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こんなに好きでも

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エッセイです。生まれて初めておじさんを本気で好きになって告白した時の思い出です。
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こんなに好きでも (前編)

彼のことが本当に好きだった。 それまでセックスが苦痛でならなかった私が、 「この人にどうしても抱いてほしい」と初めて思った人だった。 彼は60歳だった。 私は23歳だった。 彼は、私が仕事中によく行くカフェに来ていた人だった。 ほとんど一目惚れと言ってもよく、その後も彼を見るたびに「格好いい‥‥!」と思ったし、その後たまに会話が耳に入って来ることで知った彼の知性も感性もユーモアも、何もかもが素敵だった。 その界隈はスーツの人が圧倒的に多いのだが、彼はいつもラフな格好をして悠

こんなに好きでも (後編)

「あなた、もっと自分のこと大事にしなさいよ」 そう彼に窘められても、私はずっと好きだった気持ちを簡単に引っ込められず、 「でも」とか「だって」とかぐずぐず言っていた。 すると彼が、 「じゃあさ、たまにお茶でも飲もうよ。それならいいよ。あなたの連絡先教えて」 と言ってくれ、彼も名刺をくれた。 翌日から、私はどんな顔をして彼に会えばいいのかわからなかったので例のカフェには行かないようにしていた。 3日ぐらい経ってから、彼の会社(経営者だったのだ)に電話をしてみることにした。直通