昨日はたくさんの情報を感受した一日だった。昼間は原発の再稼働を止めた裁判官の映画上映会に参加し、アフタートークとしてソーラーシェアリングで農業を営む方の話を拝聴した。夜にはパレスチナとその場に住まう人々の歴史的経緯と現状についてのウェビナーを聴いた。思い考えた事は数多あるが、原発の話を聞いて思ったこととパレスチナについて思ったことに共通点が多くあったので、その連接点を言葉にしていきたいと思う。

　一つ目の連接点は「帝国的支配」だ。原発はどれほどの大地震であろうと十分に耐えうる安全基準を満たしていると原子力発電規制委員会は豪語するが、実のところ殆どの原発が600ガルから1200ガル（ガルは1秒につき毎秒1cmの速さの変化を生ずる加速度で、振動の激しさを表す数値）であり、それらを上回る激しさの地震は過去20年でさえも頻繁に発生している。しかも最大値である柏崎刈羽原発の1209ガルは、2007年の新潟県中越沖地震を経て、耐震補強の上、かつコンピュータの試算上での数値であり、老朽化した原発は軒並みその許容値が小さくなっている。

　この単純明快な資料を持ち出してまで、原発差し止め訴訟で敗訴が続くのはなぜか。それは、複雑な理論が法廷の場での焦点となれば、裁判官は「原子力規制委員会の意向に一任する」と匙を投げる他ないからだ（裁判官を非難しているわけではない。ぼくだって複雑な理論を持ち出されたら嫌になる）。その結果として、原発再稼働を推進する国によって、実質強行的に原発の延命措置が下される。

　パレスチナの経緯もこれに類するところがある。東欧、ロシアから迫害されたユダヤ人はユダヤ人を含む西欧の人々からも忌避され、シオニズム（祖国であるパレスチナに国を建てる運動）の高まりに乗じて多くの東欧系ユダヤ人がパレスチナを目指した（というより追い出された）。そこでイギリスの「ユダヤ人にも、アラブ人にもそれぞれの国家をパレスチナに建てることを認める」という二枚舌外交を行い、ヨーロッパ列強が植民地帝国主義的に介入したことで、紛争の火種を蒔き散らした。このように、権力を持つものが外堀を埋め、事態を恣に動かす構図は、原発もパレスチナ紛争にも共通すると言える。

　次に「先入観」だ。福島原発事故のように甚大な事故があれば、改善案は、この訓戒をしっかりと胸に刻んだ、完全無欠なものだろうと多くの人は考える。あるいは、時間が経ち、報道の減少とともに記憶が風化し、原発云々に無関心な人も多くなっていくだろう。また報道の仕方次第で、「やっぱり原発に対する新たな規制は完璧なんだ」と思う人もいるだろう。

　パレスチナに関しても、この先入観は大きく影響し、特に報道に密接に繋がりあっている。海外の多くの情報が欧米経由で流れてくる日本では、欧米にお誂え向きな情報が多く、錯誤した情報や、曲解した情報が報道されることも少なくない。その結果、ぼくにはどうも「ハマスは過激で非人道的なテロ組織で、イスラエル国民にとっての脅威だ。日本はイスラエル国民を守るため、ハマスを強く非難する」という報道が多いように見える。しかし実際は、この紛争は「天井のない監獄」と呼ばれるガザ地区やヨルダン川西岸地区に隔離された人々の、自由な生活を送りたいという、至極当然の悲願（というより保障されるべき基本的人権）の表れであり、ハマスは彼らの福祉サービスを一手に担う組織として機能してきた。彼らが犯した殺戮的侵攻は許されるべきではないが、「ハマスは100％悪者」という先入観は非常に危険な考え方だし、「原発は100％安全」と似たような論理が内在している。やっぱり報道の力は大きいなと感じた。

　まだまだ書き切れてないことや言語化できていないことは山積しているが、とりあえず次を最後に記そうと思う。最後は「罪の意識」だ。特に直接的な罪ではなく、間接的な罪の意識の如何が、二つの問題に通底していると思う。まず原発だが、確かに一度造れば安い稼働コストで莫大な電気を安定的に作れ、発電時にCO2を出さない（実は原料であるウランを掘鑿したり、輸送の際に大量のCO2が発生するのだが）などのメリットは挙げられる。しかしそれは短期的な視点であって、巨視的に見れば災害リスクや従業員の放射線被曝、使用済み核燃料の処理方法など、課題は枚挙に暇がない。そして、その多くは次世代に禍根を残すもので、次世代に対する間接的な罪に当たる。

　パレスチナ問題においても、日本の影が潜んでいる。イギリスがパレスチナを委任統治するとき、日本はこれを承認し、見返りに南洋群島を委任統治領とした。昨今のパレスチナ紛争も、日本は国連総会においてガザの人道停戦決議採決を棄権し、ハマスを非人道的なテロ組織と唱え、イスラエル側に与している。これは、日本が当紛争に直接的に関与している証左ではないにせよ、間接的に紛争に油を注ぐ行為で、いわば間接的な罪である。

　原発においてもパレスチナ紛争においても、日本政府はもう一度、そしてぼくたち市民ひとりひとりも、”幸せ”とは何かを問い質し、自らを見つめなおす必要があると思う。