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こみやさおりさんに描いてもらった『モモ』の絵(と、そこに至るまでエピソード)

この度、ゲストハウス「どこにもない家」に新たな絵を飾らせていただくことになりました。こみやさおりさんの作品です。

こみやさんとは新しい働き方LABを通じて出会ったのですが、初めて彼女の描く絵を見たときに思ったのは「なんて素敵な絵を描く方なんだろう」ということでした。
そして僕にとってこみやさんは、単に「素敵な絵を描く人」というだけでなく、「悩み苦しみながら、それでも好きな絵と向き合い続ける、まっすぐな人」です。

今回描いてもらった絵がとてもとても素敵で、その紹介をしようと思ってnoteを書き始めたものの「いやいやそれだけではこの絵の魅力は伝え切れんぞ…」となったため、こみやさんとの思い出を振り返りながら書き進めたいと思います。

2021年9月 こみやさんの作品がCreativeLABコンペで最優秀賞を受賞

僕がこみやさんの作品を初めて目にしたのは、2021年9月にCreativeLABで開いたコンペでした。

新しい働き方LAB研究員の1期生として、このコンペに参加してくれたこみやさん。
僕は運営側として審査にも関わっており、作品をひと目見た瞬間に「わぁ……」と心が躍ったのを覚えています。

▲こみやさんの応募作品「わたしを変えてくれた あなた」

絵のタッチの柔らかさやパステル調の色使いなど、素敵ポイントはたくさんあるのですが、とくに気に入ったのはこの絵の中で紡がれているストーリーです。
たくさんの人(や動物)がそれぞれに好きなことをしながら、みんな楽しそうに道を進んでいる。そして道の先には、誰かが手をあげて待っている。

この絵は、新しい働き方LABの在り方や、LABのこれからの可能性を見事に表現していると思いました。
審査では満場一致でこみやさんの作品が選ばれました。

とはいえ、絵が素晴らしかっただけでは、こみやさん個人に対してそれほど強い関心を抱かなかったかもしれません。

こみやさんのコンペ提案文には絵のコンセプトだけでなく、

  • ずっと昔から絵に苦手意識を持っていること

  • 自分の子供には絵に苦手意識を持たせまいと、応援の気持ちから子供の造形に関わってきたこと

  • でも一番応援してあげたかったのは自分なのかもしれないと気づき始めたこと

など、こみやさん自身の心情についても率直に書かれていました。

そんな経緯もあり、僕の中で「こみやさん」という存在が引っかかるようになりました。

2022年1月 こみやさんが新しい働き方アワードでコンセプトアートを担当

新しい働き方LABやCreativeLABでの活動を経て、徐々に「こみやワールド」の魅力が周りに伝わっていったのでしょう。
こみやさんは、新しい働き方アワード2022でコンセプトアートを担当します。

僕はそのことを知らず、アワード直前にこの絵を見て「これはこみやさんの絵だ!」と確信するとともに、またまた深く魅了されました。

▲ちなみに左下の紳士のモデルは僕らしいです…!(自慢)

クラシックで格調高く、でもあたたかく、そして人と人とのストーリーが伝わってくる、こみやさんにしか描けないイラストだと思いました。
床や柱、天井にそっと描かれた植物や動物のモチーフからは、こみやさんの豊かな精神性を感じます。

ちなみにこの作品はオンラインショップ「LABStore」で購入できるので、気になる方はぜひご覧ください。(僕も買いました!)

2022年7月 こみやさんと直接会う

すっかりこみやファンになった僕ですが、ついに直接こみやさんと会う機会を得ます。

こみやさんは新しい働き方LAB第2期の研究員として、CreativeLABの指定企画に参加を決めました。

この指定企画では約1週間の合宿参加が条件になっていましたが、こみやさんが住んでいるのはドイツ。
こみやさんはこの合宿に参加するため、ドイツから日本への一時帰国を決めたのです。

約1,200ユーロの航空券を即ポチした経緯については、こちらのnoteに書かれているのでぜひご一読ください。

この決断を見て、さらにこみやさんを応援したくなったのは言うまでもありません。
合宿明け、まだ日本にいたこみやさんに会うため、一路平塚へ。

カフェで2時間ほどお話をしたのですが、こみやさんからは「絵を描くことを仕事にしていきたい」という強い思いが伝わってきました。
その一方で「まだ自信が持てない」と葛藤もかなり残っている様子。

話を聞く限り、こみやさんは絵を描くことが好きで、でも好きすぎるあまり、拒絶されたり失望したりすることを恐れて、これまで絵と正面から向き合ってこられなかったようでした。

でも合宿を通じてそれにあらためて気づき、絵と向き合うことを決めた。
とても勇気ある決断です。

その決断をしたこみやさんを、僕も応援したいなと思いました。

そして2022年10月、僕はこみやさんにゲストハウスに飾る絵を描いてもらえないかを打診。こみやさんから「ぜひ!」と快諾をいただきます。

2023年1月 こみやさんの絵がどこにもない家に届く

絵を描いてもらうにあたり、こみやさんにオファーした内容は「『モモ』を読んでこみやさんが描きたいと思ったシーンを描いてください」ということ。
僕としてはできるだけ自由に描いてもらいたかったのと、こみやさんがどのシーンを切り取るのかも含めて楽しみでした。

10日ほど経った頃、こみやさんからメッセージが届きます。

時間の花のシーンとは、主人公のモモが「どこにもない家」を訪れ、そこでマイスター・ホラから”時間の花”を見せてもらう、物語の中でもっとも核となる場面です。

丸天井の下で光に照らされながら、ゆっくりと動く時計の振り子。
その振り子に合わせて浮かび上がり、そして消えていく、未だかつて見たことのないほどの美しい花。
枯れゆく花への悲しみと、生まれくる花への喜び。同じ花は1つとしてありません。
ホラはモモに「(この場所は)おまえじしんの心のなかだ」と告げます。

こみやさんがこのシーンを選んだことを「やはり!」とうれしく思いました。

そこから約3ヶ月の制作期間を経て、ついに絵が届きます。

『Zeit nur für mich』(わたしだけの時)

こみやさんに描いていただいた作品『Zeit nur für mich』(わたしだけの時)がこちらです。

『Zeit nur für mich』(わたしだけの時)
天井から中央の池に向かって差し込む光
ゆっくりと左右に振れる大きな振り子
月や星、魚や鳥や木々などあらゆる生命があふれている
花を見つめるモモ。カシオペイアの甲羅に刻まれた文字は…?

絵の雰囲気など、詳細はどこにもない家を訪れたときに直接感じてもらえたらと思います。

今回はこみやさんに描いてもらった絵を紹介するにあたり、こみやさんとの思い出を振り返る形でお伝えさせていただきました。

1つひとつの点がつながり、線になり、こうやって素敵な絵につながったのだと思うととても感慨深いです。
何気ない日常の中に、このような出会いや奇跡はきっといっぱい転がっているんだろうなと思います。

重ねてこみやさんに”ありがとう”とお伝えしたいです。

そんなこみやさん、今年は「絵を仕事にすること」に本気で向き合うとのこと。

「こみやさんに絵を描いてもらいたい」
「こみやさんに興味がある」

そんな方は、ぜひ一度相談してみてください。
きっとそこから素敵な点が紡がれていくと思います。


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