見出し画像

新年の挨拶と、夢のようなお話  『星の王子さま』

こんにちは。

皆様、明けましておめでとうございます。

花子出版の記事を書いています、僕は元日に32歳を迎え、プロフィールの年齢も31から32に更新しました。

正月と言いますと、初夢。初夢は、「大晦日から元日」「元日から2日」「2日から3日」と三つの説があるようです。
僕の初夢は学生時代にアルバイトしていた、飲食チェーン店でアルバイトをしている夢でした。それも、「大晦日から元日」「元日から2日」とも・・・。辣腕を振るっているなら、楽しい夢となったことでしょうが、料理を上手く作れなかったり、ミスしたり、使用済みの食器が山積みになったりと、四苦八苦。今の心情なのでしょうか・・・。


そんな初夢はさておき、新年に初めに読みたい本を吟味していますと、良い本を思い出しました。初夢にしたい、夢のような小説です。飛行士でもあったフランス作家、サン=テグジュペリが書いた『星の王子さま』

画像1


あらすじ

砂漠に不時着した主人公が、突然出会った王子さま。王子さまはいくつもの星を巡り、7番目の星が地球です。主人公は砂漠での不時着ですので、生死を彷徨っていますが、王子さまはそんなこと我関せずに、絵を描いて、と頼んできます。それも羊の絵。主人公は何枚を絵を書きますが、王子さまは納得しない。最終的に、木の箱を一つ描き、「ほら、木箱だ。君が欲しがっている羊は、この中にいるよ」と。それで、王子さまはご満悦。
このように、二人の物語がスタートします。
王子さまが巡った星の回想に入りますが、王さま、自惚れ屋、呑んだくれ、実業家、点灯人、地理学者など、様々な挿話が物語を彩ります。


僕が特に好きな挿話は、5番目の点灯人です。点灯人は、ガス灯が一本だけ立っている星の住人です。ガス灯以外は、何もありません。何もないほど狭い星なのです。点灯人の仕事は、夜にガス灯を点け、昼になると消すことです。
以前は、星の自転のスピードが遅かったものの、現在では、なんと1分で1回転してしまうのです。点灯人は、毎分、点けて、決して、点けて、決してを繰り返しています。
憐憫の眼差しを向ける王子さまは、ある提案をします。太陽に向かって歩き続ければ、ずっと日中だから、仕事をしなくて済むと。
しかし、点灯人は拒みます。「この世で私が好きなのは、眠ることだから」と。
王子さまは言います。「ついてないね」
点灯人は言います。「ついてないんだ」。そして、ガス灯を消しました。

・・・

上記の挿話は、社会の縮図のようであり、人間の本質のようであり、すごく好きな場面です。決して、奴隷を推奨しているわけではありませんが、人間の行動パターンへの鋭い捉え方と、揺れ動く表現の数々を気に入っています。あっさり短い挿話ですが、海溝のように深い。

『星の王子さま』終始夢のようなお話です。また、哲学的であり、生き方を考えさせられる場面も散見します。
大数学者の岡潔先生も、星の王子さまについて触れられています。

少し長いのですが、抜粋します。

『春の草』  岡潔  日経ビジネス人文庫

『日本少年』で情操を育てる  の章

 父のやり方は、すんだものはさっさと処分してしまうことでした。たとえば雑誌などにしても、読み終わったものをとっておくというようなことはしなかった。そのため、私はかえって印象が鮮明に残っているような気がする。これも一種の教育でしょう。
 フランスの小説家サン・テグジュペリの作品に『星の王子さま』というものがあります。星からきた王子さまが、砂ばくで絵描きに出会っていろいろと話かけ「羊の絵を描いてくれ」と頼む。絵描きはいろいろかいてやるが、「やれ、この羊はよぼよぼ」だの「やれ。この羊は角が曲がっている」だの、といっていっこうにラチがあかない。エイッめんどうくさいとばかり、箱の中に羊をいれ、空気穴をあけた場面、つまり外から見た絵をかいた。四角い箱に三つほど穴があいているだけです。そうすると、星の王子さまはすっかりご満悦で、「自分はこんな元気なのが描いてほしかった」といった。
 私のいま見ている過去の絵巻物は、父の果断のおかげで、すっかり箱の中の元気な羊のようになってしまっているのです。結局、父は私より一段上の立ち場からみて私をよく教育したので、その筆頭にあげるべき教育法は、済んだものはどんどん売ってしまうというこのやり方かもしれない。
 私は『日本少年』を積んでもいなければ、固定教科書をそろえてもいない。また自分の成績としての図画や手工作品を貯えてもいません。こんなものをいちいち残したところで、あれも懐かしい、これも懐かしいと終日メソメソしているだけかもしれない。人の情緒とはそういうものです。どこに貯えられるのでしょう。真の自分とはどういうものなのでしょう。

・・・。

抜粋は以上です。


画像2


岡潔先生の教育に対する捉え方は、目を見張るものがあり、勉強になります。

さて、正月三が日は終わりましたが、初夢を忘れないうちに、各々の情緒が導き出す夢のような本を手に取ってみますと、素晴らしい一年になるのではないでしょか。


今年もどうぞ宜しく御願い致します。花子出版のnoteも頑張って更新してゆきますので、気軽に遊びに来て頂けますと幸いです。


頌春


花子出版      倉岡


この記事が参加している募集

読書感想文

文豪方の残された名著を汚さぬよう精進します。