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「私も寝不足です」と書き込むノリ

先月発生したトンガ沖の海底噴火は地球規模の災害の恐ろしさを改めて認識させた。火山灰やガスによる気候変動も心配だったが「放出されたSO2(二酸化硫黄)は少なく影響は軽微だとみられる」という報道を見て、少し安心した。

噴火だけではない。当日夕刻には「若干の海面変動のおそれ」と発表されていたにもかかわらず翌日未明になって「津波警報/注意報」が発令されて、とても驚いた。地震によって発生する“津波”のメカニズムだけでは説明できないらしく、原因は「気圧の変化」「空気振動」などとされている。


マズかったのが神奈川県。設定ミスによって津波注意報のエリアメールが未明に何度も鳴動した。横浜市在住の同僚も「あり得ない状況だった」と憤慨していた。

火に油を注いだのが黒岩祐治知事のツイートだった。


どう考えても「寝不足です」は余計なひとことだし、その前の「ですから、私が謝罪しています」もいわずもがなの文言。


多くの人が2000年の雪印集団食中毒事件の記者会見で当時の社長が逆ギレして叫んだ「私は寝ていないんだ!」を思い出したに違いない。あ、記者会見ではなく、会見終了後のやりとりだったのか。


黒岩氏はテレビ局のキャスター経験者だ。

もちろんこうした発言は個人の資質によるところが大きい。しかし、こうした「余計なひとこと」を咄嗟に織り交ぜたくなってしまうのはその業界ならではの「ちょっと気が利いたことを言って〆るのがキレイ」という感覚だろう。ホントは「寝不足です」のうしろに「(笑)」を付け加えたかったのではないかと疑いたくなる。

逆に言えば、常に“安全運転”で当たり障りのないことしか喋らないキャスターは「あいつはつまらない」ということになる。私はキャスターなどはやったことがないが、メディアに在籍する者としてその感覚は理解できる。

キャスターではないが、政治家には政治家なりの“ノリ”があって、こちらも炎上しがちだ。近年では「復興以上に大切なのが○○議員だ」で更迭された大臣もいたし、古くは森首相(当時)がのたまった「日本は天皇を中心とする神の国」発言があった。

こうした“炎上発言”の多くはパーティーでのあいさつが多い。政治家ともなればあいさつを求められる機会が多いだろうし、その際には「何か面白いことをブチかまして会場を沸かせてやろう」という気になるのだと思う。

サービス精神、おおいに結構。しかしこうしたノリにホンネがのぞくのだ。公人としての発言は常に鵜の目鷹の目でチェックされていることにどうして留意できないのか。これこそが“資質の問題”だ。
(22/2/7)

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