家を出た時点で100点満点

3月3日
若干の寝坊をしてしまい、30分で朝食・身支度・バイトの準備を済ませルことに成功。無事目的の電車に乗れた時点で謎の達成感に襲われ、通勤で車の中でもうすでに帰りたかった。

帰りたい理由はそれだけ。『今日までにやらなきゃいけないことが……』とか、『母の体調が良くなくて……』とか、そんな効力のある理由など何一つない。
ただ、猛烈にやる気がなくて帰りたい。
朝っぱらから6時間以上働ける自信がない。
シンプルに眠い。
人間様だって万能じゃない。毎日フルパワーで働けるほどタフにはつくられちゃあいないわけで、現にこういう奴だっている。いや、私は『怠惰すぎる』ってジャンルわけされるかもな……。他の人は文句ひとつ言わずに働けているんだもんなぁ……。

それにしたって、みんな頑張りすぎじゃないか?
担当する宴席が始まるまで、ぼけらんとしながら辺りを見渡す。
別に1秒たりとも押していないのにバタバタと走り回る社員。
新人バイトのサービスレベルを上げるために一度にたくさん教えちゃう先輩バイト。
それを汗をかきながらメモを取る新人バイト。
必死で勤勉な人たちばかりで、肩身の狭いこと狭いこと。

頑張ることは素晴らしいことだけど、頑張りすぎることはいつか自分を滅ぼす、と元うつ病疾患者としては思う。焦ってもいいことはないし、一度に欲張って覚えたことはその場しのぎの記憶でしかないので定着しないし。
何より、私みたいな奴はもれなく煙たがられるし。もちろん、腑抜けきった態度の私が100%悪いが、そういう日があったっていいじゃないか。毎日元気な奴なんていないんだ、客前だけはちゃんとするから、いつものように無理してバックヤードまでホテルマンを演じれなくても許してほしい。

「もちづきさん、表情暗いよ?笑」
そうマネージャー社員が苦笑していた。
「さーせん、表情筋殺してました。大丈夫です、会場入る瞬間にスイッチ入れるんで。今日は勘弁してください」
口元だけそう動かして答えると、『今日のこいつには何言ってもダメだ』みたいな顔をしてどこかへ行ってしまった。

今日は生きてるだけで褒めてくれ。
息をするだけで拍手喝采を贈ってくれ。
二本足で立つだけでノーベル賞をくれ。
無茶苦茶なわがままを心のうちで叫びながら、会場へと続く扉をくぐった私は持ち前のヘラヘラ笑顔を、死んだ魚の眼をした顔面に貼り付けた。

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