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イタリアンの枠を超えたシェフの世界観を味わう〜「ひまわり食堂」

「ひまわり食堂」の存在を知ったのは2014年のGWのこと。

秋に富山に移ることが確定し、その前に住む街を見てみようと来たときのことだ。

もともと食に興味があった私だけれど、地方の特に洋食のレストラン事情には疎く、いったいどの程度のクオリティのものが食べられるのかわからないまま、ネットなどの書き込みの内容と自らの嗅覚で探し、予約したイタリアンが当時の「ひまわり食堂」だった。

予約は確か前日に取れたと思う。

ある程度美味しくて、たまに行けるような店なら良し、とそれほど期待せずに行ったのだけど、逆の意味で見事に裏切られた。

そう、素晴らしすぎたのである。

以来たまに伺っていたのだけれど、あれよあれよという間に人気店になり、某フランスのガイドなどにも載るようになると県内外からの食通が集まり気軽にふらりと行けるお店ではなくなってしまった。

けれど、遠方から友人が来たときなど、リクエストがあれば予約させて頂いている。

ちなみに一応ひまわり食堂はカテゴリー的にはイタリアンだけれど、出てくる料理は多彩だ。

東京やイタリアで料理を勉強したシェフであるが、バックパッカーとして世界を旅した経験も持つ。

その時に出会った料理にインスピレーションを受け自らのお皿の上に表現する、というのを難なくこなすのである。

例えばひよこ豆のコロッケ。
中東の豆のコロッケファラフェルをオマージュ。とはいえ周りに黒部名水ポークを巻きつけるなど、富山感を出しつつ、揚げ物でもさっぱりといただけるような工夫もされた見事にまとめ上げられた一皿だった。

もちろんそれだけではない。

出汁の使い方も秀逸なのだ。

例えばタチウオのリゾーニ。
米粒状のパスタリゾーニとタチウオそして和出汁の競演。タイムを散らすことによって全てがひとつに。

トビウオのパスタ。
トビウオは姿かたちもなく、ただまるごとトビウオから取った出汁をふんだんに使い、ドライトマトなどを合わせたパン粉でアクセントをつけたというシンプルなもの。魚ならではのさっぱりとした旨味がパスタに絡み絶妙なバランス具合。

そしてシェフのお得意はなんといっても炭火焼。
どんな素材も、それにあったやり方でじっくりと丁寧に火入れされているのはさすがだ。

もちろんイタリアンの要素もふんだんに取り入れられて入るのだが、私的に言えば、イタリアンというよりはシェフの世界観を味わう店である、というのが正しいのではと思う。

気楽に行けたかつてのひまわり食堂も今の姿もシェフの味に会いに行く、という意味では同じこと。そしてシェフの見る世界は日々刻々変化する。

また違った世界を見たくなったら、再び扉を叩こうと思う。


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