【映画鑑賞記録】「すずめの戸締り」締められた扉の先にいるのは誰か?
(※この記事は本編の内容に触れています)
週末にやっっと!観てこれました。
今年に入って劇場に足を運ぶ時間がまったくなかったけど、
方々から賞賛の感想を聞いたり見たりしていて。
「新海監督の作品は劇場で観ないわけにはいかない!」という、
どこか使命みたいなものを背負って公開から数週間。
この週末、セミナー受講で都内に宿泊した帰りに何とか予定をこじ開けて劇場へ行けました。
息切れ気味で今年の総決算のように多忙極める11月だったのですが、
公開すぐのフレッシュな余韻が残るうちに観たいという意味で言えば、滑り込みセーフかな?
(まだ劇場でも全然やってると思います)
***
ほとんど何の前知識も入れずに観ました。
最初の冒頭で「おそらくこれは少女の成長物語だな」と感じながらも、
物語うんぬんの前に相変わらず美しい風景映像に魅了されます。
何だろう、あの高く、懐かしく、透き通ったブルーパープルに輝く、
胸のあたりが苦しくなるような空の色。
物語はファンタジーの要素を盛り込み、天変地異や森羅万象の神秘を、
誰もが心の引き出しの奥にしまったあの日の記憶を想わせながら現代のリアルなタッチと絡ませて描かれていた。
そして。
途中から「この映画はやばい」と思い始めた。
勝手なことを言うようだけど(笑)、おそらく物事の本質をついてきている。
それは「自分の内側にあるものが現実を作っている」という、
丸の内のど真ん中でひとつ言い方を間違えると「ああ、この人はスピなのねー」と揶揄されるような、
でも、たぶんみんなが本当は気が付いているんだけどなぜかそこのチャンネルにはアンテナをたてないように、見ないようにしている部分を、
アニメーションの持つ神懸かったテンションで描いているからだ、と思う。
その本質を新海監督が意図しているかどうかは別としても、
エモーショナルでありながら優しさと繊細さを交えた眼差しで描いていると感じた。
純粋に。
監督は、"廃墟"という場所に残る人々の感情や置き去りにされた"エネルギー"を描いていく中にメッセージを込めているのだけど、
この「置き去りにされた感情」というところがポイントなんだと気づく。
そしてラストに向けて、一気に少女が逞しくなってくるのも力強い。
作品中のファンタジー的な要素や現実離れした展開は、アニメーションならではの魅せる要素でありながら、大人の常識的な視点だけで捉えると、
どこか滑稽に見えてしまうギリギリのラインかもしれない。
それくらい、内なる子どもの声を試されるようだと感じた。
観客として純粋に感動しつつも、つい作り手側の目線で「観客はついてこれるか」と密かに緊張感も感じた。
そしてエンディングに向かうにつれ、最終的に物語はいわゆるインナーチャイルドの根幹に踏み入ることになる。
ああ、これ以上はネタバレ…。(ごめんなさい。。)
話変わって、
私はおそらく普通の人よりは少し多く映画を観てきたと思うんだけど、
そんな私の好きな作品トップ5に"誰もが知っている"、
宮崎駿監督の「魔女の宅急便」があるのですが!
物語が進むとこの作品の中に"魔女宅"へのオマージュが散見され、
ますます唸ることとなってしまいました。
結局のところ、"自分を助けるのは自分"なんだと気付かせてくれる。
誰かがいなければ誰かが助からないような物語や現実は、本当の意味で幸せにはなれない。
自分以外の相手(や物質的なもの)があることで成り立つシチュエーションは長続きしない。
相手が変わるのを待ち続ける人生では、自分で人生の舵は握れなくなる。
魔女宅のストーリーがあんなにワクワクするのは、
キキが迷い挫折を経験しながらも最終的には自分で成長を成し遂げるから。
一人で旅立つ少女が孤独を感じることにちゃんと寄り添い、
でもその先にそっとその成長を見守る大人と友人がいるから。
そこに仲間はいるけど彼らは決して依存的な存在なのではなく、しっかりと自立した個人としてキキが大人になっていく過程に存在する伴奏者として見守る存在だから。
自分が自分でしっかりたつと、どんな物事や事象も人のせいにしなくなるし、ならなくなる。
そしてその視点が入った人間はとても力強く、ちょっとの嵐では倒れない。
世界中の人が自分で自分に声をかけていくと、地底に蓄積された形のないエネルギーもきちんと循環されて消えていくではないかと感じる。
そう思うと「ただ感情を見つめそれを許す」というような簡単なことを現代はどこに忘れてきたのか?
映画を見ながらひたすらにそんなことを考えていた。
その涙の声を聞く時が、意味を知る時代が来たんだ、と、
映画の中で観たブルーパープルの草原を包む青い空の風景に思った。
新海作品の映像美を劇場で観るだけでも体験する価値があるのに、
さらに登場人物が本当に魅力的。
超絶おすすめです!
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