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三行詩集

 自分の詩の形を模索する上で、かつて実験的に作っていた三行詩です。三行に込めるというのは想像以上に難しく、技術が必要ですが、その分面白さがあるのも事実です。
 三行詩というコンセプトを思いついたのは、恐らく石川啄木の『一握の砂』を読んでのことだと思います。僕の詩はおおよそ孤独感と大切なものへの愛情や恋慕の上にしかありません。それらもありますが、三行詩集の中には日常の遊び心や呟きのようなものも含めています。僕自身、読みながら懐かしさを感じていたところです。

匂い
 貴方に似た匂いと出会うとき
 貴方の何を思い浮かべるだろう
 本も読めぬほどに想うでしょう

帰路
 街灯と街灯の長い隙間に
 少し広いプラネタリウム
 僕も星になれそうな道

詩人仲間
 喜怒哀楽の尖った日
 友の詩の行間に安らいで
 図書館のような夜でした

紅葉
 黄金色に銀杏の照ったその下で
 何にも考えもせぬ夜に
 理想のHeavenを仮定しました

言葉
 一言で暗転した日常は
 一言で明るくなるということ
 ネガティヴはそんなに強くない

たられば
 たらればはきっと願いじゃない
 現世を生きる僕たちの
 きっと娯楽のようなもの

流行
 昭和の坊主に丸眼鏡を格好良く思う今
 この国で流行っている服や髪型が
 何なのかを僕は知らない

自由
 僕らは自由を自由に生きている
 自由を得る為に自由と戦っている
 自由を守ろうと自由を捨てている

三行
 多くを語らぬ妖しさ
 伝わらなくても伝えたという意味
 酔いしれる為の三行の結美(むすび)

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