いびつな愛情

いびつな愛情 第9章 ~母親の言いなりになる文脈~

 ところで、母親の言いなりというのは、実は私が選んでやっていたことでした。別に母親にマインドコントロールされていたわけではありませんし、マインドコントロールされていたとしても、それは私が、マインドコントロールさせていたのだと思っています。
 なぜ私がそんなことを母にさせていたかというと、傷付きたくなかったからです。
 私は夫の生き方を、オナニストだと揶揄しましたが、それは私のことでした。私は母親の言いなりになることで、つまり、母親にすべてを決めさせることで、傷付かずに生きていたのです。自分の人生を自分で生きるということは、絶対に傷を負います。何かを選び取るということは、何かを捨てることでもあり、その判断を自分でするということは、絶対にどこかで、誰かを傷付けることになります。そして、誰かを傷付けることで自分は傷付きますし、その傷を負っていくことが、自立して生きることなのだと、今の私は思います。
 私はそれをしたくなかったのです。誰のことも傷付けずに生きていきたかったのです。だから相手に合わせて、常に誰かに依存して、その人の意図を汲み取る生き方を選んできました。それは無自覚にやっているところがありましたが、でも徐々に気付いていきました。私の生き方は殻に閉じこもっているだけで、マスターベーションなんだなと思いました。

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