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自分の登山を再開する準備

前回の投稿からもう一ヶ月。
なかなかアウトプットの習慣化は難しいですね。
さて、久しぶりの投稿は、仕事の関係ではなくて自分の登山のことについて書きたいと思います。実はかなり前から書き始めてたんですが、なかなか書ききれず今に至りました。

30代の頃は、ほぼ毎年ヒマラヤなどでアルパインクライミングを行いつつ、フリークライミングでもコンスタントに5.13を登っていました。国内の強いクライマーと比べて高いレベルだったとは言えませんが、それなりに取り組めていたと思います。
いま本気で、その力を取り戻そうと考えています。
こんなことを書き始めると笑われそうですが、本人はいたって本気でそう考えています。


○また強さを取り戻したいと思った理由

そう思った一番の動機がこれです。

ポール・ラムズデンさんとは2013年のピオレドール授賞式でお会いしました。

ポール・ラムズデンさん(左)とミック・ファウラーさん

昨年なんと54歳で、5回目のピオレドールを受賞しました。
このニュースを聞いた時、俺は一体この10年間、何をやってたんだ!
という思いが沸き起こりました。コツコツ登山を積み上げてきたポールさんと、忙しさを理由にほとんど何もしてこなかった自分。
ポールさんは、努力してきたというよりも、それが当たり前のように登り続けていたんだなあと思いました。継続している強さって、やっぱりこういうことだよなあと。

ちなみに上の写真で右側に写っている方がミック・ファウラーさんというこれまた大御所で、ポールさんより14歳年上。なので、この時58歳!!(ということはポールさん44歳だったんだ!)ということになります。UKクライマー凄すぎる。しかもこの時のピオレドールは、ミックさんよりもさらに年上UKクライマー2名が受賞していました。恐ろしい。。。

余談ですが、ミック・ファウラーさんとはその後も交流があり、日本にいらっしゃったときにホストとしてお迎えさせていただきました。Patagoniaのアンバサダー時代ですね。めっちゃ懐かしい!、そして若いwww

そしてミックさん、67歳になった昨年もタジキスタンですごいクライミングしてて、本当に尊敬しかないです。。。

○自分の登山から遠ざかっていた40代

さて、私自身の話に戻ります。
まずは少し過去を振り返ってみたいと思います。
最近の10年(主に40代)は、その前の10年(主に30代)と違って、いわゆる自分の登山というものはほとんどやっていませんでした。もちろん登山をやめた訳ではなく、どちらかというと「ヒマラヤキャンプ」のような次の世代を見据えたプロジェクトに注力していました。

ヒマラヤキャンプ2016
ロールワリンカン(6,664m)初登頂

また40歳になった2016年に株式会社ファーストアッセントを設立して、2017年から甲斐駒ヶ岳七丈小屋の運営を始めて以来、どちらかというと軸足は常に仕事にありました。

ヒマラヤキャンプの意義は大いにあると思っています。
しかしヒマラヤキャンプで挑戦している山々は、登山の難易度としては30代にトライをしていた山々と比べるとどうしても下がります。「未知」に挑戦することに重きを置いていたので、技術的な困難を追求する登山ではありませんでした。これらの山々は、私にとっては、肉体的にも精神的にも余裕があります。だからといって登れるとは限らないのが未踏峰の楽しみでもあるのですが。

そういう意味では、2019年に信州大学山岳会の強い後輩とトライした、ヒムジュン〜ヒムルンヒマールの縦走(敗退)が、ヒマラヤで頑張った直近での最後の登山と言えます。そのあと新型コロナのパンデミックに突入し、同時に仕事のウエイトが徐々に大きくなっていってしまい、意識的なトレーニングすらほとんどやらなくなってしまいました。

2019年のヒムジュン〜ヒムルンヒマール縦走

しかしこのところ、次の10年(主に50代)をどう過ごしたいかを真剣に考えるようになりました。ヒマラヤキャンプ2023に途中まで参加して、4年ぶりにヒマラヤの空気に触れたことが呼び水になりました。やっぱりこの世界に長く浸れる人生を送りたい。そして前後して冒頭のポール・ラムズデンさんのニュースを知り、俄然やる気になったのです。

○仕事と両立して取り組むには

かといって、いまの現実を投げ出すことはできません。
30代は山岳ガイドの仕事以外は、ほぼ全ての時間を自分の登山のために使っていました。いまは多くの時間を仕事に費やしていますし、これからも大きくしていこうと思っています。今よりも忙しくなることはもはや確定的なのですが、人生の時間は有限です。忙殺されているわけにはいきません。

山岳ガイドが専業だった頃

40代の多くの時間が仕事に消えていた一番の理由は、何でも自分でやろうとしていたということだと思います。しかし運営する施設が3つになり、代表を務める法人も2つになると、自分が現場に出てやれることは限りなく少なくなりました。現場は現場の担当者に任せる形にしなければ、とてもじゃないけど全てを機能させることはできません。そしていまは、それを任せられるスタッフに恵まれていることに感謝しています。

昨年秋に1ヶ月のお休みをいただいてヒマラヤに戻りました。
しかし出発する前も出発してからも、日本のことが気になって全く集中できず楽しめませんでした。それが電波が絶たれたことで山に集中する気持ちが戻ってきて、とても充実した時間を過ごすことができました。また現場もしっかりと機能していて、大きな問題もすべて現場で解決してくれていました。この時間を経験できたことは、とても大きかったです。
もはややらない理由は、自分の怠慢でしかない状況だと悟りました。

ヒマラヤキャンプ2023にて

仕事とトレーニングを両立させていく上で、一番大切にしていることは圧倒的に心身両方のコンディショニングです。私が特に意識しているのが、
①睡眠時間の確保
②飲酒を控える
③運動習慣
たったこの3点です。この3点に「意識的に取り組む」だけで、この数ヶ月も劇的な変化を感じています。

①質の高い睡眠と睡眠時間の確保

平均して1日7時間の睡眠時間は確保しています。
もちろん7時間に満たないときもありますが、週のほとんどで確保していれば、一日ぐらい短くても全く影響ないことも分かりました。やはり良質な睡眠は本当に大切だと感じています。
睡眠時間を確保することよって一番大きく感じた変化は「判断力」だと思います。最近の僕の仕事は、何かを「決断する」ことが大部分を占めています。現場の運営で必要な細々としたものは現場に委ねられますが、組織全体に関わることはやはり代表たる私の決断が必要です。その決断のスピードが早くなっただけでなく、迷いも少なくなりました。これは心身ともに元気だからだと思います。
今月からはヨガを取り入れました。寝る前に3ポーズおよそ20分。これをするだけで柔軟性が上がってきただけでなく、眠りが深くなっているのを実感します。

②飲酒を控える

もともとお酒は強い方ではないのですが、昨年のヒマラヤに行くまでは、何となく晩酌で飲んでたりすることが多かったと思います。しかしヒマラヤでほとんど飲まない1ヶ月間を過ごした結果、もういいやって思うようになりました。帰国してからは、会食のときとか以外はほとんど飲まなくなりましたし、飲みたいとも思わなくなりました。
もちろんお酒の時間は嫌いではないので、柔軟に対応している感じです。
しかし日常的に飲まなくなったことで、翌朝の目覚めはすごく良くなったと思います。

③日常的な運動習慣

以前は山岳ガイドと自分のクライミングが両輪だったので、計画的なレストが必要でした。しかしいまの生活リズムは、計画的(強制的)な運動が必要です。本当に驚くほど動かない時間が増えているので、強制的に仕事を止めて運動をする必要を感じています。

近所のクライミングジムでのトレーニング

いまは登山やクライミングのために空けた時間以外は、「一日最大2時間」と時間を区切ってトレーニングをしています。「最大2時間」というところがポイントで、それ以上やってしまうと時間的に仕事に支障をきたすことにもなります。ジョギングだけの場合は30分で終えることもあります。まだできないときもあって習慣化までは至っていませんが、無理なく継続できるように、日々の時間の使い方を改めたいと思っています。

40代になって粘り強く取り組むことを覚えた気がします。
山岳ガイドが専業の頃は、全て自分の都合で進めることができました。ストレスなんてほとんどありません。しかしいま主に取り組んでいる官民連携事業は、一足飛びに進むようなことはほぼありません。何年もかけてやり続ける粘り強さがないと、何も前に進まないことを学びました。関係者が増えれば増えるほどいろんなことが起こります。だけどそれを乗り越えなければ何もできません。

トレーニングも同じで、コツコツと積み上げていくしかありません。
30代に比べて明らかに我慢強くなった40代。
あと2年でしっかりと身体を作っていって、50代でまたピオレドールに呼んでもらえるようなレベルに返り咲くという、大いなる野望を抱く今日このごろです。

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