見出し画像

浜松町から旅を届ける「東京モノレール」。

浜松町Life Magazine、第7回は、東京モノレール浜松町駅の水永駅長(※2023年2月取材当時)。東京モノレールが浜松町の地で創業して59年。羽田空港と浜松町の間を運行する東京モノレールの取り組みに関して、水永駅長にその魅力などを伺いました。

旅への玄関口、浜松町

-東京モノレールの歴史についてお伺いできますか?
東京モノレールの開業が昭和39年なので開業して59年が経っています。貿易センターさんの少し前にできた会社ということになります。
創業当初から変わらず、浜松町と羽田空港を行き来する鉄道を運行しています。最近では羽田空港へアクセスできる交通手段が増えてきていますが、少し前までは「羽田空港への移動手段といえば東京モノレール」というイメージだったのではないかと思います。

-水永駅長の経歴や、普段の仕事内容について聞かせてください。
私は東京モノレールに中途入社で入り、勤続30年になります。この会社の前はシステム系の会社に勤めており、東京モノレールにもシステムを担う部署のスタッフとして入社しました。そして、色々な部署を経験し、2020年からはここ浜松町駅の駅長となりました。ですので、駅長歴は3年になります。
 
駅長の仕事としては浜松町駅の管理もありますが、天王洲アイル駅、大井競馬場前駅、流通センター駅、合わせて4駅を管轄していて、各駅やその沿線、あとは駅周辺の会社や地域関係者との調整業務が主な仕事ですね。
 
さきほど簡単な経歴はお話ししましたが、駅長になる前は営業部に9年間在籍していました。営業部では多くのお客様にモノレールへ乗車してもらうための企画や、駅の制度・規則の策定などに携わっていました。また、変わったところでは「連絡清算」と言う業務も担当していました。複数の鉄道に乗車したお客様の収入が当社であがることもあれば、その逆で他の鉄道会社さんであがることもあるのですが、その清算のことを「連絡清算」というんです。そうした他社さんとの清算管理も営業としての業務の一つでした。皆さんが想像する一般的な営業とは少し異なることもやっていましたね。

-乗車してもらうための企画というのは、どういったものなのでしょうか?
皆さんがイメージしやすい企画ですと、モノレールの記念乗車券の発行やおトクなきっぷの設定・販売とかですね。
あとは、現在実施中の企画ですと、サンリオのキャラクターとのコラボレーションなどです。サンリオキャラのラッピング特別車両を作ったり、コラボグッズなんかも製作しています。
キャラクターで言うと、東京モノレールには「モノルン」というキャラクターがいるんです。営業部で企画し、生まれたキャラクターです。企画した当初は、社内でも「なんだかぼんやりしていて、変なくちばしだし、これってどうなんだろう」というような否定的な意見もありましたが、時間が経ってくると妙に愛着というか、ぼんやりしたところが逆にいい!みたいに思えてきて、今では東京モノレールに欠かせない大切なマスコットキャラクターとなりました。

©2023 Tokyo Monorail/dwarf

-浜松町駅での勤務の中で思い出に残っていることなどはありますか?
私だけでなく、社内でも強く印象に残っていることがあります。
コロナ禍前になりますが、お客様で当時3歳くらいの女の子がいらっしゃいました。その子が初めてモノレールに乗車した時にモノレールファンになってくれたようで、それからというもの度々浜松町駅に来てくれるようになったんです。私たちも構内でモノルンや車両と一緒に写真を撮っているところをよく見かけていました。次第に我々駅員とも顔見知りになっていき、顔なじみの駅員を見かけると手を振ってくれたり、お手紙を送ってくれたこともありました。

-素敵なエピソードですね。
私たち鉄道事業社はコロナ禍でお客様の数が減ってしまい、大打撃を受けました。つらい時期の中でお客様である女の子からのエールは、社内でもとても励みになり、社員一丸となって辛い時期でも頑張ろうという前向きな姿勢になることができました。
そういった多くのお客様のおかげもあり、最近は客足も少しずつ戻ってきました。今年のお正月などは、日本人よりも欧米人のお客様方の方が多く、いよいよ日常生活が戻ってきたんだなと強く実感しました。

少しずつ観光客も戻ってきている東京モノレール浜松町駅

「旅劇場」の舞台、東京モノレール

-浜松町周辺のモノレール沿線には楽しめる街が多くありますよね。
そうですね。例えば天王洲も、独特の賑わいがあります。昔はモノレールしかありませんでしたが、今はりんかい線も通り、それを機に大きく人の流れが変わりました。運河を眺めながら食事が楽しめる「T.Y.HARBOR」など、水辺空間の活用がすごい素敵ですよね。また、ナイキが街中でスケートボードのイベントを開いたり、アートイベントが頻繁に開催されたりと、なかなか意欲的にエリアマネジメントがなされているエリアだと思います。
 
あとは天空橋駅や羽田空港の駅も楽しめるようになってきました。天空橋駅ではモノレールが出資している羽田イノベーションシティがあり、新たなエリアの開発も徐々にではありますが進んでいますし、羽田空港には1月に羽田エアポートガーデンがグランドオープンしました。ここは羽田空港第3ターミナルに直結していてホテルや商業施設が併設されており、幅広いお客様に楽しんでいただけるエリアとなっています。
 
こうした沿線の様々な魅力もモノレールの良さとして取り込んでいき、発信できるといいなと思っていますね。

-取材前にモノレールに乗って羽田空港まで行ってきました。飛行機に乗るわけでもないのに、モノレールに乗るだけでなんだかワクワクした気持ちになりますよね。
お客様が東京モノレールに乗車して感じていただく、旅の始まる前の「ワクワク感」や旅が終わった後の「余韻」など、モノレールに乗って沸き起こるそういったエモーショナルなところをもっとアピールしていきたいと思っています。東京モノレールではお客様に選ばれ続ける存在となるため、企業ブランディングの取組み「東京モノレールシアター」を進めています。

-「東京モノレールシアター」とはどういった考え方なんですか?
東京モノレールでの体験が感動につながる旅として、その旅を劇場ととらえ、モノレールの車両や駅を劇場の大道具や舞台の装置と見立て、駅という舞台に集まっていただくお客様に、非日常の劇場的な空間を味わって頂きたいという考えです。
 
今度のモノレール浜松町駅舎の建て替えではそのような劇場感を体感してもらえるような駅を実現したいと思いますし、駅で働く当社のスタッフたちにも、劇場のアクターとして、お客様と一緒にその劇場空間を作り上げて言って欲しいと思っています。
 
また、もう一つ取り組んでいきたいことがあります。鉄道事業者として、このエリアの他の鉄道事業者である、JRさん・都営地下鉄さんと力を合わせて何か一緒に取り組んでいきたいと思っています。具体的なプランはありませんが、コロナでお互いに情報交換をする機会が減っていたため、まずは駅長同士で会食なども含めてコミュニケーションを重ねたいです(笑)。ゆくゆくは互いの若い社員も含めて、鉄道事業者ならではのアクションを起こせていけたらいいなと思っています!

浜松町駅から羽田空港へ向かう東京モノレール

通過点ではなく、街そのものを楽しめる場所へ

-浜松町は空港が近く様々な人が来る街ですが、水永駅長にとってはどのような街ですか?
私も浜松町に30年以上勤めているので、世界貿易センタービルが無くなってしまったのはとても寂しいです。今でこそ様々な開発が進み街として発展していますが、古くからいる人間からすると、やはり今も昔も、駅前の世界貿易センタービルの印象が強い街ですかね。
今後は新しい世界貿易センタービルが建ち、ホテルやレセプションルームなどの施設も出来ると聞いているので、また昔とは違う新しい浜松町に生まれ変わることを期待しています。旧芝離宮恩賜庭園の自然や竹芝・芝浦の海辺など、多方面からアピールできる街になるといいですね。
ただ、そういった新しい事への期待がある反面、浜松町の庶民的なところが減っていってしまうのは寂しいなとも思います。

-昔から残る良さは残していきたいですよね。
今までにない新しいお店がたくさんできることはとてもいいことだと思いますが、貿易センターの地下にあった店舗のように、昔からある馴染みのお店が無くなってしまうこともやはり寂しいです。貿易センターの地下にあったお店には、個人的にとてもお世話になっていたので思い入れが強いんですよね。
 
地下にあった店舗の中でも、「風車」という純喫茶には思い出がたくさんあります。当時の部長などが行きつけのお店でして、朝就業時間前に出社するとオフィスには誰もおらず、その喫茶店に部長をはじめ何人も社員がコーヒーを飲んでいるという状況でした。コーヒーを飲んで、これから1日頑張ろうと思ったことが、思い出として残っています。

純喫茶「風車」の店内。懐かしく感じる方も多いのでは。

-今後、浜松町はどういう街になってほしいですか?
浜松町ってどうしてもビジネス街じゃないですか。平日はビジネスマンが行き交って、夜も飲みに行く人で結構賑わっている状況だと思いますが、逆に土日って平日と比べて人がすごく少ないですよね。
なので、平日だけでなく、休日にも人が集まるようなエリアになってくれれば嬉しいです。
休日に人が増えることが、東京モノレールをご利用されるお客様が増えることに直接つながるわけではありませんが、お客様が羽田空港から浜松町を起点に仕事や観光へ行くような、通過点ではなく、街そのものを楽しんでいただけるような変化を期待しています。

東京モノレールの魅力を真剣に語ってくださった水永駅長(※2023年2月取材当時)

取材・文:関根隼人、飯島奈津子(世界貿易センタービルディング)・中塚麻子(玉麻屋)/編集:坂本彩(玉麻屋)/撮影:yOU(河﨑夕子)
 
東京モノレール株式会社
http://www.tokyo-monorail.co.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?