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祖父母等の親以外の面会交流に関する準拠法について

昨今、親子ではなく親以外の親族と未成年者(子)との面会交流権について以下のような記事がありました。

現在、日本法では、最高裁令和3年3月29日決定(判時 2535号29頁)もあり、基本的には祖父母の未成年者(孫)への面会交流は権利としては認められていないと考えられています。とはいえ、祖父母と未成年者(孫)双方(もしくは孫の監護権者と祖父母)が合意すれば面会交流することは妨げられないことは言うまでもありません。

日本とは異なり、諸外国の法制では親以外、祖父母等につき、面会交流権を認めるところもあります。例としてはフランスの訪問権に関する民法の規定(祖父母や兄弟姉妹等につき民法371-4条以下)や、イタリアの尊属の権利義務に関する民法の規定(317-1条bis規定1項)などがあげられます。

ところで、日本において外国の方が関係する面会交流に関する家事事件において、どの国や地域の法を適用するか、という問題があります。例えば、一般的に家事事件として多く扱われる、親子間の面会交流であれば、法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます。)32条に従い、どの国又は地域の法(準拠法)を適用するか、決定するものと解されています。

それでは、親子以外の親族である祖父母の未成年者「孫」に対する面会交流については、どのように考えるべきでしょうか。

①通則法33条により準拠法を決定する説
上記でのべた通則法32条は
「(親子間の法律関係)第三十二条 親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。」
と規定しています。
祖父母(や親族)と未成年者との面会交流の問題は「親子間」ではないとし、「その他の親族関係」について準拠法を決定するルールである通則法33条による。というものです。
その通則法33条は
「(その他の親族関係等)第三十三条 第二十四条から前条までに規定するもののほか、親族関係及びこれによって生ずる権利義務は、当事者の本国法によって定める。」
と定めており、当事者の本国(国籍のある国)の法によります。
ただし、ここで問題が生じます。祖父母と子が国籍を異にする場合、誰の本国の法を適用するか、ということになります。論者は、双方の本国法の類推適用(祖父母の本国法と子の本国法双方が面会交流を認める場合に認める。)と考えたり、子の本国法のみによる、と考えています(溜池良夫「国際私法講義【第三版】」(有斐閣2005)532頁)。
また、従来通則法33条は、親族の範囲(兄弟の範囲やその他親族の範囲、日本国内において、親族相盗例や特別法上「親族」が問題となるときの親族の範囲)くらいにしか適用がないと考えられていました。上記に述べたフランスの訪問権が認められていることを述べつつ、その「親族(等)の範囲」を決めるため通則法33条を適用する述べる、木棚照一「逐条解説国際家族法―重要判例と学説の動向―」(日本加除出版2017)420頁は、「面会交流権の存否に通則法33条が適用されるか」については言及していません。本来このような問題に通則法33条が適用されることは、想定されていなかった、と考えることもできます。

②親子と同様に通則法32条による説
祖父母と子との関係は、「親子間の法律関係」ではないにもかかわらず、子の問題も通則法32条によるというものです。
諸外国の法制上、子の面会交流は親族のための権利というよりは、「子が親族に会うことで子の福祉に資するという、子の権利」としてとらえる国が多く、子を中心に考えるべき問題であること、通常、親子間の権利義務を前提に祖父母と子の権利義務が生じることから、子を中心とする準拠法決定ルールである通則法32条を適用し、準拠法を決定する、というものです。

③条理により準拠法を決定する説
これは、祖父母と子との関係については、通則法に規定のない(単位)法律関係であるとし、通則法に規定がないこと以上、条理により準拠法を決定すると考えるものです。条理の内容としては、子の常居所地の法や、子の住所地の法、当事者に最も密接な地の法等が考えられます。

以上、雑駁ではありますが、例えば祖父母をA国に住むA国人、面会交流を求める未成年者(子)を日本在住の日本人とします(A国法は通則法41条の反致が成立しないものとします。)。
①では
A国法と日本法双方が面会交流権を認める場合
または
日本法が面会交流権を認める場合
に権利が認められることになります。
②及び③では、日本法により権利の存否が判断されます。になります。

日本法については上記でのべたとおり、権利性はないのですが、同じく上記でリンクを貼った新聞記事の動向が待たれます。



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