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有隣堂のyoutubeを楽しむ世界

 朝から、わけもなく物憂いときがある。
 また今日一日が始まってしまう。布団から離れなければならない。それだけで腹立たしさが襲ってくる。
「このまま寝かせてくれ! 私は何よりも寝ることが好きなんだ!」
 思わず睡眠に愛を叫んた朝、スマホを見ると、

「火曜日」

 と表示されている。
 その次の瞬間、私はむっくり起き出し、お昼までにあらゆる作業を終わらせようと勤しむのである。

 私を動かしたものは何か。それは、

 である。

 有隣堂とは、創業113年を誇る老舗書店。その老舗書店が、2年ほど前にyoutubeを始めた。火曜日(正確には火曜日のお昼)は、その有隣堂のyoutubeの更新日なのである。

 youtubeには数多のチャンネルがあり、自分がハマれるような動画に出会えることは、実はそれほど多くはない。特に家族で一つのアカウントを共有していたりすると、趣味嗜好が乱雑になり、自分好みのチャンネルが、おすすめや関連動画に表示されなかったりする。正直言えば、不要なチャンネルばかりおすすめされ、辟易とすることが多い。

 しかしある日、youtubeが有隣堂のyoutubeをおすすめしてきたのだ。そのサムネイルの画像は、一瞬で私の心をとらえた。

 何だ、この左にいる丸っこい生き物は!?

(右はもちろんピースの又吉直樹さんである)

 私は元々、山田五郎さんのyoutubeをよく見ていた。山田五郎さんのチャンネルに又吉さんがゲスト出演され、又吉さんのチャンネルも見に行った。その結果、関連動画として、この有隣堂のyoutubeがピップアップされたのではないかと予想している。

 一度動画を見るとyoutubeは芋づる式に動画を勧めてくる。
 次に拝見した動画がこちらである。

 作家、中山七里さんの執筆に密着した動画だ。

 中山七里先生の執筆の様子にも度肝を抜かれたが、それにコメントをするMCの一言も秀逸であった。

 この動画を見終わると、私はすぐさまチャンネル登録し、高校時代からの友人に、有隣堂のyoutubeを力強く勧めるメールをした。このとき、私の口角は、上がりに上がっていた。これまで多くのyoutubeの動画を見てきたが、こんなに楽しく笑ったことはない。

 過去作を辿ってみると、基本的には文房具の話が多いのだが、学研の図鑑を作る編集者の裏話や、三省堂辞書出版部の部長が辞書に対する思いを熱く語る動画もある。そのほかには、プロレスオフィスチェアーの話などもあり、どの動画もくまなく面白い。

 突然だが、私はもう四十路をとうに過ぎているのに、未だにぬいぐるみが大好きだ。夫より付き合いの長いぬいぐるみ、スヌーピーを「おちゅぬ」と呼び、人生を共に歩んできた同志の如く接している。その様子は、とても人様にはお見せ出来ないほど不気味である。

 ちなみに、有隣堂のyoutube「有隣堂しか知らない世界」のMCを勤めるのは、

有隣堂しか知らない世界Twitterから

 みみずくのR.B.ブッコローである。

 フワフワの丸いフォルムが素晴らしい。特に後頭部のフワフワ感は、見ていて思わず頬擦りしたくなってくる。くりくりに飛び出した目玉は、斜視でクールだが、それがかえって、こちらを見ているような気にさせるのだ。

 そしてこのみみずく、大変なおしゃべりで、くちばしをパクパク動かし、ボケたり突っ込んだり、驚いたり呆れたり、八面六臂の大活躍。そのワードセンスの良さには舌を巻いてしまう。みみずくなのにサラブレッドが大好きで、土日は競馬を楽しんでいる。私もその影響で、競馬に興味を持ち始めてしまった。ちなみに今のところ、見るだけで賭けてはいない。

 みみずくのR.B.ブッコローだけではなく、チャンネルに登場する有隣堂の社員の皆さんも個性派ぞろいだ。

 こんな個性の強い方々が、普通に電車に乗って有隣堂に通勤していると思うと、世の中のすべての人が面白いポテンシャルを持っているのではないかとすら思えてくる。

 私は子供の頃、
「なぜうちは文房具屋さんじゃないの!」
 そう親に駄々をこねたことがある。文房具が好きで、作家や本に興味があって、ぬいぐるみが好き。そんな私が有隣堂のyoutubeにハマるのは、至極当然のことだったのかもしれない。

 ちょっと憂鬱、ちょっとしんどい。

 そんな「ちょっと」ネガティブな日には、是非、有隣堂のyoutubeを覗いてみて下さい。ことによったら、ちょっとではなく、かなりの憂さが、みみずくが飛び立つように、パーッと晴れるかもしれません。



私が大好きな回

書籍もあります。



お読み頂き、本当に有難うございました!