『ウイルス学者の責任』(宮沢孝幸)の要点③

専門家会議のメンバーは、ウイルス学については素人ばかりではないかと私(宮沢孝幸先生)は感じていた。
それは、ガイドラインの中に、「石けんで30秒程度手を洗って下さい」という項目が入っていたから。

自分の体に付着するウイルスをゼロにする必要はなく、感染に必要な量以下にすればいい。
そもそも感染経路として、手を通じてウイルスに感染することは「ほぼない」と言えるぐらいのレベル。

「コロナウイルスとは何か?」というと、基本的には呼吸器疾患や消化器疾患を引き起こすウイルスで、多くは季節性の風邪を引き起こす。

つまり、ごく一般的な「風邪の予防対策プラスα」程度の対策をとるべきだった。

致死率が極めて高いSARSコロナウイルスやMERSコロナウイルスは絶対に感染してはならないウイルスだが、新型コロナウイルスは、医療崩壊しない程度に感染を抑制することで十分だったはず。

感染が広がり難い状態にして、その一方で重症化した人を手厚く治療する作戦をとるべきだった。

新型コロナウイルスは、インフルエンザより感染拡大力が弱いウイルス。また、若い人たちにとっては、感染した場合の症状も軽い。
ところが、政治家も、医師も、国民のみなさんも誤解して「感染力が強い恐ろしいウイルスだ」と思い込んでしまった

「新型コロナウイルスは、インフルエンザより感染拡大力が弱い、季節性の風邪のウイルスの1種であるが、高齢者や基礎疾患を持っている人では重症化するウイルス」という正確な認識を多くの人が持つことができていれば、過剰な対策はとられなかったはず。

ウイルスは、未知の「お化け」ではない。「お化け」なら、わけがわからないことが起こるが、ウイルスの感染にはすべて理由がある。その理由を知っておけば、「ほぼ起こり得ないこと」を過度に恐れることはなかったはず。

今後、別のウイルスでまたパンデミックが発生したら、今回の教訓を活かし、専門家の知見を活かした合理的な判断が下されることを切に願う。


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