こんなに好きでも (前編)
彼のことが本当に好きだった。
それまでセックスが苦痛でならなかった私が、
「この人にどうしても抱いてほしい」と初めて思った人だった。
彼は60歳だった。
私は23歳だった。
彼は、私が仕事中によく行くカフェに来ていた人だった。
ほとんど一目惚れと言ってもよく、その後も彼を見るたびに「格好いい‥‥!」と思ったし、その後たまに会話が耳に入って来ることで知った彼の知性も感性もユーモアも、何もかもが素敵だった。
その界隈はスーツの人が圧倒的に多いのだが、彼はいつもラフな格好をして悠