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学芸美術 画家の心 番外編第1回「ガザの女 2023年」

ガザでは連日連夜のミサイル攻撃で吹き飛ばされ血まみれの肉塊となった我が子を抱く母がいる。


耐えがたい深い悲しみに母は夜叉(やしゃ)となり、せめても美しい顔で、美しい体で神の国へ送り届けたい。ただただ、夜叉となっても母はそう願うのだ。

クリスマスの日、世界中の教会で平和を祈るミサが、みなが見守る中で厳かに行われた。
神様、世界が一日でも早く平和になりますように…。
戦争がなくなりますように…。

しかし、夜叉の信じるカミは、愛しい我が子を、光あふれる穏やかな国に、心やさしい天使たちは、この子を見つけ天国へと導いてくれるのだろうか。

夜叉となった母には、カミはいない。夜叉の怒りがとけない限り夜叉は夜叉。夜叉の子の魂は、死霊(しりょう)となりこの世をさ迷い、夜叉は生霊(いきりょう)となりこの世をさ迷う。

夜叉の母は、この子がせめても悪霊(あくりょう)とならないようにと固く手を合わせる。

そして、恨みを貯めた二つの魂は、新たな戦の種となる。

夜叉は訴える。
わたしの神は何処(どこ)にいる、と…。

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