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①湊かなえ【豆の上で眠る】

読書感想記録


 湊かなえの作品が好きで、次は何を読もうかと探していた時に表紙に惹かれ購入。

 姉妹ミステリーとはどういうことなのか。真実はどんなものなのか。夜中に読んでいたことも相まってか、読み終えた時にぞっとした。

 「本物とはなにか」

 血が繋がってる姉が本物か、血は繋がっていないが幼少期を過ごした優しい姉が本物か。私もわからなくなった。
 本当の姉は前者なのは間違いない。だが、自分が知っている姉は後者。そして、真実を告げられた時、数年間一緒に過ごした家族の元を離れて「本当」の母と過ごすことを選び、会おうと思えば会える距離にいるのに自分と会おうとしなかったことを知る。私が会おうとしない、と感じた理由は「血の繋がった姉」が質問の答えを聞くために電話した際、明るく答える『万佑子ちゃん』の姿から。
 2度と会えないと思っていたのに姉2人は繋がっていた、両親は繋がっていたと知った時の結衣子を思うと辛くなった。何も告げられず自分だけが知らずに過ごした数年間。結衣子と同じく私も信じるものがわからなくなった。

 ラストの衝撃はそこまで大きいものではなかった。が、モヤモヤするものが大きく残った。最後のページにも書いてあったが、もっと早く話し合いをすれば少なくとも良い方向に、家族になれていたのではないかと。母親がもう少し寛容であればまた違った人生を歩めていたのかと思うと残念な気持ちになった。

 自分自身人によってキャラクターが変わる。声色も変わる。時々どれが本物の自分なのかと思うことがある。本物の自分はどれなのだろうか。なにが本物なのだろうか。少しだけ自分にもゾッとした。

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