見てもやや独特でネグロイドの中でもナイル人種という独自の形質グループと見做すことも可能で、その最大の特徴は180cmや190cmを超える高身長と日本人から見ると異様な細身体型、そして黒人と総称される人々の中でも最も黒に近い肌色などがあり、実際、ナイロートと白人の混血であるバラク・オバマ元大統領の身長は190cm近い。

ナイロート系ルオ出身のオバマの父親

「ハプログループB」

 BグループはA1b系統から分岐したBT系統というA以外の全ての系統の祖先になっている系統から最も最初に分岐したグループであり、10万年もまえに分岐したため分布域はサブサハラに広がっており、B-M236もといB1系統はブルキナファソやマリ、カーボベルデなどの西アフリカに少数見られ、B2もといB-M182が各地に広がっている。

ネグリロの成人男女と白人の
一般成人男性

 B2の中でもB-M150系統とB-M109系統、その他B-P7系統などはムブティやバコラなど中部アフリカの熱帯雨林一帯に住むピグミーあるいは、東南アジアのネグリトも同じくピグミーと呼ばれるために区別してネグリロとも呼ばれる先住民の子孫にあたる集団に高い頻度で見られる。

ハヅァ族の子供達

 ネグリロは身長が男性で150cm以下で手足が短く頭が大きく、さらに鼻が広いなどという特徴を持ち、独自の言語は現在、バントゥー民族大移動やナイル民族大移動によって失われているためほぼ残っていないが、コイサンとネグリロの間の特徴を持つタンザニアのハヅァ族は独自の言語を保持している。

ネグリロ系民族の分布図

 またB-M150やB-M109なども他の東部アフリカや南部アフリカのバントゥー系諸民族やナイロート、サハラ、北アフリカ、エジプト、イラン、マダガスカルなど広く低い頻度で見られ、これらと同じB2の中でもB-G1はナイロート、B-M108.1はエチオピア、B-M43はマリにそれぞれ低頻度で確認され、B-P6はナミビアのコイサン人に2割以上、B-M30はナイル・サハラ語族の中央スーダン語派とサハラ語派で2割以上確認されている。


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