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読書感想|家族終了|酒井順子

図書館で目に留まった黄色の装丁。
酒井さんの本、
家族構築真っ只中の私に
どきりと刺さるタイトル、とりあえず借りる。

本の中では、
生まれた家庭を「出生家族」
自身が結婚し構築する家庭を「創造家族」と名付け

独身で「創造家族」を持たないまま、
「出生家族」も自身の存在を最後に【終了】することに気づいたところから著者の語りが始まる一冊。

自分で家族を【終了】させるって、
ものすごく重く感じる日本人が多いと思う。
その重さを受け止めつつ、
時代に合わせた視点から、
酒井さんの切れ味あるユーモアで語られる家族への考察。面白かった。

ご先祖様たちが必死に紡いできた糸、
途絶えさせては、もう元に戻ることができない。
という、その不可逆性も、
見えない重さの正体なのかもしれない。

でも、法律上の婚姻率も出生率も下がるいっぽう、
私たちはズンズン重くなり続ける十字架を担ぎ続けなければいけないのか?
または、結婚した人してない人
産んだ人産んでない人を線引きし、
「ない人」に石を投げ続ける、
そんなことを続けるのか?

日本は歴史的にも家を守ることを
精神性の柱にして秩序を守って(守らせて)きたし、
天皇家という世界最長の家族を象徴とする国家であるがゆえ、
家族を終わらせる、ことを大罪のように扱ってしまうのかもしれない。

しかし、本来は子どもを産み育てるためのチームだった家族が、それを守ることだけが目的化したら、
まさに、【手段が目的化】、本末転倒ではないだろうか。

また、家族の在り方にも著者は言及していて
もはや、現行の法の元に定義される家族は、
家族の一形態にしか過ぎず、
また、同じメンバーで一生続けなければならないわけでもない。


個々人が、助け合いながら生きていく仲間を見つけていく。
それを家族と呼ぶことができるなら
その営みがある限り、それはつまり人間が人間でいるということだから、
家族が絶滅することはないだろう。

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